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壇上のピエロ 9

たった五日だが、かなり長く感じたな――――それに、参加者は結局集まらずか・・・

だが、そんな心配も今日でなくなる・・・はずだ。


少しばかりの不安が残りながらも、そんなことは気にせず時間は進んでいく。

大丈夫だ――――たとえ選択が間違っていても、マリーがいる。


全校集会があるのは6時限目、今は5時限目だ。

まだ緊張するような時間じゃない、だが足は震え、声も心なしか震えている気がする――――こんな緊張は久々だ。だが――――

カレンダーで残りの日付を確認する。もうそんな余裕もない、文化祭までに時間がないんだ。


いつの間にか授業は終わり、キンコーンと終わりを告げるチャイムが鳴る。

さて――――向かうとしよう。


微かに震える足を無理矢理でも前に出し、平然とした素振りをする。

誰にも――――悟られないように。


***


「えー・・・まだ夏休みが明けたばかりなので気を抜かず・・・」


教師が続々と全校生徒の前に立ち、話を続ける。

しかし、どれも内容は似たり寄ったりなものばかりで実のある話とは言えないものばかりだ。

おかげで生徒の中にはボーっとしているものや、顔を伏せてい寝ているものがいる。だが――――今回に関しては好都合かもしれない。前座がつまらなければつまらないほど・・・味がでるからな。


ついに最後の教師の話も終わり、手番が文化祭実行委員へと回ってくる。


――――大丈夫だ、何とかなる・・・だが、やり直しはきかない。


「――――では、文化祭実行委員一同からのお話です。どうぞ」


進行役の教員がそう言うと、ソラ先輩を筆頭にぞろぞろと文化祭実行委員が出る。

会が延長するということもあり、苦渋に満ちた表情をするものもいれば寝ている者、イライラしている者と様々な顔が壇上から見える。


ソラ先輩が置いてあるマイクの前に立ち、全校生徒に向かって話し始める。


「どうも、みなさんこんにちは、文化祭実行委員の委員長の美空 空です。今日はですね・・・」


坦々とソラ先輩が話していく・・・人を募集していること、文化祭のスローガン、そして最後に自分が目指している文化祭の形だ。それはソラ先輩が最初に言った、『みんなと一緒に盛り上げていきたい』という言葉、あの時は聞き流していたが、ソラ先輩は心から思っていたのだ。『成績目的』なんて安い言葉で装っていただけなのだ。

ソラ先輩が話している内容は、他人からしたら確かにありがちな話だ、だがこちらとしては重みが違う。

本当に苦労してきたことが、本当に目指していることが、ヒシヒシと伝わる――――そして、それがまだ遠く夢のような事だということも。


パチパチパチパチとソラ先輩の話が終わり、拍手が送られる。

次はサキの番だ。


「では、副委員長さんお願いします」とスピーカーから声が流れ、サキが勢いよく「はい!」と返事をする。

サキの声や脚は震え、緊張しているのが分かる。

「あ――」と言葉をこぼすと同時に、サキは勢いよく――――バンッと倒れた。

突然の大きな音にみんなは壇上へと視線が集まる・・・今がチャンスか。


「うわ・・・えっと・・・」


転んだことにより、さらに動揺しているサキを置いて前に出る――――そしてマイクの前に立つと・・・


「・・・はい!どうも、こんにちは!文化祭実行委員をやらせていただいてます!愛川 将です!」


――――!?


ソラ先輩や教師一同含めて、一斉にみんなが壇上へと意識を向ける――――当然だ、副委員長でもなんでもないやつが急に出てきて話し始めているんだから・・・それも、今まで空気だったやつがハイテンションでだ。


――――死ぬほど恥ずかしいし、死ぬほどつらいな・・・だが、これぐらいなら話せる。


「さきほどソラさんが話した通り、歌合戦に出場する人を募集してます!僕みたいな音痴な人も出るので安心してください!」


そう言って、マイクに向かって歌いだす。それも盛大に音程を外しながら・・・

「ぷっ、何やってんだあいつ」「やばすぎだろwwww」

ざわざわとしてきたところで歌を止め、また話し始める。


「みなさん!文化祭を盛り上げていきましょう!以上です!」


そう言って元の位置へと戻る――――こういった祭りに関して、まず大事なのが熱気だ。

面白そう、だからやってみよう。それが連鎖し、祭りというのは盛り上がっていく。

しかし、高校にもなると素直に楽しめなくもなるのだろう――――それがソラ先輩を『成績目的』と言わせた原因なのかもしれない。

ならば、そんな冷え切ったところに妙にハイテンションな奴が現れたら・・・?

あいつがあんな事をするなら自分はこうやろうと対抗心を燃やす奴も出るだろう。盛り上がってきたから自分もその空気に乗ろうと、そうするやつが必ず現れる――――そう、考える。


――――まさに苦肉の策・・・誰も面白がらなければ詰み、誰も盛り上がらなかったら詰み、そして最終的に『変人』というレッテルが貼られ、下手すればSNSにでも投稿されて晒しもの・・・まさに道化だな。


そのあとはざわつきを教員たちが抑え、何事もなかったかのようにサキの話が始まった。

きっと教師たちからはブラックリストにでも入れられているに違いない。だが――――


壇上から生徒たちを見下ろし、反応を見る。

そして、それだけの価値はあったと心の底から思う――――

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