暗躍の演奏者 3
――――歌が終わり、幕が下がる。
突然の終了の合図に、観客の生徒たちはざわざわと騒ぎ始める。
今から一体何が起こるんだろうか、どう楽しませてくれるのだろうか、生徒たちの顔は困惑と期待の表情でいっぱいになり、ジッと舞台を見ている。
さあ、開始だ――――!
ピアノの置いてあるこちらと反対の方向に立っている実行委員たちに合図を送る。
委員たちはそれを確かめると、小さく頷き準備に取り掛かる。
時間との勝負だ、急げ・・・!
観客である生徒たちから弾いている姿が見えるように、しかし演奏者の顔は見えないように、うまくピアノの位置を調整する。
あっちは・・・大丈夫みたいだな、よし――――!
他の準備を任せた委員たちは大丈夫か確認すると、無事準備ができたみたいで教師が続々と舞台へ上がり、歌う準備をしている。
全ての準備が整ったことを確認すると、ピアノの前に置いてある椅子に座って準備完了の合図を出す。
ゆっくりと幕が上げられ、舞台下にいる生徒たちの顔が見えるようになる。
――――どうやら驚かせるという目的自体は成功したようで、立ち並ぶ教師たちの姿を見て生徒たちの盛り上がりは最高潮に達していた。
――――ポロンとピアノを鳴らし、曲に入る。
たった数か月――――だが、そのたった数か月間、ゲームのための時間すら惜しんでひたすらに練習してきた。
だからこそ、ピアノをやっていない素人程度なら騙せる程度には上達したぞ――――!
練習を思い出しながらピアノを弾く、曲に関してはキーボードでの練習だが、ピアノを弾く感覚はしっかりと確認してきた・・・。
家具屋、楽器屋、ピアノの感覚をつかむために色々なところを回ったことを思い出し、今更ながらそこまでやった自分を褒めたい思いになる。
――――ん?
ピアノを弾いていると、想像以上に生徒たちが盛り上がっている。
「ピアノ弾いてる奴すごいらしいぞ!」「マジか!何者だよ!」「ザンヤくんだって!すごいね!」
――――なにか勝手に勘違いして勝手に盛り上がっているようだが・・・まあいい、手間が省けた――――
曲も終盤に差し掛かり、教師たちにも疲れが見えかかる。
――――さあ、これで・・・終わりだ――――!
最後の鍵盤を押し、曲が終わりを迎える――――しばらく静かになった後で、パチパチパチパチと拍手と称賛の声が聞こえる。
経験者からすればガバガバな弾き方だっただろうが・・・とりあえず今は上手くいったことを素直に喜ぼう。
椅子から立ち上がり、ひっそりと出口へ向かう。
出口の扉を開け、外に出ようとすると・・・
「あ・・・」
「・・・」
ばったりとサキに鉢合わせてしまう。
別に話すことはないため、無言で横を通ろうとすると、「待って」と声をかけられる。
「さっきのアレ、あんたがやったの・・・?」
「・・・さあな、ザンヤ先輩じゃねえの?あの人なんでもできるし」
問いに答えると、「そう・・・」とだけサキは言って体育館の中へと入っていく。
――――さて、のんびりしている場合ではない。ゲームはまだ・・・終わってないんだから。




