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あの日の天才は 5

「・・・では、今日も会議を始めます・・・」


そういうソラ先輩の声にいつもの元気はなく、どこか落ち込んでいるような雰囲気を思わせる。

やはりショウと何かしら関係しているのだろうか、仲間割れの線を思いながら、今日も会議が始まる。


「・・・実はですね、歌合戦の件で先生方から頼みごとをされまして」


そう言って貼りだされた紙には何やら曲が書かれている。

よくある、教師からのサプライズというやつだろうか?紙にもそう記載されている。


「この企画、最後の先生方一同が歌うさいはピアノを希望されています。しかし、サプライズのためピアノを扱うのは当然私たちです。本来なら経験者である私がやるところなのですが――――」


そう言ってソラ先輩は困ったような顔をしながら続ける。


「誰かピアノ経験者はいませんか?私は当日、少し用があってできません」


そう言って挙手を誘うように、ソラ先輩は手を上げて尋ねる。

――――ピアノか・・・そういえば、ピアノは()()習得してないな。


誰一人として立候補する様子がなく、しばらくすると・・・

「ザンヤ先輩はどうですか?」と、そんな声がする。

それに続くように、「ザンヤ君がいいと思う」など、自分を推すような発言が目立ってくる。


「ザンヤ君・・・でも、ピアノはやったことある?」


そんな発言に感化され、ソラ先輩が尋ねてくる。

――――そうだな、まあ()()()()()。やるとしよう、『俺』なら可能だからな。


「はい!一応経験者ですよ!」


屈託のない笑顔でそう言うと、ガタッと机か椅子か、何かを勢いで鳴らしてしまったような音がする。

その音の方向には、焦っているようにも見えるショウがいた。


「いや、ちょっとま・・・!」


――――なんだ?また何か言うつもりか?

ショウの行動に、咄嗟に身構える。しかし、その後に言葉が続くことはなく・・・


「・・・ソラ先輩、ちょっと空気悪いんで僕は帰らせてもらいます」


周りの声、まるで「空気を読め」とでもいうようなヒソヒソ声に、ショウは気圧されたのかそう言って身支度をし始める。

「えっと・・・」と戸惑っているソラ先輩に対し、女子生徒は容赦なく「別にいいんじゃない?」といい、各々が「早く帰れ」とでも言わんばかりに発言を繰り返す。

その言葉に、ショウは呆れたように「じゃあ帰りますわ」と、会議室を立ち去る。


――――本当に、帰ったのか?


突然のショウの帰宅に、ソラ先輩は驚き固まっている。

だが、なんにせよ脅威は去った・・・みたいだ。

ならばあとは好き放題だ――――遠慮なくやらせてもらおう。


――――そして、ショウがいない状態で会議は繰り返され・・・ついに文化祭当日となる。


***


・・・さて、午前中の予定は何があったかな。


自分の予定をメモしておいた紙を確認しながら、体育館へと向かう。

文化祭実行委員としての仕事、クラスの店番としての仕事、かなり忙しくなりそうな内容だが、これも人望があるが故の仕事の数だとも言えよう。


・・・まあ、とりあえず今は最初の仕事を終わらせるとしよう。


多くの生徒が体育館に入って行く中、自分だけが裏方へと回って準備をする。

さて――――最初の仕事はピアノを弾くことか・・・

開会式お決まりの校歌斉唱――――ピアノが弾けるということで、会議中に新たに決められた仕事だ。

まあ「ピアノが弾ける」と言っても――――弾けるようになったのは昨日の話なんだがな。


準備も終わり、開会式が始まる――――さて、準備運動代わりに弾くとしよう・・・


そう言ってザンヤはピアノに手を置いて、誰もが経験者だと疑わないほどの音色を奏で始める――――


***


――――ふう、これでやっと自由行動か。


長たらしい開会式が終わり、ついに動けるようになる。と、言っても午前中はまだ仕事がある。本当に自由になるのは昼休み辺りだろうか。


自分の忙しさに、しかしどこか誇らしげにザンヤはため息を吐くと、自分の教室へと向かう。

次は・・・店番だったかな?

様々な出し物がある中、自分のクラスは『射的』をすることになった。

今回するのはそこの店番だ、主にやるのは道具の貸し出し、あとは簡単な使い方の説明ぐらいだ。

「じゃ、ザンヤ君お願いね!」と、そう言って自分に店番を任せてクラスメイトは自由行動を始める。

それを見送るように笑顔で手を振りながら、的の準備や道具の確認を済ませる。


特に気分が悪いと思うことはない、みんなが『俺』を頼る。そのことに優越感を覚えるからだ、だからこそ・・・『俺』に対抗するようなヤツが許せない。


文化祭実行委員の中にいるとある人物を思い浮かべ、少し気分が害される。

――――だが、結局あれから最後まで会議に出ることはなかったな。所詮その程度だということか。


「すいません、もうやってますか?」


「はい、大丈夫ですよー」


早速一組目の客が来たため、笑顔で対応する。

さて――――忙しくなりそうだ。


***


続々と来る客を機械的に処理しながら、交代の時間を待つ。

・・・そろそろか

時計を見ると、少し早いがそろそろ次の店番の生徒が来てもおかしくないような時間になっていた。

しかし、いつ客が来てもいいように道具の準備をしていると、「二人分でお願いしますわ!」と元気のいい声が聞こえる。


「わかりました、少々お待ちくださいね」


そういって、机の下にある箱から道具を取り出す。

銃を来た客に渡そうとする――――その客は、思ってもみなかった人物だった。


「・・・やあショウくん」


カップルに見えなくもない、その男子生徒と金髪の少女・・・その片方はショウだった。

・・・こんな行事には興味がないかと思っていたんだがな、それにしても女連れとは・・・意外なこともあるものだな。

憎きその男に、あくまで客として笑顔で対応する。

ショウも気まずいのか、目を逸らしている。


「・・・ザンヤ先輩、お久しぶりですね」


「ははっ、言うほど久しぶりでもないだろう?それにしても驚いたよ、こちらは彼女さんかい?」


「いえ、幼馴染ですよ・・・それよりピアノできるんですね、そっちのほうが驚きでしたよ」


「・・・昔に少し習っていてね、ピアノは得意なんだよ」


――――まあ嘘だが。


「ショウ・・・知り合いですの?」


ずっと黙っていた金髪の少女が、ショウと俺が知り合いだと気づいたのか、俺が何者かをショウに尋ねる。


「文化祭実行委員の時にお世話になったザンヤ先輩だよ」


「そうですの!ショウがお世話になってますわ!」


深々と、礼儀正しく、頭を下げる金髪の少女に「いえ、こちらこそ」と軽くお辞儀する。

――――一応こいつらも客だし、対応はしないとな・・・


「・・・じゃ、二人分でいいんだよね?これどうぞ」


そう言って銃をお互いに一つ渡すと、


「ありがとうですわ!ショウ!早速勝負ですわ!」


「おう、得点が高いほうが勝ちな」


そう言って、机に置いてあったゴーグルを付け、説明もなしに構え始める。

そんな光景を、手を組んで眺める。

どうやら交代の時間が近づいたため、店番の交代に生徒も来たようだ。


――――さて、じゃあ俺も自由行動とさせてもらおう。

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