壇上のピエロ 7
「はあ・・・」
今日の出来事を振り返りながら、ゲームの台に向かってため息をつく。
――――文化祭までの期限も迫っている。はたして、そこまでしてソラ先輩の頼みをきくべきなのだろうか。
実行委員たちの雰囲気は最悪、生徒のやる気もないため歌合戦に参加するものはなし。自分はクラスの企画には手を加えていないが・・・学校中の雰囲気を見れば、どうなっているかは火を見るよりも明らかだ。
バンッ!と台から音が鳴り、最後の弾が撃たれる。これでゲームは終了、スコアは当然のように理論値――――最高点だ。
「・・・さすがですわね!」
「・・・マリーか」
声のする方向に顔を向けると、そこには長い髪をなびかせ、まるで女王のような存在を思わせる少女――――マリーが立っていた。
「それにしてもショウ・・・あなた、最近姿を見ませんでしたわよ?どうしたんですの?」
「あぁ・・・ちょっと他にやることが出来てしまってな、実は文化祭実行委員っていう・・・まあ簡単に言うと祭りの指揮をする人間になったんだよ」
「あら!そうでしたの!ショウがやる文化祭なんてきっと素敵なものになりますわ!」
「・・・どうせなら文化祭に来るか?俺の通ってる学校を案内したいし、開催するのは休日だから来られると思うが・・・」
「いいんですの!?」
「マリーは親友だからな、当たり前だろ?」
マリーはそれを聞くと「やりましたわ!」と大喜びではしゃいでいる。
だが――――正直、あまり気が乗らない。
あんな状況で、あんな学校を・・・大して面白くもなさそうな祭りをマリーにはやってもらいたくない。
――――いや、違うか。失望されたくないんだ、マリーには。
「・・・なぁ、やっぱり」
「大丈夫ですわよ」
「!」
誘いをなかったことにしようと声をかけようとすると、マリーは落ち着いた声で言葉を遮る。
「・・・大丈夫ですわよ、ショウに何が起ころうと――ショウならどうにでもできますわ!」
「・・・できるかなぁ」
どうやら本意には気づいていないようだが、それでも何かは感じ取ったらしくマリーは元気づけてくれる。
それに返すように、どこか空回りしているような、おどけた声で問う――――
マリーは笑顔を絶やさず、ニコニコしながら答える。
「絶対大丈夫ですわ!それに、ショウが負けたなら次は私がいますわ!親友を救えるのは親友だけですわ!」
ふと、三人組で会話した日のことを思い出す――――「親友を救えるのは親友だけなんだよ!」と、どこかで少女がそう言ってた気がする。決して忘れたことはない――――もう一人の親友だ。
――――そうだよな、これは俺のためだったな・・・俺のせめてもの――――償いだ。
「・・・ったく、負けたらってなんだよこれはゲームじゃねえんだぞ?」
「でもショウは言ってましたわ!この世界はゲームみたいなものって!」
「・・・そうだな、そうだよな・・・」
――――昔、どっかのクソガキが言っていた。
そのガキはいつも大人ぶって、いつも傲慢で、いつも周りに迷惑かけて、無茶やって、そしていつも――――笑っていた。
『この世界はゲームだ、ただし残機は一つしかないクソゲーだ。なら好きなことをやり続ければいい、そうすればいつか――――クリア、なんて表示がでるかもしれないぞ?』
この世界がゲームなら、今ここにいる俺達はプレイヤー・・・文化祭がイベントならば、当然クリアする他ない。だって俺達は――――
ゲーマー・・・なのだから。
「・・・マリーは文化祭楽しみか?」
「当たり前ですわ!ショウの学校に行けることですら楽しみですのに、祭りなんて最高ですわ!」
「・・・じゃあ、もっと楽しくしようぜ?」
「もっと楽しく・・・ですの?」
「あぁ――――」
マリーは何かを察したように、こちらに笑みを向ける。
そう――――その顔だ、俺達ゲーマーには――――その顔が似合ってる。
ショウもその顔に合わせるように、マリーに対してニヤリと笑う。
さあ、もう自分の立場なんて考えてられない――――ゲームをしよう――――!




