陰の指揮官 3
「ん?・・・ん~~~!」
重たい瞼を開き、体を伸ばす・・・寝落ちしていたのか・・・
椅子に座った状態で眠っていたことを理解し、寝ぼけ気味で目の前に置いてあるパソコンを見る――――
「あ、あ~~~!!」
いつの間にか終わっているゲームを見て、自分が寝たことにより負けたことを理解する。
さ・・・最悪だ、寝落ちなんて・・・
落胆しながらカーテンを開けると、窓から日が差し込み眼球を刺激する――――朝まで寝てたのか・・・
頭を掻きながら下の階に下りる、学校へ行く準備をしなければ――――
歯を磨きながらソラ先輩へとメールを送る――――『今日、どれだけ珍しい人が会議室に来てもいつも来ているかのような対応をしてください。』
みんな自分だけが来ていないと思い込んでいるのにそいつの目の前で「今日は来てくれたんだね!」なんて言われたら最悪だからな・・・
あ、そうだ、これも言っておかないとな――――『今日の欠席は一人です。ただ、あくまでその人は予定が合わなかったことにしておいてください。』
――――まあ、そこまで用心しなくても良いとは思うが・・・一応だ。
歯を磨き終わり、鏡に映っている人物を笑顔にすると――――
「今日もやりますか――――!」
***
会議室の扉を開き、内心でほくそ笑む――――ただ、あと一人足りないな。
扉を閉め自分の席に座ると、目の前の書類を確認する。案の定仕事量は減っているな。
しばらくするとガラッと扉の開く音が鳴り、ニコニコしながらもどこか余裕がないような顔をした人物、欠けていた一人のサキが入ってくる。
「お、おはようございま~す・・・」
「おはようサキちゃん!」
入ってきたサキにソラ先輩が明るく出迎える。しかし、サキは申し訳ないような素振りをしながら
「で、でもすみません・・・全然予定が合わなくて、これな」
「いいから、さっさと仕事に移れよ間に合わないぞ」
「はぁ!?言われなくてもやるし!」
「これなかった」と言いそうになるサキの言葉を遮り、無理にでも作業に移す。ソラ先輩は「じゃあこれサキちゃんの分ね?」と書類を渡すと――――
「じゃ、今日もやっていこうか!一人はちょうど予定が合わなかったみたいだけど、頑張ろう!」
そう言って俺にウィンクで合図を送る。まったく、バレたら困ると何度言ったらわかるんだ・・・といっても、みんなそんな余裕はないか――――
そう思い周りをみる。
人間にとって未知というのは恐怖だ、幽霊や病気など――――相手の人間なんかも・・・
ならば今この会議室は恐怖の塊だともいえるだろう。
ザンヤからすれば誰が犯人なのかもわからない、自分の秘密をいつバラされるか分かったもんじゃない――――怖いだろうな。
ザンヤを狙っている女子生徒は何故仲間外れにされているのか分からない、何をされるか分からない――――怖いだろうな。
ここに元から居た者からすれば何故みんなが急に出席するようになったのか分からない、何か理由はあるはずだがそれを突き止めることはできない――――怖いだろうな。
しかし、その怖さが動力源となる。
「とりあえず、今だけは大人しくしておこう。とりあえず目の前の仕事をこなそう」
そう思い、自分でも気づかない間に文化祭の準備は進む。
時にコミュニケーションというものは重要な武器になる。作業を進めるのも当然この要素が重要だ。
今回の場合はそのコミュニケーションが暴走した結果だ、ならばそれを止めるにはコミュニケーションそのものを起こさないようにすればいい――――お互いの信用を崩せば、簡単に止まる――――
さて――――あと一人だ。
空いた席と残りの日付を見て思う――――このゲームは勝てそうだな。
表ではソラ先輩が指揮を、裏では俺が指揮を――――たとえるならば日差しと影、陽と陰。
――――陰の指揮官なんてのも・・・なかなか格好いいじゃないか。
ニヤリと密かに笑うその顔は――まさに『陰の指揮官』の名に相応しい、悪とも似た笑みだった。




