劣悪と最高の会議 3
足の指先をうまく使いながら下でスマホゲームを、上でPCゲームを行う。
俺が見つけた最大効率でできるゲームのやり方だ、『多分これが一番早いと思います』というやつだな。
すると――――ピンポーンと、下からチャイムの音がする。
・・・誰だ?
一度ゲームを中止し、玄関へと向かう。
「・・・はい」
玄関を開け、チャイムを押した人を確認する――――
「委員長・・・?」
そこにいたのはソラ先輩だった。
「やあ、ショウ君!実はお願いがあって来たんだ!」
「お願いですか・・・」
「うん!えっとね・・・忙しい時じゃなくていいから文化祭の準備を手伝ってくれないかな・・・?」
「手伝ってくれ」とは・・・俺は文化祭実行委員なんだから「来い」とでも言えばいいのに・・・本当に人がいい人だ・・・
ソラ先輩のポケットに入っている紙を見つけ、ショウは一つの疑問が浮かぶ。
「・・・何故わざわざ家まで?」
「・・・え?」
「こうやって頼むだけなら電話でもいいでしょう、何故わざわざ家まで来たんですか?」
「えっと・・・それは・・・」
「・・・何を言いに来たんですか?」
「・・・!」
わざわざ住所まで調べて家まで来るということは、なにか渡すものがあるか――――直接言いたいことがあるかのどちらかだ。今のソラ先輩は何も持っていない、ということは渡すものではない――――何か直接伝えるようなことがあるということだ。
ソラ先輩は本来の目的を当てられ、驚いた顔をすると少し間をおいて話し出す。
「実は・・・ショウ君にこの状況をなんとかしてほしくて・・・」
ソラ先輩は顔を少し伏せながら話を続ける。そこにいつものようなソラ先輩の元気はなく、何かにすがるような気持ちで話をしている。
「他力本願になっちゃうけど・・・ショウ君ってよく人を見てるから、皆のことよく知ってるんじゃないかって・・・なんとかできるんじゃないかって・・・」
「それで、頼みに来たと・・・」
「・・・う、うん・・・ごめんね、情けない先輩で・・・」
ソラ先輩は顔を上げて苦笑いでこちらを向く。
よく人を見ている――――よく言ったものだ。たかだか人を見ていることしかしていない自分を、ソラ先輩はよく見ているじゃないか。
「・・・いいですよ、やりましょう」
「・・・え?!」
「やりますよ、もとはと言えばうちのクラスのサキが問題なんですから。あと、電話でいいんでソラ先輩はみんなに声かけしといてください。自分に言ったように、『文化祭の準備を手伝ってくれ』とね」
それだけを言って家に入り、再び自室へと戻る。ソラ先輩はまだ納得してくれたということを理解していないらしく、未だに固まっている。
確かに委員長であるソラ先輩にも責任はある。だが、事の発端を作ったのはサキだ。ならばそれを止められなかった同じクラスの自分にも問題はあると、そう――――考えてやろう。
たかだか一人分の尻ぬぐい・・・やってやろう。だが――――
「あんたにも手伝ってもらうぜ・・・?」
そう言ってショウはスマホを取り出し、収めた写真を確認する――――ザンヤという男が不良を蹴飛ばしている写真を――――