エルフの森 2
――――で、気づいたら檻の中・・・か・・・。
いつの間にか背中の傷も治ってるみたいだし、後遺症もない・・・完璧すぎる治療だ、魔法か・・・?
魔法といえばフロワの魔法が使えなくなっていたな、とフロワのことを思い浮かべる・・・彼女は今何をしているのだろうか。
すると、「ガチャリ」という音がし、檻の扉が開けられる――――どうやら鍵が開けられたようだ。
中へと入ってくるエルフへと顔を向けて、立ち上がる。
それを見るなり、エルフは首をクイッと檻の外へと傾ける・・・「付いて来い」ということだろうか。
「・・・」
何も話すことなく檻の外へと出ると、3人ほどに囲まれながら通路を歩くことになる。抵抗できないように、ということなのだろう。
通り道にある檻を横目で見ていくが、中は同じように殺風景で誰もいないようだ。
誘導されるがままエルフたちに付いていくと、木の根で囲われている空間へと入る。
・・・なんだここは?
限りなく暗く、狭い空間だが、その空間の真ん中に椅子が置いてあることが分かる。
先頭を歩いていたエルフが近づいてきたと思うと、体を縛っている紐を引っ張り、無理矢理に椅子へと座らされる。
「~~~~~!」
・・・相変わらず何を言っているかは分からない、だがこのエルフの表情とこの状況・・・普通に考えて尋問ということでいいのだろうか。
「~~~~~~~~!」
・・・まずは何故捕まったのかを考えよう。
単純にエルフの縄張りへ入った・・・それならフロワもどこかで囚われているな、見た限りでは他の檻には誰もいなかったが。
あの少女に話しかけた・・・何が問題なのかはよくわからないが、高貴な存在だという可能性もある・・・か?だったら付き添いのエルフもいるはず、迷子になんてならないか――――ガッ!?
その時、頭に重い衝撃が走る。
ツー・・・と、頭から水が垂れるような感触を感じ、理解する・・・今自分は、何かで殴りつけられたのだと。
・・・黙っていれば拷問か、これじゃあいつまで耐えられるか分からないな。
頭から流れる血をそのままに、自分を殴りつけた相手を見る――――
人を殴ったにも関わらず、平然と、凛とした態度・・・その手には、ハンマーのような鈍器が握られていた。
「~~~~~~!」
再びエルフが何かを話し始める・・・これが尋問ならば、質問の内容は「あそこで何をしていた」、「貴様は何者だ」というところか、適当に答えるのもありだが・・・こちらの言語が通じないなら意味がない。さて、どうするか・・・
また黙っていると、そのエルフはハンマーを構え始める。
・・・流石に二回目はキツイな・・・!
歯を食いしばり、目を瞑って衝撃に備える。
――――しかし、しばらくしても衝撃が来ることはなく、不思議に思い、片目をゆっくりと開ける。
――――なんだ?何をしている・・・?
ハンマーを構え、今にも殴りかかろうとしていたエルフは、その鈍器を下ろし、別のエルフと話している。
内容は分からないが、どうやら助かったみたいだ。
ふぅ・・・、と一息吐いて安堵していると、ハンマーを床に放置したままでエルフが近づいてくる。
「~~~~~~」
・・・やはり何を話しているかは分からない、だが何か質問をしている風ではない。
エルフは話し終えると、横に立ち腕を組む・・・何かを待っているようだ。
・・・しばらくすると、入り口から3つ影が見える・・・横並びに一列、よく見れば真ん中に小さい影がもう一つあることに気づく。
左右の影は槍を持ったエルフ・・・真ん中の影は――――
「・・・!ラブさん!」
――――フロワか・・・だが、何故ここに?
フロワはこちらへ大きな声を出してこちらへ駆けようとする・・・だが、左右にいるエルフたちに槍で塞がれてしまう。
フロワはゆっくりと、左右のエルフたちに歩幅を合わせながら近づいてくる。
ある程度近づくと、左右のエルフたちは横で腕を組んでいるエルフに一礼する。
「・・・ラブさん、大丈夫ですか・・・!?」
「そんなことよりもどうやってここに来た・・・?」
「そ、それはこの子が・・・」
フロワと被って見えなかった少女が、チラッと顔を出す。
・・・そのエルフは、自分が捕まえる前に名前を聞いた少女だった。
「ラブさんが捕まったあと、私は何故か見逃されたんです。その後この子に出会って、身振り手振りでなんとか『ラブさんに会いたい』と伝えて・・・今に至るという感じです」
・・・なるほど、しかし簡単にこんなところ・・・怪しい人物のいるところまで入ってこられるというのは・・・?
「・・・このエルフは権力者の娘か何かなのか?」
「・・・それは分かりませんが、この子がいなければここに来られなかったのは確かです」
「~~~~~~~!」
「~~~~~~~~~!」
・・・気づくと、フロワの後ろにいた幼いエルフがいなくなり、なにやら横に立っていたエルフと口論のようなものを始めている。
――――とりあえず、フロワの無事が確認できただけ収穫はでかいか・・・
「フロワ・・・ちょっと来い」
「来いと言われましても・・・」
チラッとフロワは横を見る、左右にいたエルフはそれを見るなり、俺の横に立つエルフを見るとコクリと頷き、一歩後ろへ下がる。
・・・近づくことを許可した、ってことでいいのだろうか。
「フロワ、ここからは小声で話すからよく聞いておけ」
「え?でも言葉は通じないみたいですし・・・」
「いや、この言語を使っていれば『この世界の人間ではない』と思われるかもしれない、だからだ」
「わ、わかりました」
フロワは良く聞こえるように、自分の耳を口元へと近づける。
「(お前はとりあえず、何冊でもいいから本を持ってきてくれ)」
「(本・・・?ですか?)」
「(あぁ、とりあえず相手の言葉が分からなければ何も分からないからな、俺はこの世界の言語を学ぶことにする)」
「(この世界の言語を学ぶ・・・!?そんなこと出来るんですか!?)」
「(さあな、とりあえず元の世界の知識をフル活用して何とかしてみる。あとは・・・俺の右ポケットにスマホが入っている。ばれないように持って行ってくれ)」
「(スマホ・・・?あの板のことですか?)」
「(そうだ、あれを持っていれば・・・お前らの世界で言うところの「勇者」が誰かを近づくと音で教えてくれる。ただ、そいつの前でその板は出すな、『異世界人』だとバレるし、何より命の危険性もある)」
「(わ、分かりました・・・用心します)」
早速フロワがゴソゴソとスマホを取り出そうとしていると・・・
「~!」
エルフの一人がこちらへ向かって何かを叫んでいる。
――――!まずい――――
何かをしようとしていることがバレたのか、拘束を解こうとしているとでも思ったのか、エルフの一人が槍をこちらへ向けて威嚇してくる。
バッ!と、フロワは両手を上げて何もしていない、とアピールをする。
・・・何とかスマホは隠せたようだな。
「~~~~~!」
怪しい動きをしたせいか、槍をこちらへ向けているエルフが「離れろ」と言わんばかりの動作をする。
大人しくフロワはそれに従うと、ずっと話していた幼いエルフもそれについていく。どうやら幼エルフの方の口論は終わったようだ。
槍を持った二人のエルフは、再び横に立っているエルフに一礼すると、フロワと幼エルフを挟むようにしてその部屋を立ち去る。
――――とりあえず、今はフロワに頼るしかないか・・・
頼んだぞ、フロワ――――!




