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神様です

――――死んだのだろうか。


気づいたとき――――そこは暗闇だった。

感覚がない――――いや、()()()()()()()()()()()()()()・・・なんだか不思議な気分だ。

風が吹いているようにも感じるし、風が無いようにも感じる。

何かが見えているようで、何も見えない気がする。

どこかで音がしたような気もすれば、聴覚そのものが無いように静かだ。


――――()()は、どこだろう。


『やあ、愛川 将、君に会えて光栄だ』


――――!?


その音が聞こえた瞬間――――まるで物体の全てに色が付いたように、感覚という感覚が、全ての情報が明確化される。

俺は今――――椅子に座っていたようだ。


『さすが()()()、こんな中でも冷静に思考ができるのは君ぐらいだろうね』


空気のように、ただ当たり前に存在するかのように、その声は響く・・・奇妙だ、人間味があるようでない、機械音といえばそうではない、ただ風が吹き抜けるように、当たり前の声――――こいつは・・・なんだ?!


『「なんだ」、とは失礼だな――――どうせなら人間らしく、「誰だ」とでも言ってくれよ』


――――こいつ、思考を読み取って・・・!?


『そんなに驚くことではないよ・・・君だって「人の行動や心理から何を思っているか言い当てる」ぐらい簡単なことだろう?まあ、僕はそれとは全く違うものだけどね』


「・・・それでも、『人間として扱ってくれ』というのは、些か失礼じゃないか?」


『ほう?それはどうして?』


「『どうして』ってそりゃあ・・・」


そいつに、ソレに、指を指しながら答える。

上から下までクリンとした丸形、喋っているにも関わらず口が一切動かず、申し訳程度に光っているその目からは――――まるで『ぬいぐるみ』のようなものを連想させる。

――――そうだな、例を出すとするならばソレは・・・顔のついた『枝豆』としか言いようがなかった。


『おいおい、枝豆だなんてひどいなぁ』


「いやいや、どっからどう見ても今のお前は『豆〇ば』だよ、飯を食べている時にひょっこりと出てきて、誰も聞いていないような豆知識を言って去っていくようなヤツだよ」


『「豆し〇」だなんてひどいなぁ・・・少なくとも、僕は好きでこんな体になったわけじゃないんだよ?これは君が望んだ、君の姿だ』


「俺の望んだ、俺の姿・・・?」


『あぁ!この世界では君の望んだことは全て僕に反映される!姿も、声も、状況すらも!』


――――相変わらず、そいつは一切表情も変えずに語る。

俺が望んだ状況・・・?俺は別に望んだつもりはない・・・はずだ。

少なくとも、枝豆になりたいなんて望むはずがない。


『そうだね・・・実際、僕も驚いているんだよ・・・まさかここまで絶望しているなんて』


「絶望・・・?別に絶望なんてしてないぞ、俺は毎日が楽しいからな」


嘘なんてついていない、現に今日だってマリーと文化祭を回れて楽しかった。

マリーとゲームができて楽しかった。

絶望なんて――――しているはずがない。


『うーん、これは重症だねぇ・・・じゃあさ、君は今日のうち()()()()楽しいと言ったかい?』


――――確かに、口に出しては言っていないが・・・それでも――――


『それでも・・・「心の中では思っていた」かい?うーん・・・ちょっと今までの話見返して来たら?そんな描写一度もなかったぜ?』


「見返して来たら、描写って・・・まるでこの世界が漫画とかフィクションかのように話すんだな、お前は」


『・・・漫画ではないんだけどなぁ』


「・・・結局、お前は何者でここはどこなんだ?俺の記憶が間違っていないなら、俺はザンヤに刺されたはずだ、それで――――」


・・・それで、何があったんだっけ・・・誰かがその後――――


『その記憶は間違っていないよ、ただ――――最後の方は僕も知らないよ』


「知らない、ねぇ・・・何か隠しているような気がするのに、何も隠していない気もするよ・・・不思議な気分だ」


嘘どころか、感情そのものが読み取れない・・・本当にこいつは何者なんだ。


『そうだね・・・そろそろ本題にも移りたいしね、「僕が何者か」ぐらいは教えるとしよう――――』


そう言うと、枝豆のそいつは浮かび上がったと思うと・・・座っている自分の目の前へと、文字通り目と鼻の先に現れる。


『僕はね・・・君たちの世界で言うところの「神」だ』


「・・・神ねぇ」


『おいおい、少しは驚いてくれてもいいじゃないか、ここまでやれば一切神を信じないやつでも、少しは動揺してくれるぜ?』


いつの間にか、「神」と名乗るそいつは元の位置に戻っている。

神か・・・信じたことがないわけではないが・・・


『まあいいや、とりあえず話は進めさせてもらうよ・・・文字数も2000を超えちゃったしね』


自称「神」は、また訳の分からないことを言って話を続ける。


『これは「君の願い」であり、「僕の頼み」なんだけど・・・今から異世界に行ってもらえないかな?』


「・・・異世界?最近流行りのあれか、『異世界転生』ってやつか?」


『そうそう、まあ転生ってよりかは転移かな?まあ細かいところは良いや、そこに行ってある人物たちを討伐してもらいたい』


()()()()・・・つまり複数人ってことか。

それにしても異世界転生?転移?だったか、そんなことが可能なのか・・・?転生って言っても、俺は・・・


『死んでない、訳ないよね?確かに君はザンヤくんに刺されて死んだんだから・・・あまり言いたくはないけどね、これは「脅迫」でもあるんだよ?今、君の命を留めているのはこの僕だ、まだ君は死ねないはずだろう?』


――――確かに、まだ死ねない・・・いや、死んだから死ねないはおかしいのか?・・・どちらにせよ、俺はまだ生きなければいけない、生を全うしなければいけないのだ。


『改めて、自分に主導権がないことを自覚させた上で説明するよ。実はね?僕って優しいから、死んだ人間の願いを一度だけ聞いてあげようと思ったんだよ、未練の残った魂の願いを叶えて別の世界へと送る・・・こうして計七人を異世界へ送り届けたのさ、そうしたら・・・ドジっちゃった☆』


「・・・」


『まあまあ、落ち着いて聞いてくれよ・・・どいつもこいつも欲が深くてたまらない、皆が「異世界転生無双ハーレム」だ、まさにこの作品に恥じない光景だよ』


――――最後の言葉は良く分からないが・・・それにしても「無双ハーレム」か・・・


『そう、君の大嫌いな「無双」だ、だからこそ君の願いでもある』


「・・・俺の願い、というと?」


『・・・異世界転生した計7人を君が倒す――――「天才」が大嫌いな君に「天才」を殲滅させる手伝いをしてあげると言っているんだ。それにその願いが終わったら、改めて別の願いを叶えてあげるよ、生き返らせることが前提条件でね、悪くないだろう?』


――――確かに悪くない条件だ、全てが終われば生き返らせてもらえる。さらに願いも叶えてもらうという最高のオプション付きだ。

だが・・・


「何故お前は自分でやらないんだ?そんなにそいつらが邪魔なら自分でやったほうが早いだろ」


『・・・確かに、僕がやればあっという間に皆死ぬだろうね・・・だが――――それじゃあつまらない、だろう?』


つまらない・・・か、まさに神だな、あくまでも傍観者で、あくまでも強者で、常に優位に立ち続けられるからこそ言えることだ。


「・・・分かった、その話に乗ろう」


どうせ断っても殺されるだけだ、ならば素直に従っておこう。


『物分かりがよくて助かるよ、じゃあ「規則(レギュレーション)」の説明をしよう』


「レギュレーション・・・?」


――――どこかでそんな言葉を聞いたような・・・


規則(レギュレーション)・・・まずはどうすれば君の――――僕たちの勝ちかを説明しよう』


ドンッ!と、目の前に大きな石の壁が二つ現れる。


これは・・・?


『これは・・・そうだな、誓いの石とでも言っておこうかな?ここに規則(レギュレーション)・・・ようするに、今から行うゲームのルールを記載していこうと思っている・・・じゃあ早速、一つ目』


すると、その声に合わせて誓いの石に「Ⅰ」と書かれる。


『今回は、彼らの行っている「世界改変」が問題だ、だから僕らが勝つにはそれを止める――――「力の抑制」が僕らの勝利条件だ』


「力の抑制・・・把握だ」


すると、「Ⅰ」と書かれた後ろに勝利条件が書かれていく。


『じゃあ次、二つ目・・・僕らは「世界改変」を止めるために戦う、だから「世界改変」に近しい行為、または「世界改変」をした場合、それは「反則」とみなす』


「当然だな・・・把握だ」


すると、一番目に書かれたルールの下に「Ⅱ」と、二つ目のルールが書き足される。


『三つ目・・・いかなる状況、場合でも反則は反則だ、「反則」を行った場合はそれと同等の罰を与える』


「それも当たり前だな・・・把握」


二つ目のルールの下に「Ⅲ」と、三つ目のルールが書かれる。


『四つ目・・・計七人の「力を持つもの」を倒さない限り、クリアではないものとする』


「最初の時点で確認済みだ・・・把握」


三つ目のルールの下に「Ⅳ」と、四つ目のルールが書かれる。


『五つ目・・・これらのルールを守り、ゲームをクリアした者に報酬を与える』


「それも最初の時点で確認済み・・・!把握・・・!」


四つ目のルールの下に「Ⅴ」と、五つ目のルールが書かれる。


『以上、たった五つだが、されど五つ――――その五つのルールのもと、我々は正々堂々と戦うことをここに誓おう!』


「把握だ・・・と、言いたいが少し聞きたいことがある」


『聞かなくても分かるけど一応聞いておこうか・・・なんだい?』


「一つ目のルール・・・力の抑制って具体的に何をするんだ?」


力の抑制・・・言うのは簡単だが、あまりにも情報が少なすぎる。

どうすれば「力」を抑制したことになるのか、一番簡単なのは命を絶つことだが・・・手足を封じ込めても「力」を抑制したことになるのだろうか・・・?


『まあ「力」について詳しいことを説明しようか、まず力っていうのは――――』


すると突然、横から炎が噴き出す。


『・・・まあこんな風に、僕は神だから色々なことが出来るんだけど・・・この力の一つをそれぞれ7人にあげちゃったんだ、それもさっきのとは比にならないほどの強力なやつ☆』


「・・・そりゃあ「世界改変」ぐらい起こるだろうよ」


『で、それを止める・・・まあ回収してほしいんだよ、僕の能力を』


「回収ねぇ・・・結局、どうやったら回収できるんだ?」


『まあまあ、慌てるなよ。そこで、僕の能力を二つばかり――――その1%ほどを君に貸すよ』


「1%?そりゃあ随分な数字だな」


『聞いただけでは弱そうだけど、それでも僕の能力だ、強いよ・・・それに、「世界改変」を止めるために「力」を貸すのに、それが世界に影響を与えたら意味がないだろう?だから弱くしているんだよ』


――――なるほどな、確かにそうだ。


『君に渡す能力・・・『破棄』そして『回収』だよ。ありがたく使ってくれよ』


「『破棄』と『回収』か・・・どんな能力なんだ?」


『そのままの意味だよ、ただし1%だからね、『破棄』は「能力を持っている者」にしか使えないし、なにより相手の了承が必要だ、本来なら「問答無用の命の破棄」すらも可能な能力なんだけどね・・・』


「そりゃあクソチート、1%にして正解だよ」


『次に『回収』・・・これは言葉通りだけど、やはり1%だ、「能力の回収」にしか使えなくなっているし、一つの物しか回収、保持できない仕様だよ・・・本来なら「生物の記憶の回収」も出来るんだけどね、この二つの能力を使って僕の能力を取り戻してきてよ』


「『回収』は一つの物しか保持できないんだろ?どうやって7つもお前に渡すんだよ?」


『それなら大丈夫だよ、能力を破棄した時点で能力は僕に帰って来るからね』


――――ん?それなら何故『回収』を渡したんだ?


『それは僕からの優しさだよ、『破棄』した能力を『回収』して・・・まあ99%は返してもらうけど、だけど1%の能力を君に使わせてあげようと思っているんだよ』


「・・・なるほどな、ところで『破棄』の使用には相手の了承が必要なんだよな?相手が了承しなかった場合はどうするんだ?」


『いや、『回収』を使えば問答無用で能力は盗れるよ?だから言っているだろ?「使わせてあげる」って、君が使いたいと思った能力なら『回収』してしまえばいい、いらないなら無理矢理でも『破棄』させてしまえよ、それぐらいなら君にできるだろ?』


――――つまり、今の能力の新しい能力、どっちが欲しいかを自分で決めろってことか・・・本当にゲームみたいだな


『あぁ、そういえば一つ忘れていたよ・・・君が一番最初に倒した「力を持つもの」ザンヤって名乗ってたっけ?あの子の能力でも回収したら?今なら渡すぜ?』


「・・・!?ちょっと待て!あいつ『力を持つもの』だったのかよ!」


『君だっておかしいと思っていただろ?急激なピアノ演奏技術の上達、実を言うとあれ僕の能力『熟練』のせいなんだよね、「一度したことは完璧にこなせるようになる」それが『熟練』の能力さ、彼はその能力を使って、たった一度鍵盤を押しただけで完璧に弾いてみせたんだよね』


――――身近で見ていたからこそ感じる。あの能力がどれだけ凄いかが――――


『彼も最初は大人しそうな、どちらかといえば目立つのは避けるているような人間だったんだけどね・・・どこか心の中では「目立ちたい」と思ってたのかな?まるでけじめをつけるかのように元の名前を捨てて如月 斬夜を名乗り、容姿すらも改めて、ついにはあの学園の王子様だ』


・・・元の名前を捨てた、か・・・容姿すらも変えて、そんなに前世の自分が嫌いだったのだろうか・・・自分には分からない、そう思うのはやはり自分が()()だからだろうか。


『・・・ま、実力が分かったところでどうだろう?たった1%だが、使えないことは無いと思うよ?「少し練習すればできる程度」にはなるよ』


「・・・そうだな、生憎クソチートは趣味じゃないが――――」


せっかくだ、ゲームマスターの指示ぐらいは聞いてやろう。


「――――()()()()()使わせてもらうよ、『熟練』どれだけ使えるか楽しみだ」


『――――そりゃあ・・・嬉しいねぇ』

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