男の脱獄
階段を下り、長く続く一本道の通路、そこをさらに進めば男たちの風呂場だ。
そして、その階段を二人で歩く影――――その者たちの耳は鋭く尖り、髪は金色に輝いていた。
「・・・・」
「・・・・」
静寂が二人を包む。
そしてその静寂の中、先に口を開いたのは後方を歩く少女・・・・サラだった。
「・・・・リンさん、そんなに妹さんが心配ですか?」
「・・・・すみません、雑念がわいてしまったようです」
リンは雑念を振り払うように首を横に振る。
「いえいえ、リンさんはもう少し休むべきですよ、妹さんもまだ幼いんですし・・・・」
「いや、私情のために休暇をとるなんてことはできません。私は働かなくてはいけないんです・・・・それこそ、妹のために・・・・」
「・・・・妹のことを気遣うのならむしろ休むべきですよ、生活に困っているなら私も手伝いますから」
「いえ、しかし・・・・関係のないサラさんを巻き込むわけには・・・・」
「関係なくありませんよ、あなたが姉であるように私も一人の姉であり・・・・そして、あなたの姉でもあるんです。何か困ったことがあれば遠慮なく頼ってください」
「しかしサラさん、私たちに血縁関係は――――」
「そんなこと言わないでください、昔からの仲なのですから」
サラはニコッと、優しい顔を顔をリンに向ける――――
リンはフッと笑うと、「そうですね」と一言――――
「・・・・しかし、以前に妹さんが来たとき、どうしてあのようなキツイ言葉を?」
「あそこは『男』がたくさんいます。そんな危険なところに来るなんて、当然説教ですよ・・・・それに仕事中でしたし・・・・」
「・・・・そういえば、あの時に一緒に来た女の子・・・・あの子、今入浴中の男の子のお仲間みたいでしたけど・・・・どこへ行ったのでしょうね」
「あぁ、そういえばそんな方がいましたね・・・・あの男と似たような服を着て・・・・まったく不思議ですが、まあ問題はないでしょう」
そうこう話しているうちに、男たちが働く仕事場へと到着する。
丁度階段を下りきると――――
「あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
――――!?
突然、ハルの声が響き渡る。
「なんだ!?」
「ハル・・・・!?大丈夫ですか!?」
リンとサラはその声の方向――――風呂場へと駆ける。
そこには、椅子にもたれかかり、だらしのない格好をしたハルの姿――――
「ハル!?大丈夫ですか!?」
「へへぇ・・・・えへへへぇ・・・・」
サラがハルに駆け寄り、抱き上げると、ハルは意識の抜けた声で生返事をする。
そしてその横の壁には大きな穴・・・・その中は、上へと続く階段状になった木があった。
・・・・そして、よく見れば男がいない――――一瞬、リンに嫌な予感が思い浮かぶ。
「・・・・まさか!」
扉を開き、浴場へと入る――――その中に、いるはずの男の姿がない。
「ハル・・・・?!ハル・・・・!何があったのですか!?」
「ね、姉さまぁ・・・・私、辱められちゃいましたぁ・・・・ぐへへへへ」
「そ、そんな・・・・!」
後ろをむくと、ハルとサラがそんなやり取りをしている・・・・
「クソッ!また男か・・・・!今度はハルまでも・・・・!」
壁にある大きな穴を睨みつけると、そこに向けて走り出す。
「・・・・!リン!」
後ろから呼び止めようとするサラの声を無視し、一気に階段を駆け上る。
上へと続くその階段をずっと進んでいくと、光が見えてくる・・・・そして、穴を抜けるとそこは地上だった。
木の壁の外・・・・眩しく光る太陽から、陰になるように手を上げる――――
辺りを見回し、逃げ出したと思われる男がいないかを探すが、そんな人物は影すらない・・・・
「――――クソッ!クソッ!」
地面を何度も踏みつけ、リンは唇を噛み締める。
逃がした、逃がした!
危険だと分かっていたのに、ハルを一人にさせてしまった。
その自分の無念さに、どうしようもなく腹が立つ。
「クッソオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
そんな怒声が、あたり一面に響いた――――




