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天才と呼ばれた君

ピリリリリと鳴るアラームを止め、カレンダーを確認する。


――――今日は何をするんだったか・・・そうそう、仕上げだったな。


昨日したことを思い出し、頭の中で情報を整理する。にしても、ヒヤヒヤする場面だった。あそこで失敗でもしたら、それこそ詰みだ。


今更ながら昨日の出来事に冷や汗をかきながらも、朝の支度を一通り終える。

さて、あとは頼みましたよ――――ソラ先輩・・・


***


会議室に入ると、すでに人は集まっていて残りは自分だけだったようだ。にしても、今日はやけに早いな・・・

そう思いながら自分の席へと行こうとすると、サキ達にキッと睨みつけれられる。どうやらもう仲直りしたようだ、案外友情というのは軽いものだな。だが、今はそちらのほうが楽といったものだ・・・


「・・・では、今日も会議を始めます・・・」


いつになく暗い挨拶をするソラ先輩、それに同調するようにみんなも不思議と暗く見えてくる。


「・・・実はですね、歌合戦の件で先生方から頼みごとをされまして」


そう言ってソラ先輩がホワイトボードに何やら紙を貼りだす。

内容は、歌合戦の最後に生徒たちへのサプライズとして歌いたい。とのことだ


――――歌う曲は最近ブームな曲から吹奏楽のような真面目な曲まで様々だ。ただ――――


「この企画、最後の先生方一同が歌うさいはピアノを希望されています。しかし、サプライズのためピアノを扱うのは当然私たちです。本来なら経験者である私がやるところなのですが――――」


ソラ先輩はチラリとこちらを見ると、


「誰かピアノ経験者はいませんか?私は当日、少し用があってできません」


――――おそらく、これはソラ先輩の気遣いだろう。俺がソラ先輩に教わっていたピアノをここで使えと・・・そういう事なのだろう。だが、ここで目立つわけにはいかないのだ、それでは意味がない・・・


立候補せずにしばらくしていると、どこからか声が聞こえる。

「ザンヤ先輩はどうですか?」「ザンヤ君がいいと思う」など、ザンヤを推すような声――――サキ達の集団だ。


「ザンヤ君・・・でも、ピアノはやったことある?」


「・・・はい!一応経験者ですよ!」


ソラ先輩が恐る恐る聞くと、ザンヤは元気よく「はい」と答える――――だが・・・


――――!?


ザンヤの言葉からは嘘しか感じ取れない、「やったことある?」という問いに対し「はい」と答えたのも、「経験者」だというのも、全て嘘なのだ――――俺には分かる。

しかし、何故だ?何故そこで嘘を吐く必要があるのか、見栄を張るため?違う、そんなものじゃない・・・何故そんなに自信満々に答えることが出来る・・・!?


あまりのザンヤの発言の奇妙さに戸惑っていると、いつの間にやら皆がザンヤが伴奏者になることを賛成している。

だが、これは賛成してはいけない。あまりにも怪しすぎる――――!


「いや、ちょっとま・・・!」


「待った」と言おうとするところで、ヒソヒソと声が聞こえる。

「何?また文句言う気?」「みんな賛成してるじゃん・・・」

・・・賛成してはいけない。だが、ここは荒波を立てる場面ではない。だが――――


「――――――――ソラ先輩、ちょっと空気悪いんで僕は帰らせてもらいます」


「え?えっと・・・」とソラ先輩が戸惑っていると、サキ達が「別にいいんじゃない?」と言い出す。


「そうだよ、どうせ一人いなくなったぐらい関係ないし」

「私たちだけで余裕だわ」


と、各々が言いたい放題に言っていく。


「・・・そう、じゃあ帰りますわ」


セリフを吐き捨て、荷物を持って会議室を去っていく。

俺がいなくなっても大丈夫だという言質さえとってしまえばサキ達は休みづらくもなるだろう。そうでなくとも、嫌いとしている奴と同じ行動なんてしたがらない・・・これでサキ達が欠席になることはないはずだ。

これで後片付けは終了、だが・・・


今日のソラ先輩の表情と雰囲気・・・それによって周りにまで影響を与えてしまっている。これでは意味がない・・・・ケアぐらいはしてやるか。

スマホを取り出し、ソラ先輩にメールを送る――――内容は・・・そうだな『これも作戦の一つです。絶対なんとかするので、先輩は盛り上げてください。先輩が元気じゃないとみんな困りますよ』・・・これだな、とりあえず作戦の一つとでも言っておけば元気は出るだろ。


――――ザンヤが何を企んでいるかはわからない・・・が、今更どうしようもない。いざとなったら強行突破もできるしな・・・。

そう考え、スマホで検索をかける――――確か、この曲だったか・・・

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