囚人の一日 4
「おい!起きろ!」
エルフ語でそう言う声が聞こえ、寝ぼけてはいるがその声に反応して目を覚ます。
「点呼の時間だ!返事はしなくていいから何か反応は示せ!」
「・・・」
自分に向けてそう言うリンの指示に従い、無言で右手を上げる。
・・・点呼、もうそんな時間か・・・
「うむ、ちゃんと檻の中にいるな・・・自由にしていいぞ」
「・・・はいはい」
目をこすりながらリンの言葉に返事をすると、昨日のまま放置しておいた葉を確認する。
・・・よし、乾いてるな。
文字が乾いていることを確認すると、本の間に葉を挟む。
「・・・植物、容器に入った水をくれ」
そう言うと、水の入っている枝で作られたコップを渡される。
それを受け取ると、一気に飲み干して口元を手で拭う。
・・・さて、気合い入れていくか。
机の上にコップを置いて、ラブは今日の計画を頭の中で何度も復習する――――
***
単調的に作業を続ける。
そして、ある程度の仕分けが終わったところで作業の手を止める。
・・・そろそろか?
そう思って後ろを振り向くと、リンが丁度よく部屋へ入ってくるタイミングだった。
我ながら完璧な体内時計だ。
「作業は終わりだ!」
その言葉を聞き、サラとハルが俺を取り囲む。しかし、縄で縛ろうとはしない。
「今日は風呂だ、面倒だから縄は縛らずに行くが・・・暴れたところで無駄だからな?」
「はいはい」
念を押すリンに対して返事をすると、通路を歩き始める。
風呂はこの作業場の近く・・・さらに奥へと続く通路を渡った所にある。
だから風呂に行くときは縄では縛られない、どうせすぐに外す羽目になるのに縛るというのは面倒だからだ。
・・・だからといって、三人に囲まれた状態で逃げようとは思わないがな。
ずっと進んでいくと、扉が一つある空間へと着く。
ここが浴場の前の部屋・・・脱衣場だ。
「では、我々は時間になったら迎えに来るが・・・監視は付けておくため、逃げ出そうとは思わないように」
「はいはい・・・」
ここでもリンに念を押される。どれだけ信用がないのだろうか・・・
風呂は交代制だ、浴場が小さいから・・・というのもあるのだろうが、監視が大変だからというのもあるのだろう。
俺が作業をしている間に別の者たちが風呂に入り、風呂に入り終われば檻の中に戻る・・・それが順番に繰り返され、俺はいつも一番最後で一人だ。
一人で広々と使えるのはいいんだが・・・何故いつも最後なのだろうか。
「では、我々は行かせてもらう」
そう言ってリンとサラは行ってしまうが、ハルはその場に残り、近くにある椅子へと腰掛ける。
作業の時に見張りをするサラと違って、ハルは風呂の時の監視だ。
ハルは椅子に座って本を読み始める。
「・・・」
「・・・?どうしたんですかぁ?入ってきていいんですよぉ?」
ジーっとハルを見ていると、ハルは本から目線を外し、こちらを見て風呂に入るようにいう。
・・・そのハルの顔は、少し赤らみ、興奮しているようにも見えた。
「・・・取引がしたい」
「と、取引ぃ・・・?なんでしょうかぁ・・・」
「・・・実を言うとな、この数日見ていればお前らの性格も大体掴めてくるんだよ」
「へ、へぇ・・・そうなんですかぁ・・・」
ハルは笑顔で答えるが、目は別の方向へと向いている・・・分かりやすいやつだ。
「リンは真面目で規則を重んじるようなヤツだ、何事にも真剣に取り組もうとしている。サラは確かに真面目だがどちらかと言えば仲介者のような存在だ、それに、サラはお前の姉だそうじゃないか、お前ならよく知っているだろ?リンの行き過ぎた指導などを止めたりするのもあいつの役割なんじゃないか?」
「うーん・・・確かにそんな気はしますねぇ」
「それで、お前の性格だが・・・」
ラブはハルを見ながら、溜めるように話す。
ハルはそんなラブを見て、笑顔が少しゆがみながらも目を合わせようとしているが、どうしても目は合いそうにない。
そんなハルをお構いなしに、ラブは事実を突きつける・・・指を突き立て、「お前が犯人だ」とでも言わんとするような雰囲気だ。
そして、そんなラブから放たれた言葉は――――
「お前・・・むっつりスケベだろ!」
たった一つの事実を突きつけるように、ラブはハルにそう言い放った――――




