神様です 2
――――といっても、能力を使うにはどうしたらいいんだ?
よくあるのは詠唱とか魔法陣とか・・・
『いや、「使おうと思えば使える」よ、まるで二足歩行するのが当たり前のように、生まれたころから呼吸できていたように・・・まあやってみれば分かるんじゃないかな?』
「・・・じゃあ、『熟練』の能力を『破棄』・・・いや、この場合は『回収』しなければいけないのか・・・」
――――感じる、どうやったら『回収』できるのかが。
思い出すのではない、無意識に、本当に当たり前のように――――
椅子から立ち、枝豆の格好をした神に近づく――――
頭のような部分をガシッと掴み、ソレを発動させる・・・
「・・・『回収』を使うには、それを所持しているヤツに触れないといけないんだ、すまんな」
『うーん・・・それだけの理由で僕の頭部は鷲掴みにされるのかぁ』
しばらく手を置く・・・いや、もう離していいのだろう、どうやら一瞬で盗れるようだ。
「・・・能力を盗っても、その能力に関しての情報は入手できないようだな」
『まあ1%だしね、それぐらいはおまけしてあげるよ、たくさんの世界へ行くわけだから・・・そのための移動手段もね』
――――たくさんの世界・・・つまり同じ世界に全員がいるわけではないということか・・・
まあ、ザンヤがこちらの世界だったしな、こちらの世界に全員いるなら『異世界』だなんて言わないだろうしな。
『じゃあ・・・そうだな、いつも君のポケットに入ってるソレ、ソレに僕の能力『通信』で情報を送ろう。僕は全知全能だからね、君が能力を手に入れたら能力の情報を、その世界ですることがなくなったら移動するための情報を『通信』で送るよ、もちろん通知でわかりやすくね』
すると、早速通知音がする。どうやらポケットに入れておいたスマホに送るようだ。
――――で、『熟練』に関しての情報か・・・『熟練』を使うには、使用用途・・・つまり、ザンヤがやったようにピアノを『熟練』させるなら「ピアノをする」と、あらかじめ宣言が必要になる――――さらに、宣言の後にソレを成功させなければいけない・・・かなり面倒な能力だな。
『何度も言うけど1%だからね、それぐらいの制限はつくよ』
「そんなもんか・・・」
――――ところで、何故俺はザンヤを倒せたことになっているんだ?
俺は確かにザンヤに嫌がらせみたいなことをしたが――――それは所詮一瞬の恥だ、誤解が解ければ意味もないし・・・なにより能力を回収していない、破棄もさせていない。ならば何故――――
『彼はレギュレーションを破ったんだよ、彼も僕と君のように規則を設けた、それは彼が7人目だったからね・・・流石の僕もそろそろまずいと思ってレギュレーションを結んだんだよ、だけど・・・結局彼はそれを破ってしまった、ゆえに――――彼は罰を受けた、彼とのレギュレーションの一つ、「人への直接的な被害を与えない」を彼は破ったからね』
「・・・そういえば、反則について聞いていなかったが・・・罰ってのは何を受けるんだ?」
『そうだな――――彼の場合は「死」だったよ、まあ君もレギュレーションを破るのだけは気を付けることだね』
――――規則・・・か・・・もう少し深く掘り下げておくべきか
「『力を持つもの』は『世界改変』をしたから『力を抑制させられる』わけだが・・・どこまでやったら『世界改変』になるんだ?」
『そうだなぁ・・・「世界改変」って言っても、滅多なことがない限りは世界は改変されないんだよ、何が起ころうと、最終的に結果は収束するからね・・・』
「結果が収束する・・・?どういうことだ?」
『ドッペルゲンガーみたいなものでね、たとえ「最強」が現れようと、その「最強」に最も近しい存在がいなくなるだけ・・・死ぬわけではないけど、元の「最強」が辿るはずだった人生を新しく現れた「最強」が奪ってしまうわけだ、だから収束してしまうんだよ・・・ただ、それにも限界がある』
「限界か・・・」
『そう、あまりにも僕の力が強すぎたのか、「力を持つもの」がよほど暴れたのか、「元の最強」の人生を塗り替えるほどになってしまった』
「・・・『塗り替える』ってことは、人生を奪うのは決まってるんだな」
『あぁ、だから今回は「元の最強」の「元の人生」に戻すのが、「世界改変」を止めることになる。まあ能力を奪ってしまえば簡単だよ、そうすれば「今の最強」が「最強」ではなくなり、「元の最強」に「元の人生」が返されることになるんだから』
「おいおい、簡単に言うがな・・・どうやらこの『回収』、何を『回収』するかを理解しないといけない・・・つまり、相手の能力が何かを当てないといけないってことだ、かなり難しいぞ」
『それぐらいなら良い難易度じゃないか、丁度いい戦いになりそうだ・・・』
その神はどこか嬉しそうに・・・いや、嬉しくないかもしれないが、どこかそんな風にそう言う。
「・・・さて、じゃあそろそろ異世界へ・・・と、言いたいところだが・・・これはなんだ?」
そう言って指を向けたのは、もう一つの石――――規則が書かれていない方の、何も書かれていない石だ。
『あぁ――――これはEXステージだよ・・・おまけみたいなもんさ、君がとある人物を倒せばその功績が載る・・・』
「とある人物・・・?」
『そう――――「力を持つもの」に人生を奪われた者・・・つまり「元最強」を倒したときに、その名前が書かれるのさ――――!』
――――「力を持つもの」に「人生を奪われた者」を倒す・・・?それって結局「力を持つもの」とやってる子と同じじゃ・・・
『・・・まあ「世界改変」には変わりないんだけどさ、それでも「最強」ってのは厄介だからね、まあ本当に「おまけ」だよ、倒してくれるならラッキーぐらいの考えさ・・・そうだ、「元最強」に会った時も『通信』で情報を送ることにしておくよ!』
――――まあいいか、「最強」がいるならそいつらの「能力」も盗れるかもしれないしな。
『・・・そうだ!「力を持つもの」から能力を奪うだけじゃあつまらないだろう・・・?だからさ――――縛りプレイを設けようよ☆』
「縛りプレイ・・・?流石にそんな余裕はないんだが――――」
『じゃあ言い換えよう・・・「交渉」なんてどうだろう、君の『回収』の能力を2%まで引き上げるから――――「異世界から来たことをバレてはいけない」ことにしてくれないか?』
「・・・それは何故?」
『実を言うと、何故「世界改変」が起こっているのかは僕も分からないんだよ、だから「異世界から来た」ってだけで「世界改変」が起こるかもしれない・・・だから保険かな?』
「なるほどな・・・」
――――じゃあ後は2%の能力のほうか・・・まあ言いうほど期待はできないが・・・
『いや、期待していいよ・・・EXステージの人達の能力も奪えるようにしよう!』
――――!?
そうなると、かなり話が違う・・・たった「異世界者とばれないようにする」だけでそれだけの能力上昇ができるなら――――
『・・・当然、引き受けてくれるね?じゃあそろそろ・・・』
――――そうだな、そろそろ異世界転移始めますか・・・
「で、どうすれば異世界へ行けるんだ?」
『そうだな、君の持っているスマホで移動できるようにはしたいんだけど・・・最初の印象は大事だ、何かインパクトのあるようなもの・・・いや、ここは君の望んだ世界だしね、君が思い浮かべた移動方法で移動しよう。たとえば――――君は一度死んでいる・・・よく「天に昇る」なんて言うよね』
――――『天に昇る』・・・
頭の中で自分の死ぬ様子を思い浮かべる・・・人が死んだとき、魂はどこへ行くのか・・・そして、それが戻るとき、どうすれば――――
「・・・ん?」
気づけば、体が空に投げ出されていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
――なんだ!?何が起こっている!?今俺は――
――――――落ちている!?
『僕の言い方が悪かったかな?「天に昇る」から、生き返るために「落ちる」ことを選ぶなんて・・・安直だけどインパクトはあるね☆』
――――そんなことを言ってる場合じゃねぇ!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお待て待て待て待て!」
『・・・しょうがないなあ・・・あまり手は出したくないんだけど、流石に死なれても困るからね』
地面へと直撃する瞬間、フワリと自分の体が浮き上がり、ゆっくりと地面へおろされる。
「――――い、生きてるぅ・・・」
『君に『飛翔』の能力を与えておいたよ、もちろん1%だから落ちた時にしか使えないけどね・・・じゃ!あとは頑張ってね!』
――――『頑張って』じゃねえよ・・・
そんなことを思いながら、仰向けで空を見ていると、影が自分に覆いかぶさる。
「あの・・・大丈夫ですか?」
――――どうやら、第一村人発見・・・いや、この場合は「見つかった」が正しいのか?
落ちてきたのを見られたかもしれないし――――とりあえずここは誤魔化しておくか。
「・・・あ、こんちゃ」
「・・・いえ、あの大丈夫ですか?」
「おいおい、挨拶は大事だぜ?」
「いや、だって今空から降ってきましたよね?」
・・・やっぱり見られていたか・・・まあいいか、それぐらいなら「異世界から来た」ってことはバレないだろ。
それにしてもこいつ――――
「・・・わかりました。では問いを変えます」
お、ラッキー相手から問いを変えてきた。
「ここで何をしていましたか?」
「――――」
と、思ったが、余計面倒くさい質問にされた。
「何をしていた?」何もしていないが答えだ。「異世界から転移されてきました」なんて言えるわけがない。
「空から降ってきたことは言及しません。ただし、何故この場所なのか。ここで何をしようとしているのか、それともしているのか。答えてください」
「――――」
「――――何をするつもりだ?」
少年――――いや、少女はナイフをこちらへ突き立て、馬乗りの状態になる。
「・・・ついには敬語もやめたな」
「ごまかさないでください!」
話題を逸らすために相手の揚げ足を取るが、思い通りにはいかず、少女はさらにナイフの距離を近づける。
「さぁ!答えてくださ――」
「ピロン!」と、いつの間にか手から離れていたスマホから音がする。
――――なんだ?こんなときに――――!?
横を見て、スマホを確認する――――
そこには、「力を持つもの」から「人生を奪われた者」の情報が書かれていた。
・・・つまり、こいつは必然的に「人生を奪われた者」になる――――使えそうだ。
「なるほどな」
それだけ言うと、顔の向きを戻して少女と目を合わせる。
――――できるだけ敵意は見せずに・・・緊張は残しつつも気さくな感じで・・・
「わかったわかった。俺は別に何もする気はないって」
「・・・本当ですか?」
「本当だって、なんなら身体検査してもらっても構わないよ」
「――――」
少女はナイフを離し鞘に納めると、馬乗りの状態からも解放してくれる。
――――どうやら信用してくれたみたいだな、嘘を見抜けるだけの能力はあるようだ・・・流石「元最強」と言ったところか。
「申し訳ありません。大丈夫でしたか?」
「それさっきまでナイフ突き立ててた相手に言う?・・・まぁいいけどさ」
そういうと、少女は手を差し伸べて体を起こすと、手にスマホを渡してくれる。
「実はこの近くが僕の家でして、少し警戒心が強まってしまいました。申し訳ございません」
「いや全然いいよ、むしろ悪かったな」
――――嘘ではない・・・だが、理由はそれだけではないみたいだな。
まあ言及する意味はないな。
とりあえず信頼を深めるためにも、道を確認するにも、こいつの家へ行くのが得策か・・・?
「あー・・・ところでさ、俺迷子になってて良かったらその家に行かせてもらえないかなぁ」
「・・・構いませんよ、ぜひ来てください」
――――お、意外とすんなりだな。
「あと・・・これ聞いていいのかわかんねぇけどさぁ・・・」
「・・・なんですか?構いませんよ」
・・・いや、本当は構わないわけではないと思うが・・・まあいいか。
「――――じゃあ、言うけどさぁ・・・なんで男のフリしてんの?」
――――性別を隠すということは、何か理由があるということ、ならばそこを刺激すれば・・・まあ交渉材料にはなるだろ。
――――さあ、じゃあ異世界攻略・・・始めますか――――!




