あの日の天才は 2
あれから幾つか月日が経った――――しかし、一向に犯人の目星は付かず、日は明け暮れるばかりだった。
今日も犯人は見つからず、か・・・それにしてもまずいな、犯人の気が変わりでもしたら今にでもバラされてもおかしくはない。本当に・・・今すぐにでも見つけなければ。
「・・・?」
帰宅途中に自分のスマートフォンが見当たらないことに気づき、カバンの中やポケットの中を探す。
しかし、やはり見つからず、一度歩みを止めて考える。
――――もしかして会議室に置いてきたか・・・?一度戻るか・・・
一度会議室へと戻り、スマホを探すことにする。
会議室の扉の前まで来たところで、扉に手をかけようとすると声が聞こえる――――
・・・どうやら、まだ誰かいるようだ。この声は・・・ソラ先輩ともう一人、確かショウと呼ばれてたヤツだな。
犯人捜しを始めてから覚えた名前と声、そこから一年の生徒と三年の生徒だということを当てる。
――――一体、何の話をしているんだ?
何気なく疑問が浮かび、その会話を盗み聞くように扉の前で立つ。
「・・・てね、サキちゃんのことなんだけど」
「こっちなら大丈夫ですよ、ただ今のところはですが」
『サキちゃん』・・・あの一年の女子生徒のことか、そういえば副委員長だったな・・・だが何故そいつの話を・・・?
さらに話を聞くために、壁に這うようになって耳を傾ける。
「・・・それにしてもさ!本当にどうやって皆を来るようにさせたのかなー?先輩気になるなー!」
「・・・別に何もしてないですよ」
「本当かなー!?他の人はまだしも、サキちゃんやザンヤくんは相当何かやらなければ動かないと思ってたけどなー?!」
――――な!?
自分の名前が出たことに――――いや、自分が『ショウ』という人物によっておびき出されたことを聞いてしまい、驚きのあまり扉を揺らしてしまう。おかげで「ガタッ」と物音がなってしまった。
――――まずい・・・!
逃げるように物陰へと隠れると、会議室の扉が「ガラッ」と開けられ、勢いよく愛川が顔を出す。
――――愛川・・・ショウ、まさかあいつが・・・?
物音を立てないように、慎重になりながら、しかし迅速に外に出ると、本来の目的――――忘れ物を取ってくるという目的さえも忘れるほど、興奮が抑えられない。
・・・ついに犯人を、だがどうする?写真を撮られているからには対処のしようも・・・
そう悩んでいる時に、ふと目に入る――――それは、女子生徒の団体だった。
――――そういえば、今さっきサキって呼ばれていたヤツの友達・・・?だよな、どうしてそのサキだけいないんだ?
先ほどのショウとソラ先輩との会話を思い出しながら、サキという人物がいないことに違和感を覚える。
何か思い当たるところがあり、ひっそりと近づいて話を盗み聞きしてみる――――
「マジさー、サキちょっと調子乗りすぎじゃない?」
「分かるわー、男受け狙いすぎっていうの?真面目ぶっちゃってさー」
「ねー」
――――思った以上にえぐい内容を話しているようで、少し女の怖さにドン引きしてしまう。
つまり、これはサキという子が仲間外れにされているということで・・・そういう事でいいのだろうか?
なるほど、だからさっき会議室で話を・・・だが――――これは使えるんじゃないか?
「・・・やあ!」
偶然通りかかったような顔をしながら、手を軽く上げて挨拶をする。それを憧れの人、ザンヤだと気づくと、女子軍団たちは一斉に声色を変えて「ザ、ザンヤくん!?」「ザンヤ先輩・・・!?」と、騒ぎ始める。
「さっきの会話、ちょっと聞いちゃったんだけど・・・君たち、そういう事はあまり良くないんじゃないかな?」
笑顔のまま、しかしどこか圧があるような声で、ザンヤはそういう。
しかし、「え、でも・・・」と、何か言い訳があるように言葉を始めるのを見ると、それを遮るように「ちょっと待って!」とザンヤは続ける。
「別に愚痴を言うことを否定しているわけじゃないんだよ、ただ・・・そういうのは直接本人に言ったほうがいい時もあるんじゃないかな?」
「え・・・?」と、ザンヤの思わぬ言葉に生徒たちはざわざわとし始める。
「ほら、自分の欠点が分かればそれを補うことも、改善することもできるでしょ?だから、そういう事は勇気を出してでも本人に言うべきだと思うよ!」
ザンヤは謂う――――それこそが正解だと、それこそが正しいのだと。
その言葉を聞いた女子軍団は「確かに・・・」「一理あるかも・・・」と再びざわざわと話し始める。
――――さあ、ショウくん?・・・『嫌がらせ』ぐらいなら出来たかな?
***
――――翌日、案の定騒動が起きた・・・女子生徒たちの喧嘩だ。
きっかけは些細なことだ、だがその些細な事のおかげで想像以上の成果が得られている――――
愛川 将・・・お前が恐れていた事態はこれだろう――――?
さすが完璧で幸福で救われている・・・『俺』だからこそ出来ることだ。
喜びを隠しきれずニヤニヤと笑う――――嗤ってしまう。「ざまぁみろ」と・・・
徐々に熱を帯びていく喧嘩を、ついにショウが止めに入る――――だが、完璧には収拾がつかない。
さて・・・やはり『俺』じゃなければ止められないみたいだね。
「まあまあ、君たちも少し落ち着きなよ」
落ち着いた口調で、自分だけが冷静なように言葉を紡ぎながら――――
・・・ほら、見ろよ――――『俺』だからこそこの場を止められる。『俺』だからこそ出来るんだ――――お前が出る幕はないんだよ・・・!ショウ――――!
再び笑みを浮かべながら・・・その男は優越感に浸っていた。
どう・・・も・・・こん・・・で・・・す・・・(絶命)




