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天才と呼ばれた君 2

カチカチカチとキーボードの音を鳴らす――――

ヘッドホンから音が伝わり、鼓膜が震える――――


1、2、3・・・1、2、3・・・


ひたすらにキーボードを、音を鳴らし続ける。

何度も何度も、音が繰り返し流れ続ける――――それは、キーボードの音と合わさるかのように・・・


***


ざわざわと学校はいつもよりも賑わっている。

普段は学業ばかりで狭苦しいこの空間も、今じゃお祭り騒ぎ――――今日は文化祭だ。


「お、ショウじゃん!今日楽しみにしてるぜ?」


「おう、任せとけよ」


「今日までちゃんと練習してきたかー?www」


「期待してろって、コンディションは完璧だから」


教室へ向かっている途中、男子生徒の集団に話しかけられ歩きながら適当に返答する。

全校集会以来よく話されるようにはなったが、今日は一段と話しかけられる。やはり文化祭の歌合戦を期待されているのだろう。


階段を上り、二階へと着くとそこには見た顔がにこやかに何かを話している――――サキ達だ。


「・・・」


サキ達と目が合い、こちらに気づいたかと思うと一斉に黙り込み、こちらを睨みつけると声が小さくなって話が再開する。

平然とした顔で横を通り、教室へ入ると・・・やはりここでも会話が止まり、一段と声が小さくなる。だが――――


「おぉショウ!ついに今日だな!」

「楽しみにしてるぞー?」

「つかお前何番目に出るんだよ」


「お、おう・・・」


サキ達とは違い、男子生徒に囲まれて肩を叩かれたりする。あまりの勢いに的確な回答はできず、笑ってごまかす。

しかし、それとは反対に女子たちはこちらを見たきり目を合わせようとすらしない――――予想はしていたが、サキに何かを言われたのだろう。


――――まあこれぐらいなら支障はないか。


ひとまずは自分の生活に害はなさそうだと考え、ホッと胸を撫でおろす。

生徒の嵐からようやく抜け出すことができ、落ち着いてよく見ると椅子や机がなく、既に文化祭の準備は完璧と言わんばかりだった。


――――俺は歌合戦に出るということや文化祭実行委員だということもあり、当日仕事は無しでいいらしい。と言っても、やることもないから別にそこまで気を使わなくてもいいのだが・・・お言葉には甘えておこう。


クラスメイトの心遣いに甘えさせて貰おうと、壁にもたれかかって時間を待つ。

・・・しばらくするとチャイムが鳴り、放送が流れる――――『文化祭、開会式を行います。生徒の皆さんは、体育館へとお集まりください』


***


生徒が集まり、体育館にて話を聞く。

しかし俺は腐っても文化祭実行委員のため、壇上へ上がり生徒たちへ挨拶をしなければいけない。

そのため、皆とは違って端の方で椅子に座っている。だが――――


――――眠い


夜遅くまで起きていたということもあり、ずっと同じような話を聞いているというこもあり、とてつもない眠気に襲われる。


――――決めた、自由時間は寝させてもらおう。文化祭だし保健室ぐらいは空いてるだろ・・・空いてなかったとしても屋上で寝る。何が何でも寝よう。


コクリ・・・コクリ・・・と現在進行形で眠気に襲われながらも、なんとか耐えていると「おい」と後ろから声をかけられる。


「・・・あ、先生何かようですか?」


「・・・()()()何もするなよ?」


――――あぁ、前回のことを心配してるわけだ・・・それでわざわざ釘を刺しに来たのか。


「それにもう少しこの学校の生徒としての自覚を持て、今までは大目に見ていたがその髪、今すぐにでも切りたいぐらいだ」


「あー・・・明日にでも切ってきます」


夏休み前ですでに髪が長かったということもあり、夏休みが明ける頃には髪は伸びきって前髪で目が隠れるほどになっていた。

前髪をいじりながら切ってくると約束すると、その教師は仏頂面をしながら元の場所へと戻っていく。


「次は文化祭実行委員さん、お願いします」


ようやく呼ばれ、一斉に立ち上がって壇上へと上がる。

ソラ先輩はマイクの前に立ち、俺達実行委員は一列に並んでその様子を見守る。


「夏も終わりを告げ――――」


定型文から始まり、スローガンと意気込みをソラ先輩が話す。

やはりどうしても眠くなり、後ろで欠伸をこらえていると、ようやく話は終わる。


――――やっと終わったか、とりあえずこれで大体の開会式は終わりだろ。まったく、なんでこんなにも長いんだ。たかが挨拶だろうに・・・


内心で愚痴をこぼしながら壇を下り、椅子へと座る。


「では、最後に校歌斉唱です。ご起立ください」


座ったかと思うと、またすぐに立ち上がって肩幅ほど足を開く。

音楽が流れ、それに合わせて歌い始める。


――――いつもなら口パクでいいんだがな、今日は教師がいるから面倒くさい・・・


何となくだが歌っていると、ふとピアノを弾いている人へと目がいく。

ソラ先輩は一番右で歌っている。では、誰がピアノを弾いているのだろうか?


――――!?


思わず自分の目を疑う・・・そこに映っていたのは――――ザンヤだった。

しかしそのはずはない、ザンヤはピアノが弾けないはずなのだ。だって確かにあの時――――嘘を吐いていたはずなのだから。たったあれだけの期間で弾けるようなものではない、しかし確実にピアノを弾けている。それは、あまりにも奇妙な光景だった。


――――わけわかんね・・・


眠気と困惑で埋まった脳内に処理が追い付かず、クラクラとしてくる。


――――ザンヤ・・・お前は一体・・・?

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