勇者と少年
「えっ・・・?またですか?」
とある酒場――依頼所ともいわれるこの場所には多くの人が集まり、その多くが魔物退治といった依頼をこなす『退治屋』といわれる人たちだった。
「何でもいいんです!何かないんですか!?」
「うるせぇな!魔物がいないんじゃ依頼を申し込む必要もないだろ!とっとと帰れ!」
しかし、それもいつの話か――今じゃその酒場に近づくものは少なく、依頼所としての機能も弱まっていた。
今でも、この酒場にいるのは酒が入っているのか少し顔が赤らんでいる店主と、依頼を求めるポンチョを着た少年だけだった。
何故こんなにも廃れてしまったのか、それもこれも――――
「仕方ないだろ、勇者様が現れてからは魔物退治には困ってないんだよ・・・ここも今じゃ酒場として機能している。あんたもそろそろ退治屋から足を洗ったらどうだ」
あまりに落胆した顔をしていたのか、先ほどまで帰宅を催促していた店主が話しかけ、転職を提案してくる。
――――勇者、奴がこの町に来てからというもの魔物の数は激減・・・・むしろ、いなくなったに近かった。
「いえ・・・僕にはこれしかありませんから・・・」
――――しかし、自分にはこれしかないのだ。
唯一の特技――――戦闘だけは優れている自分には、この職しかないのだ。
「わかりました・・・・別のところを回ってみます」
「おう、まぁ、なんだ・・・・頑張れよ」
励ますのが照れくさいのか、それともよほど同情してくれているのか、店主が少し言いづらそうに元気づけてくれる。
そんな店主を背にし、ゆっくりと扉を開け外に出る。
「はぁ・・・これじゃあ今日も収入なしだよ・・・」
落胆しながらも、気持ちと反対に顔をあげ太陽に手をかざす。
そうだ――――勇者ごときに負けるわけにはいかないのだ
「また勇者様がやってくれたらしいわよ!なんでも伝説のドラゴンを倒したらしいわよ!」
「まじか!さすが勇者様!」
街は今日も勇者の話題で賑わっている。
女は歌い、男は酒飲み踊る。
仕事がある者は、それを見過ごさんとばかりに勇者で一面が飾られた記事を売りさばく。
「・・・勇者、許すまじ」
そんな勇者一色となった街の雰囲気とは反対に、少年は空を眺め勇者に対し愚痴を述べる。
今日は天気も良く、魔物も活発化しているだろう。
うまくいけば依頼のひとつもあるかもしれない。
そんなことを思い気持ちを切り替えていると――――
「ん?なんだあれ?」
――――空には一つの影が、
しかし、それは飛んでいるわけではなく、ましてや上に向かって跳ねているわけでもない。
それは、その影は、間違いなく落ちてきていた。
「!?・・・魔物か?!まずい、あの場所は――」
少年はポンチョについたフードを深くかぶり、その影の方向へと走り出した――――
◇◇◇
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
――――なんだ!?何が起こっている!?今俺は――――――――落ちている!?
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお待て待て待て待て!」
嘆く声も届かず。そのまま体は落下していく。
気づけば地面も目の前――――
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
もう助からない――――そう思った瞬間。
急落下する体は地面に付く直前にふわりと持ち上がり、優しく地面におろされる。
「――――い、生きてるぅ・・・」
仰向けに落ちた体は空を見上げている。
空が見られるという些細なことに自分の生を実感し、そのことに安堵する。
――――そうして呆けていると、自分の顔に影が覆いかぶさる。
フードを深くかぶり、おそらく全力で走ってきたためであろう。汗だくの少年だった。
「あの・・・大丈夫ですか?」
「・・・あ、こんちゃ」
「・・・いえ、あの大丈夫ですか?」
「おいおい、挨拶は大事だぜ?」
「いや、だって今空から降ってきましたよね?」
「大丈夫か」という問いに対し、「挨拶は大事ですよ」とまったく見当外れな答えを返し、空から降ってきた男はおどけてみせる。
「・・・わかりました。では問いを変えます」
――――何か言えない理由があるのか、そう解釈し少年は質問を変える。
「ここで何をしていましたか?」
「――――――」
「空から降ってきたことは言及しません。ただし、何故この場所なのか。ここで何をしようとしているのか、それともしているのか。答えてください」
「――――――」
問いを変えたのにも関わらず男は沈黙を続ける。
「――――何をするつもりだ?」
少年はついに沈黙を続ける男に馬乗りになりナイフを突き立てる。
その顔付きは険しく、どこか焦った様子だった。
「・・・ついには敬語もやめたな」
「ごまかさないでください!」
話題をすり替えようとする男に対し、少年は「そうはさせまい」とナイフを近づけ問いを続ける。
しかし、徐々にナイフが近づいているにも関わらず男はちっとも表情を変えなかった。
「さぁ!答えてくださ――」
――――瞬間、男の所持品であろう板状のようなものが音を奏で、光を放つ。
男はゆっくりと板を見ると「なるほどな」と呟くとこちらを向き直す。
「わかったわかった。俺は別に何もする気はないって」
「・・・本当ですか?」
「本当だって、なんなら身体検査してもらっても構わないよ」
「――――――」
目を合わせ真偽を確認する――どうやら嘘はついていないようだ。
ゆっくりとナイフを離し鞘に納める。
馬乗りの状態からも解放し、落ちている板を拾う。
「申し訳ありません。大丈夫でしたか?」
「それさっきまでナイフ突き立ててた相手に言う?・・・まぁいいけどさ」
謝罪と無事を確認し、手を差し伸べて男の体を起こす。
そして、ついでのように男と繋いでいるほうの手にそっと板を渡す。
――――さあ、どう言い訳しようか
「実はこの近くが僕の家でして、少し警戒心が強まってしまいました。申し訳ございません」
「いや全然いいよ、むしろ悪かったな」
相手を脅してしまったこともあり、二度謝罪をする。
――――しかし、あまりにも焦り過ぎただろうか。不審に思われてないだろうか・・・・
「あー・・・・ところでさ、俺迷子になってて良かったらその家に行かせてもらえないかなぁ」
「・・・・構いませんよ、ぜひ来てください」
――――家に人が来るのは久しいな・・・特に親がいなくなってからは――――
それにしても、この男何を考えているのだろうか。不可解なことが多すぎる。
「あと・・・これ聞いていいのかわかんねぇけどさぁ・・・」
「・・・なんですか?構いませんよ」
――――まったくこちらの方が質問したいぐらいだというのに。この男は・・・
内心で愚痴をいいつつ相手の質問を待つ。
「――――じゃあ、言うけどさぁ」
男がニッと笑いこちらの様子を窺う。
まるで水を得た魚のようにその男は――――――
「なんで男のフリしてんの?」
「――――」
全てを見抜いたかのように言うその男に、少年――いや、少女は言葉を出せずに・・・・
口を噤むほかなかった。
◇◇◇
「――あー・・・ごめん、これダメな質問だった?」
「・・・んで・・・」
「へ?」
「なんで・・・わかったんですか・・・?!」
その少女は――見抜かれたことへのショック・・・というよりかは焦りに近いものを感じていた
「えぇ・・・っと、指かなぁ・・・?」
「指・・・?」
「男性ホルモンが多いと・・・ってホルモンってわかるかなぁ?まぁ、男は人差し指よりも薬指のほうが長いんだよ」
「・・・それだけじゃないですよね?」
「へ?」
「あなたは確かに言いましたよ『男のフリ』と、たとえそれで女だと分かってもフリということまでは見抜けないはずです!どう見抜いたんですか!?」
「えぇ・・・と・・・」
――なにをそんなに焦っているんだ?
男は、純粋に疑問を抱いていた
何故そこまで問い詰めるのか、何故そこまで焦っているのか、何故そこまで――恐怖しているのか――
「と、とりあえず名前を教えてくれよ、呼び名がなくちゃ話しづらいだろ?」
「・・・教える必要はありません・・・別に親しくなるつもりもありませんし」
「・・・そうかい、じゃあ俺も教えられないなぁ」
「・・・ッ!」
――「教えられない」、それは名前のことではないと、会話から少女は察する。
この男は理解している。自分にとってそれが大事な情報だと、その情報一つで自分を惑わせることができることを、この男は理解してしまったのだ。
――ここで殺すべきか?
とっさに考える――が、もし情報の漏洩が自分のミスだとしたら。
自分の欠陥のせいで男のフリがバレたのであれば――この男を殺すわけにもいかない。
相手が自分の知らない自分の情報を持っている。それも、とっておきの情報を
頭のなかで『情報』と『名の公開』を天秤に掛け、判断を下す
「――――わかりました。」
――心を落ち着かせ、そっとその名を声に出す
「僕の・・・いえ、私の名はミハイロフ。ミハイロフ・ダーニーです」
「そうか・・・半分嘘で半分本当ってとこかな」
――偽名を使ったのがバレた!?
「まあ、いいよ・・・俺の名前はラブ。ラブ・シャフマンね、よろしく」
「別に名前なんて聞いていません」
「ま、ですよねぇ」
「さあ、なんでわかったのか教えてください。さもなければ切り落とします」
「またまたそんなご冗談を、どうせ切れないくせに」
・・・やはりバレていたか、自分にとってその情報がどれだけ重要かが
「・・・とりあえず私の家に向かいましょう。話は歩きながら聞きます。」
「はいよ」
ラブ・シャフマン――――油断も隙もない男だ。
いまはまだ害はないが――面倒だ、何故ばれたかだけ聞いたら殺してしまおうか
家へ向かうために歩きながらも考えることだけはやめずに、頭のなかはラブという男のことでいっぱいになる
――それにしても、偽名を使うなんて怪しすぎる。何を考えているんだ――――?
未だに怪しさと不思議に満ちた男に警戒心だけは増し、ゆっくりとその足は家に向かうのだった
***
落ちてきたところから15分ほど歩いた場所に、その少女の家は建っていた
草原で囲まれたその建物は木造で、どこかしら祖母の家のような物を想像させる。
「――さて、なぜばれたかも聞けましたし。正直用済みなのですが――――」
建物の扉の前まで来たところでその少女、ミハイロフはこちらに振り向き突然物騒なことを言い出す。
「まぁ・・・あなたにはまだ聞きたいことが山ほどあります。どうぞ、入ってください」
ミハイロフが手をかざすとガチャリという音がなる。
しかし、その音は鍵を開けたというよりかは鎖のようなジャラリというような音に近かった。
「まぁ、殺されなくてよかったよ。お邪魔します」
中は素朴で簡素な部屋だった。
ミハイロフは家に入るなりポンチョを脱ぎ始め、サンダルに履き替える。
ポンチョを服掛けのようなものに掛けながら「座ってください」と、目の前にある椅子に座るよう催促する
催促された通りにラブは椅子に座ると――――
――フードでよく見えなかったが、綺麗な髪だな
ミハイロフの髪は、どこに隠していたのかかなりの長さがあった。
しかし、その髪はしっかりと手入れされているようで、家の中でもわかるほどの美しい銀髪だった
それにしても、相当身分を隠したいようだ・・・あの厚底靴、かなり高さがあるぞ・・・
ミハイロフが履いていた靴――――外側はただの靴に見えるが、おそらくお手製であろう。木の板のようなものが敷いてあり、かなり底上げをされていた。
それは、今の彼女を見れば一目瞭然だった。
「さて、聞かせてもらいますよ」
「・・・なにを?」
「当然、この家に来た理由です。あなたが意味もなく他人の家に入るとは考えられません」
「そうだなぁ・・・」
さっきまでのおどけた雰囲気を冷めさせ、シリアスな空気へと一変させる。
――――ここからはゲームの時間だ
「単刀直入に言う・・・手伝ってほしい」
相手と目を合わせ、顔の前で手を組む
自分は今真剣な話をしていると、真面目に聞いておけと、空気から伝える
「・・・私のメリットは?」
「当然ある。むしろ、この取引はお前にメリットしかないはずだ」
「私へのメリットしかない?何故そう言い切れるんですか?」
ミハイロフは一向に立ったまま話を聞く。
この家には椅子が一つしかない、仕方がないといえば仕方がないのだが。
しかし、当然の疑問だ。
目の前の男は今先ほどあったばかりなのだ。
それなのに自分へのメリットしかないと伝えている。そう言い切っている。
――――怪しさの極みだな
自分の怪しさを再理解し、内心で苦笑いする。
しかし不思議と不安はなく、絶対に断れないという確信だけが心に残る。
「俺が手伝ってほしいのは――――勇者の討伐だ」
***
「――――勇者の討伐ですか、正直その時点で私へのメリットはありません。むしろデメリットです」
「まぁそう慌てるな、お前が恐れてるのは勇者と勇者を慕う奴らの敵対だろ?」
「よく分かってるじゃないですか、私は今を生きるのに必死なんです。わざわざ敵を増やすようなことをしたくはありません」
「だから慌てるなって・・・ミハイロフ、お前は勇者との戦いに参戦しなくていい。ただ俺に情報を少しだけ渡すだけだ」
「情報・・・?なんのですか?」
「なーに、ちょっとした常識を言ってくれたらそれでおしまいさ」
ミハイロフは手を顎につけ、思考を凝らす
「・・・私が渡すべき取引材料は把握しました。まあ、私の常識が他の人の常識とは限りませんが・・・では、私のメリットの開示をお願いします。勝手にですが、どこかで必ず『勇者の討伐』というのが関係してくるとは思っていますが・・・」
「あぁ、『勇者の討伐』が特にお前にメリットを与えるからな。・・・そうだな、俺から言えることは、お前の欲しいもの全てが『勇者の討伐』だけで手に入るってことだけだ」
「・・・全てが手に入る?例えば?」
「だから言ってるだろ?全てだ・・・富、名声、権力、欲しいもの全てが手に入る」
――――本当に、何を考えているか分からないって顔してんな
だが、考えれば考えるほど分からなくなるぞ
全てが事実だからこそ、自信をもって言える。
だからこそ、疑えば疑うほど真実からかけ離れていく
――――ゲームならここで真相を言ってしまえば早いのだろうな、だがこちらにも事情がある。ソレが言えない事情が
「ミハイロフ――――お前は良い『目』を持っている。だからこそわかるはずだ、俺が一つも嘘を吐いていないということが」
「――――」
少女の顔が曇り始める。
その顔は疑念ではなく完全に理解した――――理解してしまった顔だった。
「安心しろよ、お前は間違ってない」
「・・・にが・・・・・・」
「いい加減認めてしまえ、お前ならわかるはずだ」
「・・・何が・・・!」
「理由は分からないだろうな、意味不明だろうな、だが――――この話に乗っかれば本当に、全てが手に入るということだけは分かるはずだ」
「何がわかるってんですか!」
ずっと棒立ちで話を聞いていたミハイロフが腕をあげ、机に力強く振り下ろす。
衝撃に耐えきれなかった机は真っ二つに割れ、ミハイロフの手は木の破片が刺さったのか流血している。
「あんたに・・・っ!あんたに何がわかるってんですか!今までどれだけ惨めに生きてきたと!?どれだけ無様な格好を晒してきたと!?それがただ勇者を倒すだけで終わる?!馬鹿言ってんじゃねえですよ!」
――――この部屋には、まったくと言っていいほど女性らしいものが置いていない
最低限の家具と服、今日の分もあるのかすら分からない食料、おそらく手作りであろう藁で編んだ布団。
しかし、それでもやはりミハイロフはまだ少女なのだ。
どこかで拾ってきたのだろうガラスの破片、動物のような骨で作ったくしのような物。
他にも、ちょっとしたアクセサリーなどがチラホラと見受けられる。
そして、これだけ物がなく苦労してきただろうにも関わらず、彼女の髪だけは気品があり、とても輝いていたのだ。
毎日手入れを欠かさなかったのだろう。
せめてもの御粧しだったのだろう。
誰にも見せないにも関わらず、彼女は手入れを続けていたのだ。
彼女だって、お洒落のひとつぐらいしたかったのだろう。
しかし、そのお洒落すらも彼女には困難なものであったのだ。
――――『私の常識が他の人の常識とは限りませんが』と言ったのも、こういった生活が原因か。
しかし、その生活も終わるんだ。
あまりにも現実味がないだろう。あまりにもあっけないだろう。
だからこそ、信用できない。いや、この場合は信用したくないが正しいか。
「残念ながら何もわかんねえよ、お前の人生を俺が分かることは一生ない。お前の人生はお前しか知りえないからな。だが、勇者を倒すだけでそれがいい方向に向かうことを俺は知っている。そして、それが事実だということをお前は知っている。知ってしまった」
彼女は良い目を持っている。嘘を見抜ける良い目を。
だからこそ分かるはずだ、自分の目の前にいる男がまったく嘘を吐いていないことを。
本当に、勇者を倒すことが自分にとってメリットにしかなり得ないということを。
ラブは椅子から腰を上げ、太ももや膝に乗った木の破片やらを払う。
そして、どうしたらいいか分からなくなってしまったのだろう。泣きじゃくり座り込んでしまったミハイロフに向かって言葉をかける。
「もう認めるしかないんだよ、過去は何をやっても変わらない。だから忘れろとは言わないが、それを糧に次のチャンスを逃すぐらいなら、その記憶はそれこそ全て無駄になる」
「だって・・・っ!だって・・・っ!」
「ただ俺に情報を教えるだけだ、それだけでお前は苦しみから逃れられる。俺が何とかするからな」
「・・・本当に・・・!変わるんですか・・・?」
――――少女は男に問いかける。
たかがそれだけで本当に、変わるのか?変えてくれるのか?と
「お前ならわかるだろ?変えるんだよ、これからな」
――――男は少女に答える。
当たり前だと、証言者はお前自身だと。
「・・・わかりました」
ミハイロフは涙で溢れた自分の顔をこすり、ゆっくりと立ち上がる。
「全部、何でも教えます。だから・・・!変えてください、変えさせてください!私の人生を!」
「おう、任せとけよ」
少女が初めて渡した人生は、たった一人の、本当の名前すら分からない詐欺師に。
いままで嘘を吐き続けた詐欺師は、たった一人の少女のために、嘘のない約束をした。
「さて、んじゃ色々と聞きたいところだが・・・」
「はい!なんでも答えますよ!」
「えーと・・・んじゃまず、町でよく見かける髪色と服装を教えてくれ」
「・・・へ?」
――――あまりのおかしな質問に思わず間抜けな声が出てしまう
「いや・・・服装と髪色だよ、町とか人がいるところにはいかないのか?」
「いや行きますけど・・・まさかそんな質問が来るとは思ってもいなかったので・・・そういえば、ラブさんは結構珍しい格好をしていますよね」
「あー・・・やっぱり?」
「はい、こんな服は見たこともないですし・・・髪色が黒っていうのも・・・あ、確か勇者も似たような恰好を最初していたと聞きます」
「この服装と髪色か・・・」
ラブは自分の服装を見て確信する。
――――今のラブの服装は学生服だった
この世界で言語が通じる時点で察してはいたが・・・やはりここに来たのは日本人で間違いないようだな・・・
「よし、んじゃまずは服装と髪色を変えるために町へ行く。町の場所は分からないから教えてくれ」
「あ、その・・・私も同行してもいいでしょうか?勇者を倒して私の人生変わるんですよね?じゃあ私も協力したいです」
・・・敵対される可能性もあるがいいのか?なんて聞くのはやぼか・・・
確かに決意に満ちたその目に、ラブは決心する
「よし、んじゃ一緒に行きますか。打倒勇者ってことで!」
「はい!」
必ずといっていいほど困難になりそうな道を少女と男は笑顔で目標にする。
その笑顔は、何年振りかも分からない少女の心からの笑みだった――――