エルフの森 3
・・・ラブさんと離れ、この町を・・・いや、森というべきなのだろうか。
この木で覆われた町を見ていくうちに、気づいたことがいくつかある。
まず一つ・・・この町には男性がいないということ、まだ自分の見ていない場所でもあるのか、はたまた生物として男という性別が存在していないのか・・・
そして次に、この町には階層があり、上から下へは行けるが下から上へは行けない、ということだ。
少女とともに行動することで二階層までの移動は可能だったが、そこから上、三階層から上へは行くことが出来なかった。
・・・そしてこの町に入る前に見た、この森の造形・・・木がいくつも連なり、まるで壁のようになっていた。
中に入れば、木に付いている葉で屋根のようなものができ、影になる。そして、木の幹が淡く光ることにより、明かりとして機能している。
まるでこの町は、でかい宿屋だ。
――――でかい宿屋、それはあくまでもフロワの見解だった。
ラブの世界からすれば、まるで高層ビル、ドームなどの別の答えが聞けたことだろう。
しかし、ラブのように高い建物が周りになかったフロワからすれば、それは宿屋としか言えないのだ。
「~~~~~~!」
自分の前を率先して歩く少女・・・ラブさんは確か、「エルフ」とか言ってましたね・・・気に入られたのでしょうか?
その幼い少女・・・幼エルフにポンチョを引っ張られ、されるがままに歩く。
自分がこの町の生物・・・『エルフ』ではないとバレ、興味心からの行動なのか、それとも友達を作れたと思っているのだろうか、その行動の真意は分からない。
思えばエルフは金髪ばかりで耳も尖っていた、頭部は隠しておいたほうがいいのだろう。
そう思い、今更ながらポンチョのフードを被る。どれだけ誤魔化せるか分からないが、被っておいて損はない。
しばらく歩くと、渦のように木がねじれている壁がいくつも並ぶ場所へとやってくる。
その一番端にある渦、その前に立つと幼エルフは壁に話しかけ始める・・・何をしているのだろう。そう思っていると、渦を巻いていた木が逆向きに渦を巻き始め、そこに空間が現れる。
・・・これは一体・・・?!
その光景に驚いていると、幼エルフが袖を引っ張り、その空間の中へと入ろうとする。
中に入ると、そこは部屋のようだった。それも中々広く、人が二人入るには十分なほどだ。
・・・奇妙な形をした植物、まるで椅子・・・こっちは机みたい・・・。
自然でできたとは思えない、しかしその植物に加工されたような跡はなかった。
・・・考えられるのは『魔法』、しかし植物を操れる魔法なんて・・・
「~~~~~~~~!」
幼エルフがこちらに向かって、何かを話す・・・指を指している方向を見ると、そこには子供部屋のようなものがあった。
「遊んでほしい」ということでしょうか・・・?
幼エルフは興奮気味に袖を持つと、子供部屋へと引っ張る。
転びそうになりながらも、なんとかペースを合わせて早歩き気味に歩く。
来たい場所まで来たようで、いきなり止まるとその場に座り、ポンポンと床を叩く。「ここに座れ」ということらしい。
幼エルフは床に何かを話すと、床から木でできた人形のようなものが出てくる。
「~~~~~~~」
幼エルフが床に対してではなく、自分に対して何かを話し始める。
その声に合わせて、床から出た木の人形は動き始める・・・これは人形劇だろうか。
木の人形は4つ、大きい人形が2つ、小さい人形が1つ、その間ほどの大きさの人形が1つだった。
それは小さい机を囲み、何かを飲んだり食べたりするような素振りをしている。
中々動きが細かく、本当に生きているかのようだ。
しばらく飲み食いするような光景が続くと、突然大きい人形が2つほど減る。
そしてまた飲み食いするような場面が続くと、今度は中ぐらいの大きさの人形がいなくなる。
しかし、それは大きい人形のように完全にいなくなったわけではなく、現れたり現れなかったりする。
・・・そして、ついに中ぐらいの人形もいなくなると、小さな人形が一人でに遊ぶ光景が続く――――これは・・・どういう物語なのだろう。起承転結もなく、何が起きているのかも分からない・・・ただ、『悲しい物語』だということだけが分かる・・・これは何なのだろうか。
最終的に今までいなくなった人形たちが集まり、笑顔でその物語は終わりを迎える・・・
そして、いつの間にか幼エルフの声が聞こえなくなっていることに気づくと、幼エルフの顔をチラリと見る。
「ウッ・・・ウッ・・・」
――――!?
幼エルフから呻くような声が聞こえたと思うと、目から大粒の涙がボトボトと零れ落ちている。
その姿を見て、とりあえず宥めようと頭を撫でる――――一体、どうしたのだろうか。
ふと写真立てが目に入り、じっくりとそれを眺める。
――――そこに写っていたのは、今泣いている幼エルフとさっき口論をしていたエルフ、そしておそらくその両親の集合写真だった。
・・・この光景、さっき見た物語と一緒――ということは・・・
写真立てから、次は木の人形へと視線を移す・・・やっぱり、あの物語はこの子の物語・・・?
最初に大きい人形が二つ消えて・・・両親のことか、次に中ぐらいの人形・・・おそらくさっき口論をしていたエルフ・・・姉と思われる人だろう。
そして最後に残ったのがこの子だとするのなら・・・この子はいつから一人で・・・?
「・・・よし!」
何かを決心したように、フロワは立ち上がって幼エルフを見る。
幼エルフはその状況に理解が追い付かず「???」と、目元を濡らしながら不思議そうな顔をしている。
――――絶対にハッピーエンドにしてみせる!この物語を・・・絶対に・・・!
胸の前で手をグッとして、フロワは改めて決心をするのだ――――




