地下の最強
――――――ん?・・・・どうやら寝ていたみたいだ。
体を起こし、目をこする・・・・気づけばエルフたちの姿がない――もう帰ったのだろうか。
「・・・・」
いつから寝てたんだか・・・・エルフたちが家を訪ねていくのを見て――それから、それから・・・・
「何があったんだっけ・・・・」
そこからさらに思い出そうとすると、まるでモヤがかかるかのように思い出せなくなる。
・・・・だが、眠るときのことなんてそんなもんか。
――――そんなことよりも・・・・早いとこ「元最強」を見つけなきゃな・・・・
グルッと辺りを見回す・・・・どうやら、結構な時間寝ていたらしく、すでに日は落ちていた。
・・・・とりあえず、今日のところは帰るか
立ち上がり、村長から借りている空き家へと向かう。
にしても、夜になったら起こしてくれるぐらいしても良いんじゃないだろうか・・・・
内心で村の人間たちにそう愚痴りながら、ポテポテと空き家に向かう。
――――どうやら、ここの人間はそれほどまでに他人に冷たいようだ・・・・特に、よそ者なんかは近寄りたくもないのだろう。
・・・・檻の中の人達が、話を一向にしようとしないのにも関係があるのかもな
「・・・・ん?」
空き家に向かってひたすらに歩いていると、ふと建物が目に入る――――
自分の借りている家と同様、空き家に見えるその建物・・・・しかし、何かが欠けている・・・・
この家・・・・扉がない・・・・どうやって中に入るんだ?
建物に近づき・・・・その壁に触れながら一周する――――
回転扉・・・・ってわけじゃなさそうだな。
窓は付いている、しかし扉だけが付いていない・・・・あまりにも奇妙だ・・・・
外から中を覗くことはできるが、その中に入ることはできない・・・・
まるで、「この家に入ってみろ」とでも言っているようにも感じる・・・・
「・・・・」
別にそこまで固執する必要もないんだがな・・・・
しかし、どこか惹かれるその建物に、一つの疑問が思い浮かぶ――――
もし、無機物や固有名詞のないものに名称を付けたなら・・・・それに【洗脳】を使う事ができるのかどうか。
相手の名前を呼ぶことにより発動することができる【洗脳】、しかし名称のないものに名前を付けて発動するこが出来るのなら――――
それは、あだ名でも発動できる可能性があるということ・・・・
つまり、名前の分からない者にでも勝手にあだ名を付けることにより、【洗脳】を発動できる可能性があるという――――
・・・・それができるのなら、この能力はかなり強力になる。
「・・・・そこの建物、お前の名前は今日から『太郎』だ」
空き家に向かって話しかける・・・・これで名称を付けることはできたはずだ。
「・・・・建物、いや『太郎』・・・・扉を作れ」
名前を呼び、【洗脳】を発動させる――――が、その空き家は一向に変化がない。
・・・・ただ単に建物が行える範疇を超えている可能性もある・・・・例えるなら、人間に「首を180度回転させろ」というようなものだ、なら――――
「『太郎』、自分の一部を破壊、または風化させろ」
これぐらいならできるはず・・・・
しかし、空き家は一向に反応を示さない。
・・・・「意識のないものにはできない」という可能性もあれば、普通に「あだ名」では発動しない、という可能性もある。
まあ、そこらへんは要検討ってところか。
「プッ・・・・ギャハハハハハハ!何やってんだおめぇ!」
「!?」
どこからともなく、声が聞こえる。
「ただの空き家に向かって会話を始めたと思ったら名前を付けたり、その名前を呼んで命令したり・・・・物は喋れねえし動けねえっての!」
「な・・・・どこから・・・・!」
その声は足元から――――自分の立っているすぐ下・・・・地面の下から聞こえてくる。
「だが、その面白さ・・・・嫌いじゃあねえな」
目の前の空き家がゴゴゴゴゴゴと、またはギシギシギシギシと木の軋むような音を立てながら動き始める。
「こいよ、オイラの楽園へ――――」
そして、自分の目の前の壁が開き、空き家の中には階段が出来ていた――――




