暗躍の演奏者 2
ざわざわと騒ぐ声が聞こえる。
しかし、それは観客の声ではない・・・今まさに『校内歌合戦』の仕事をしている実行委員たちの声だ。
「まだザンヤは来ないのか・・・?」「先生たちはスタンバイできてるよ!」「あとどれくらいが限度だ!?」
だが、その声は観客の生徒たちのような賑わい方ではなく、その逆・・・悪い意味で賑わっている。
焦りながらも、なんとか試行錯誤をして時間を稼ごうとしている実行委員たち――――てんやわんやで忙しい中にショウはゆっくりと足を踏み入れると――――
「――――!?」
鋭い視線が一斉に集まる――――
俺からすれば最後の会議・・・サキ達の件で印象があまり良くないのは分かっていたが、かなり敵視されてるな。
しかしその状況に臆することなく、堂々と歩み寄って、残りの歌の時間、ピアノの位置を確認すると――――
「・・・みなさん、サプライズの用意をしてください。この歌が終わったら実行します」
そう言って、その場を立ち去ろうとすると――――
「おい、ちょっと待てよ」
横切ろうとするところで男子生徒にガシッと肩を掴まれ、歩みを止められる。
「急に出てきたと思ったらなんだお前は!?」
相当焦っているのだろう、突然のことに動揺しすぎてその男子生徒はこちらへ怒鳴ってくる。
――――舞台下にいる生徒たちに聞こえなかったからいいものの・・・聞こえていたら、それこそ舞台は台無しだぞ
「とりあえずは指示に従ってください、これはソラ先輩からの指示です」
「ソラ先輩の・・・?」
ソラ先輩の名前を出すと、落ち着きを取り戻したように肩を掴む力が緩む。
・・・まあ、当然嘘だが
「はい、ザンヤ先輩が見つからないため、この場の指示は任されました」
「・・・ちょっと待て!なんでお前に任されたんだよ!だってお前は・・・」
そこまで言いかけたところで、その男子生徒は口を噤む。サキ達のことを言おうとしたが、タブーだと思って止めたのだろう。
男子生徒の中で疑問と焦りが入り混じり、混乱した表情を浮かべている。
当然だ、あれだけ問題を起こしたやつが指示を任されたと言っているんだからな。
まわりを見ると、どうやら皆そう思っているらしく、困惑した表情をしながらこちらを見守っている。
どう言い訳するか――――そう考えていると、女子生徒がこちらへ歩を進めてくる。
「確かショウくん・・・?だっけ、とりあえずソラ先輩の指示なんだよね・・・?」
疑っているためか、それとも確認のためか、その女子生徒は問いを投げかける。その質問に静かに頷くと、女子生徒は目を瞑り、何かを決心したように「うん」と小さな声で頷く。
「・・・私は、ショウくんに指示を任せようと思う」
「え・・・!?」
「まだ信用しきれないところはあるけど・・・でもソラ先輩の指示でもあるし、ソラ先輩が信じたなら私も信じるよ」
その女子生徒がそう言い切ると、周りの生徒たちも「じゃあ俺も・・・」「私も・・・」と言い出す。
遂には肩を掴んでいた男子生徒も「・・・わかった」と決意して手を離す。
確かに任せてくれるか、しっかりと全員の顔を見て確認する――――
・・・信用されているわけではないが、それでも指示には従ってくれそうだ。
「では・・・」と言葉を始め、指示を出していく。
「まずは先生たちに出番を伝えてください。この歌が終わったらすぐに幕を閉じて準備を、そしてピアノは――――俺が弾きます」




