男の脱獄 2
その男は、フードを深くかぶり、俊敏に草原を駆ける。
あのバカ・・・・!下手に脱獄を邪魔されないために続きを考えて聞かせてやったのに、あんな大声出しやがって・・・・!
実際、町の方向を話させた後に出口を作らせるまではよかった。
しかし、問題はそのあとだ。物語の続きを聞かせてやったら、ハルは興奮のし過ぎで大声を出したのだ。そうすれば当然、何か問題があったはずだと思いリンたちが来る・・・・だからこそ、階段を駆け上がったあとも、そこから離れるためにこんなに走っているのだ。
――――・・・・ひたすらに走っていると、町を囲う壁らしきものが見える。
しめた、これで姿を隠すことはできるはずだ。
疲れきった足も、ゴールが近いと見るなり自然と早くなる。
入り口と思われる門も、もうすぐだ――――
門の中へと走りこもうとすると、その門から突如として現れた男たちに、槍を向けられ止められる。
「なんだ貴様は!どこから来た!」
男たちはそういうと、槍を向けながら詰め寄ってくる。
男たちの使う言葉はエルフ語――しかし、男たちの耳は人間のように丸みを帯びている。
つまり、こいつらはエルフ語を使うがエルフではない・・・・ただの人間だ。
・・・・ということは、やはりあの時に日本語を使っていたあいつが転生者、「力を持つもの」になるわけだが・・・・
今は、そんなことを考えている場合ではないな。
「ただの旅の者だ、休む場所を探しているんだが中に入れてもらえないだろうか」
「・・・・本当か?」
「本当だ、宿がないなら野宿でもいい。とにかく入れてもらえないだろうか」
――――とりあえず、今は姿を隠すこと・・・・この町に入ることが重要だ。そろそろ追手が来てもおかしくない、入れてくれればいいのだが・・・・
男たちは顔を見合わせ、コソコソと何かを話すと槍を下ろし、刃のついている部分を上にあげると――――
「入れ」
と、そう言って道を開ける。
お礼を言って、門をくぐると・・・・
――――!?
一斉に男たちが槍をこちらへ向けて取り囲む。
「両手を上げてそのフードを脱げ、怪しい素振りを見せれば貴様の命はない」
――――フード・・・・エルフかどうかを確認しようってことか。
わざわざ囲んでから正体を確認しようとは・・・・そうとうエルフを警戒しているみたいだ。
「・・・・大丈夫だ、怪しい者ではないよ」
そう言いながら左手を上にして、右手でフードをとる。
その様子を見逃すまいと、男たちはジッとこちらを見ている。
「・・・・いや、すまない・・・・本当に大丈夫なようだ」
「いいや、誤解が解けたようでよかったよ」
今度こそ、本当に道を開けられる。
壁の中は木でできた家がたくさん建っており、町というよりかは田舎のような村という印象に近かった。
それほど広くはないが、人が住むのには十分に機能しているようだ。
「どうぞこちらへ、あまり人が来ないので宿といったものはありませんが、疑ったお詫びです。空き家を貸しますよ」
「・・・・それは嬉しいです。ありがとうございます」
どうやら、警戒が解けているわけではないようだ。
エルフからのスパイなどを警戒しているのだろうか、おそらくこの村の長であろうその男は空き家を貸すとは言っているが、それは監視するためや人への被害を抑えるため、といった感じに近かった。
・・・・だが、雨風がしのげるのは有難い、ここは素直にお礼を言っておこう。
「では、こちらです。付いてきてください」
そう言うと、村長は自分の前を歩き、案内をしてくれる。
しかし、決して村長一人というわけではない。男が二人、挟むような形で付いてきている。
やはり警戒されているな・・・・それほどまでにエルフとここの人間は対立しているのか?
「・・・・さて、ここが空き家です。すこし埃っぽいですが、体を休めるには十分だと思いますよ」
「ありがとうございます・・・・」
素直にお礼を言うと、「では、私たちはこれで」と男たちはどこかへ行ってしまう。
・・・・とりあえず、今は目的を果たすことだけを考えるか。
そう思い、空き家の扉を開けると、家具一つ置いていないガラリとした空間が目に入る。それはまるで檻の中を思い出させる。
・・・・まあ、自由になっただけまだいいか――――
警戒され、監視され・・・・
作業もなくなり、ほぼ自由になったとはいえ、環境はエルフの町と似たようなものを感じさせていた――――




