地下の最強 4
まさかあの森からここまでの道にカメラでも付いていたのだろうか?
「目が付いている」というウィスの言葉に嘘は感じられず、本当に見られていたという事が分かる。
「・・・・別に、ただ逃げてきただけだ・・・・あいつらの仲間かどうか疑うなら耳を見ろ、といっても・・・・信じるかどうかは知らないがな」
そう言ってフードの隙間から耳を見せる。
下手に嘘を吐いて誤魔化しても意味がない、ここは敵ではないと証明するほうがいいだろう――――ただ、これで証明できるとは限らないが・・・・
ウィスはそれをまじまじと見つめると、ニカッと笑って――――
「いやいや、あいつらの仲間じゃねえならいいんだ!」
そう言って再びゲラゲラと笑いだす。
「まあよ、オイラも用があっておめぇをここに入れたわけじゃねえんだ・・・・とりあえず、盤戦でもしようぜ」
「盤戦・・・・?」
ウィスはどこからか板のようなものを取り出し、それを机の上に置く。
その板には網目状の模様が均等に彫られ、まるで将棋盤のようだ。
「オイラが独自で考えた遊びなんだが、何しろ遊び相手がいない・・・・だからよ、一戦ぐらい付き合ってくれよ」
「・・・・それはいいが、ルールは?」
「おう、ちょっと待ってろ」
再びウィスは何かを探す素振りをすると、次は袋が出てくる。
「まずはこれを設置しないとな」
袋を開け、ウィスは板の上に中身をばら撒く。
「これは・・・・」
そこから出てきたのは、四角形型の箱・・・・黒色と白色で二種類あり、どちらも上に矢印が書かれている。
青く丸が書かれた白い箱を、一つ手に取って中を開けてみる・・・・中も外と同様で白く、矢印が書かれていたが、矢印の数が違う。
しかし、板の上にばら撒かれた箱・・・・その矢印の数と方向、どこかで見覚えがある。
「まあルールとかはこれでも見てくれ、慣れるには時間が掛かるかもしれねえが・・・・まあ楽しめるはずだからよ」
ウィスに渡された紙を見る。
そこに記載されていたルールを大まかに説明すればこうだ。
矢印の方向は動く方向、赤井矢印はその方向ならどこまでも進めるが、黒い矢印は一つだけしか動くことが出来ない。
青く丸が書かれている箱は、相手の陣地に入ることによって箱を開けることができ、その箱の動きの種類を変えることが出来る。
そして、赤く丸が書かれた箱――――王を討ち取ったほうの勝ち。
――――要するにこれは、箱型のチェス・・・・ということになるのだろう。
それも旧型ではなく、現代の――――こちらの世界のチェスのルールとまったく同じだ・・・・。
「こっちは並べ終わったぜ、そっちもルールを読み終わったら並べてくれよ?」
「はいよ・・・・」
箱の矢印を確認しながら、自分の陣地にコマとなる箱を並べていく。
全て並べ終えると、ウィスはコインを取り出す。
「表か裏か選んでいいぜ、水の絵が描いてある方が表、葉の絵が描かれているほうが裏、当てたほうが先手だ」
「・・・・裏」
「じゃあオイラは表だ」
そう言うと、ウィスはコインをはじく――――
コインは宙を舞い、板の上に落下すると、水の絵を見せる。
「表だな、じゃあオイラから行くぜ?」
ウィスはこちらから見て相手陣地にある箱を一つとると、一つ前のマスに動かす。
「次は俺だな」
ウィスの番が終わったため、こちらも自陣にある箱を1マス動かす。
それを見ると、ウィスは同じ箱をもう一度動かす。
交互に箱を動かしながら、どんどんこのゲームは進んでいく。
「・・・・ところで、何故お前は地下にいるんだ?」
箱を動かしながら、ウィスに尋ねる。
ウィスも箱を動かし、ゲームを止めないように質問に答えてくれる。
「ちょっと事情があってな、まあ大した理由じゃあねえよ」
「地下にはいつも一人で?」
「あぁ、ここに入ったのはおめぇが初めてだよ」
・・・・「遊び相手がいない」という発言もそうだが、どうにもウィスは一人を拒んでいるように見える。
自分で考えたゲームは二人用――――元から一人でいる気ならば、一人用のゲームを考えるはずだ。
ここに来るまでのエレベーター――――ただの移動手段だけならば、自分の身長にあったものを作ればいいものを、あのエレベーターは俺と一緒に入れるほどの大きさがあった。
・・・・どうも、「一人でいたい」というよりかは、孤独を拒み、誰かがここに来るのを期待していたかのような感じがする。
「一人は嫌」だが「一人でいる」・・・・つまり、「一人でいなければいけない理由」がある。というのは、考え過ぎだろうか。
「そんなことより――――おめぇ、ちょっと厳しいんじゃねえか?」
板の上を見てコマの位置を確認する――――どうやらこの状況、いわゆるチェック・・・・王手というやつらしい。
「ま、初めてだからしょうがねえよ・・・・今回の勝負はオイラの勝ちだな」
「おいおい、まだ勝負は終わってないだろ?それに――――しょうがないなんて言葉はあり得ない」
しょうがない、なんて言葉は絶体に存在しない。
「しょうがない」は今までの自分の失態を無くすために作られた言葉だ、甘えだ、妥協だ。
「しょうがない」ではない、必然的にそうなったのだから――――そんな言葉を言っている暇があったら「次」を考えろ。
だから「しょうがない」なんて言葉は――――ありえない。
「一つ取引をしないか?この勝負、俺が逆転勝ちをしたら・・・・お前の言う「事情」ってのを聞きたい」
「オイラの言う「事情」・・・・」
「何故地下にいるのか」と聞いたときに答えた「大した理由ではない、ちょっとした事情」・・・・回答を明確化しないのは沈黙と同じだ。そして、その沈黙の理由は、たいてい「質問が聞かれたくないこと」というのが定番だ。
「お前に何があったかは知らない・・・・だってそれは俺の人生ではないからな、お前の人生はお前がどうにかするだけだ」
ただ――――
「ただ・・・・お前のその「事情」はこの世界の攻略に関係がありそうだからな、その「事情」・・・・聞かせてもらうぜ?」
それがゲームの攻略に必要ならば・・・・こちらとしては、全力でバックアップするだけだ。




