天才と呼ばれた君 3
ねっむ・・・
やっとのことで開会式が終わり、自由行動へと変わる。
当然、まっさきに行くのは保健室だ――――空いているとは思うが、扉が開いているとは限らない。もし開いていないなら屋上にでもいこう。
虚ろな目をしながら、ふらふらと保健室の扉に手をかける。
横へと引っ張ると、ガラッと扉が開き目の前のベッドが自分を出迎えてくれる。
――――保健の先生はいないようだが・・・まあ勝手に使わせてもらおう、今は何も考えたくない。
いくつか並んでいるうちの一つのベッドに飛び込むように入ると、そのまま瞼を閉じて眠りにつこうとする。
――――あぁ至福だ、睡眠がこんなに素晴らしいものだとは・・・
スヤァ・・・と全身の力を抜き、意識が遠のいていく――――しかし、ブオォォォ!という音に驚き目を開く。
――――なんだ?!
壁越しに聞こえてきた音に耳を澄ませると、ふたたびブオォォォ!と大きな音が鳴る。
それは楽器を吹く音だった、どうやら近くで吹奏楽部が練習しているようだ。
――――寝られると思ったが・・・どうやらダメみたいだな。
諦めて大人しく屋上へ行こうと、扉を開けて部屋を出ると階段を探す。
この上は確か――――3年生の教室だったか。
階段を上ろうと歩みを進めると、後ろで何かバサッと落ちる音がする。
「――――あ」
「・・・」
後ろを振り向き、音の原因を確認する・・・音はプリントの落ちた音のようだ、そしてそれを落としたのは今まさに目の前にいる人物――――ソラ先輩だろう。
ソラ先輩はこちらを見ると、慌てるようにプリントを拾い始める。
その光景を見なかったことにしようと再び顔を戻し、階段へと歩みを進める。
「ちょ、ちょっとま・・・」
ソラ先輩がプリントを拾い終わり、こちらを追いかけようと走るとまたプリントが落ちてしまう。
「あぁ・・・」と、またしゃがんでプリントを拾い始める。
「・・・どうぞ」
「あ・・・」
俺もしゃがんでプリントを拾い、ソラ先輩へと渡していく。
お互いに無言のままプリントをかき集め、最後の一束になるところで「ショウくん・・・」とソラ先輩から話しかけてくる。
「・・・なんですか」
「・・・ありがとうね、最後までわがままに付き合って貰っちゃって・・・でも、やっぱりショウくんとも一緒に文化祭を楽しみたいんだよ、だからせめてもの恩返しとしてショウくんを喜ばせることできないかな?」
「・・・大丈夫ですよ、そんなことしなくても」
最後の一束をソラ先輩の手に乗せて渡す。
ソラ先輩は「でも・・・」とどこか悲し気な顔をしながらこちらを見ている――――同情だろうか?だが、俺を喜ばせようとするのも所詮はソラ先輩のわがままであり、自己満足ではないのだろうか。俺は別に今がいいと思っているからこそやっているのだ、それに――――
「俺は、これからがお楽しみですから」
立ち上がり、満面の笑みでソラ先輩にそう言うと、向かい始める。
「え?ちょっと・・・!」と後ろで呼ぶソラ先輩にも振り向くことなく――――一つの方向だけを向き続けて歩く。
誰が楽しめていないと、幸せでいないと、喜んでいないと決めた?
俺の楽しみはここからだ、そのために――――今まで準備をしてきたのだから。
だって今日は――――文化祭だぞ?




