男の脱獄 4
まさかこの村に逃げてきたのがバレたか?
いや、それにしてはハルやサラ、リンなどの俺の管理をしているエルフの姿が見えない・・・・
門番をしていた男たちは槍を構え、エルフへと敵意を向ける。
「今日は何の用だ!お前たちに渡すものは何もないぞ!」
「そんなに興奮することはありませんわ、今日はただの視察・・・・その物騒な物を下ろしてくだされば、あなたたちに危害は加えませんわ――ただ、それでも歯向かうというのなら・・・・今ここにいる50人の騎士があなたたちに襲い掛かりますわ」
先頭にいるエルフが槍を指さし、脅すようにそう言う。
その言葉に、男たちは渋々槍を下ろして抵抗の意思がないことを表す。
――――それにしてもこの声、そしてこの取って付けたようなお嬢様言葉・・・・まさか・・・・
ここにはいない、いるはずのない金髪の少女を思い浮かべる・・・・
しかし彼女は人間だ、エルフではない。
確かに同じような口調はしている。
同じような髪色をしている。
だが違う。違うはずだ、だって彼女は車で帰ったじゃないか、笑顔で見送ってくれたじゃないか、だが・・・・もし、もし――――
彼女が事故か何かで死んで、異世界に来ていたとしたら――――
「マリー・・・・?」
ピクッと、先頭のエルフが反応し、音のした方向を睨みつける――――
「誰ですの!?今、私の名前を呼んだのは――――!」
こちらを見るそのエルフ、はっきりと見えたその顔は――――絶対に見間違えるはずがない、麻里家の淑女・・・・マリーだ。
だが何故ここに?それにあの耳・・・・まるでエルフだ、何があったんだ?
「そこにいるのは分かっていますわ!早く姿を現しますわ!」
「・・・・・・」
フードを深くかぶり、両手を上げて敵意が無いことを知らせながら姿を見せる。
「・・・・あなた、何故私の名を知っていますの?」
「・・・・・・」
「私の名を知るのは森の仲間たちだけですわ!何故あなたのような人間が知っていますの?!」
――――――「あなたのような人間」?お前も人間のくせに何を言っているんだ・・・・
まるで人間を嫌うかのような目――――本当に自分をエルフだと思い込んでいるような、人間が信用できないというような目だ。
「・・・・何か勘違いしていますよマリーさん、私は「サリー」と言ったんです。実は妹を探していましてね、その妹を探すために遠路はるばるここに来たんです。それでその妹が可愛くて可愛くて・・・・」
「話を逸らそうとしても無駄ですわ、それに私の聴力を舐めないことですわね・・・・私の聴力は常人の5倍、あなたが「マリー」と確かに言ったのは聞こえてますわ!」
――――チッ、めんどくさい。
聴力が常人の5倍・・・・?どこでそんな能力を手に入れた?そんな特技は元の世界では聞いたことがない、だが嘘を吐いている様子はないし・・・・神に会ったときに能力を貰ったとか?
だが、世界に影響を与えるかもしれない能力を神が与えるか・・・・?
どちらにせよ、嘘がバレたこの状況をどうにかするには難しく、追い詰められた状況なのは間違いなかった。
いっそ無理やりにでも逃げてしまおうかと、そう考えていると男たちが自分の前へと立ち、マリーに向けて頭を下げ始める。
「こいつはただのよそ者です。あとでここの常識は伝えるんで、どうにか見逃してはくれないでしょうか・・・・」
「・・・・・・」
命乞いをするかのようにそう言う男たち・・・・それをしばらく見ると、マリーはハァとため息を吐く。
「まあいいですわ、とにかく今日は視察だけ・・・・その者の始末はあとで考えますわ」
そう言うと、マリーは仲間たちの方を向き、何やら指示を出し始める。
「・・・・おい、お前も妹だかなんだか知らないが・・・・とりあえずあいつらの反感を買うようなことはしないでくれ、こっちも命がけなんだ」
「・・・・分かったよ」
それだけを言うと、男たちはこちらを睨みながら門の方へと戻っていく。
とりあえず、今はマリーに正体がバレないように動くか、マリーに俺のことがバレたら「異世界人」と絶対に思われる。それだけは気を付けなければ・・・・
エルフたちに背を向け、ショウは歩く――――
何があったかは知らないが・・・・敵の味方をするなら、俺は容赦をしない――――




