囚人の一日 3
――――この刑務所のような場所に着いてから数日が経った。
そして、今日も今日とて俺は卵の仕分けを始める。今ではもう慣れたものだ。
そしてフロワからは頻繁にエルフを通して本が送られてくる。最初は絵本を、そこから少しづつ絵の少ない本へと・・・だが、その本の大半が宗教のような本だということが、挿絵から分かった。
本は作業の時間のときに取り上げられてしまうが、それでもフロワからの本のおかげで少しずつ文字と言葉は覚えてきた。
・・・そうだな、例えばこの箱――――最初に見た時は何と書いてあるか分からなかったが、黒い卵を入れるほうには雌、白い卵を入れるほうには雄と書いてある。
それでも雄と雌を仕分ける意味は分からないがな・・・
「おい!もう作業は終わりだ!戻れ!」
「・・・はいはい」
最初に俺のことを殴ってきたエルフだ・・・他のエルフたちはこいつのことを「リン」と呼んでいる。
リンは俺に作業を止めて檻の中へ戻るように怒鳴る。それに対して適当に返事をすると、二人のエルフに縄で縛られ、檻へと戻る通路を歩き始める。
最近の生活サイクルはこの3人のエルフたち・・・見張りをするエルフ、「サラ」ともう一人のエルフ「ハル」、そして「リン」によって管理されている。
基本的な生活サイクルは、起床、点呼、自由時間、仕事、就寝だ。
そして3日に一度、仕事と就寝の間に風呂がある。なんでも、その翌日に最上階に住むエルフが来るからだそうだ。そのエルフは、一日目に出会ったあの上司エルフのことだ、あのエルフは仕事場に来ると俺達みたいに働いているやつらに日本語で話しかけながら歩き回る。
そして、しばらくするとすぐに去ってしまう・・・一体、何がしたいのかはさっぱりだ。
・・・にしても、本当にここの奴等は話をしようとしないな。
試しに一度、エルフ語で話しかけてみたがやはり反応はなかった。
一体、何故誰とも話そうとしないのか・・・未だに真相は分からない。
「ほら、さっさと入れ」
「はいはい」
自分の檻へと着き、中に入ると縄をほどかれる。
「それと・・・また貴様の友人からだ、作業の時には取り上げるからな」
「はいはい」
リンはそう言うと、一冊の本を渡してくる・・・今日のフロワからの本だ。
「では、大人しくするように」
「はいはい」
リンはそれだけを言って、他のエルフ二人とともに去っていく。
・・・行ったか?
「・・・おい植物、葉を一枚よこせ」
天井に向かってそう言うと、ガサガサと上から葉が落ちてくる。
それを見事につかむと、次は「机を出してくれ」と植物にお願いする。
すると、枝が絡まり机を作り出す。
・・・どうやらこの植物はエルフ語も通じるらしい。
しかし、エルフ語で話したところで檻から出させてくれるというわけではなく、日本語で話すのと変わりはなかった。
・・・さて、今日の本は・・・
パラパラと本を雑にめくっていく・・・あった。
本の間に挟まっていた、紙と同じほどサイズのある一枚の葉を発見し、そこに書かれている言葉を読む。
『未だに「異世界人」だと思われる人は見当たりません。ただ、この町の近くに別の町があるみたいです』
これはフロワからの手紙だ、日数を数えていないため、いつからかだったかは忘れたがバレても葉にフロワの世界の言葉で書かれているために「異世界人」にもエルフにも怪しまれない。という理由で始めた文通だ。
・・・にしても近くに町か、そこに異世界人がいる可能性もあるのか・・・それにEXステージの人間も・・・
「・・・植物、枝をくれ・・・あと、腹が減った」
再び天井に話しかけると、天井に木の実が生り、枝が一つ落ちてくる。
木の実をを一粒採り、枝を受け取ると、木のみをつぶして枝の先端に付ける。これで簡易的なペンの出来上がりだ。
机に貰った葉を置き、フロワの世界の文字を書く。
『分かった、じゃあ俺はその町へ向かうことにする。』
こんなところか・・・あとは乾かして本に挟み、フロワに返すだけだな。
前の世界の文字を一応覚えておいて正解だった、おかげで文通でのやり取りもできる。
・・・この葉はフロワの葉と違って小さいから表裏を使ってもここまでしか書けないな。
しかし、それはそれで情報が得られるというものだ。葉の大きさが違うということは植物の種類が違うということ・・・つまり、フロワが言うに大きな植物で囲われているこの町の実態、それは同じ植物で構成されているわけではなく、様々な植物で作られているということだ。
・・・いや、本当にそうなのか?ここの植物はおかしい、「腹が減った」といえば急速で木の実が生り、机が欲しいと言えば植物が机の形を作る・・・こんな異常な植物に俺の世界の常識が通じるとは思えない。
・・・考えても分からないな、とりあえず今日は寝るとしよう。
「植物、寝床を作ってくれ」
そう言うと、植物は葉で布団を作ってくれる。
――――さて、明日は確か・・・風呂だったか。




