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劣悪と最高の会議

会議室に続々と人が入ってくる。ショウもそれに続き、中に入ると自分の席に腰を下ろし、すでに中にいた人物へと意識を向ける。

自分が今心配するのは、あのザンヤという男だ。


チラリとザンヤの方を見る。

ザンヤは囲いの女子生徒と笑顔で会話を広げている。


・・・あいつらに昨日の光景を見せてやりたいものだ


昨日の不良たちのことを思い出しながら「はあ・・・」とため息を吐く。


「どうしたの?ショウくん」


頬杖をしてこれからのことを考えていると、委員長のソラ先輩に声をかけられる。


「いや別に、明日からは夏休みなのに俺は明日も来るのかと思うと少し憂鬱で」


「はは・・・君は正直者だね」


目をそらしながらそう言うショウにソラ先輩は苦笑いをする。


「でもね、きっと君も楽しめるような文化祭にしてあげるから、一緒に頑張ろうね!」


そういって手をグッと引いて去っていくソラ先輩を見ながら、目の前に置いてある書類を確認する。


案外、内容自体はまとまってるんだな・・・まあ学校全体が影響するから当然と言えば当然か・・・ん?これって・・・


「はい!じゃあ今日も会議始めていくよ!」


ソラ先輩がホワイトボードの前で手をパチンと叩きみんなの意識を自分に向ける。

どうやらすでに人が集まったようだ。


「すでに気づいた人もいるかもしれませんが、一度その書類を見てください」


その書類――――自分が今見ている書類のことだ。

文化祭のテーマと主な役割の内容。そして・・・


「今日はそこに書いてあるとおり、実行委員の出し物を決めていくよ!」


実行委員の出し物・・・文化祭のテーマに沿った見本となるような出し物。

つまり、いうところの基準だろう。

クラスの出し物も、結局はテーマに沿ったものというのは難しい。

だから実行委員がその基準となるような、お手本となるような物を先に発表しろと、そういうことなのだろう。


「でも内容自体はもう大体決まってるって聞いたけど・・・」


・・・は?聞いてないぞそんなの


みんなも聞いてないというような――――いや、少し違うか。

女性軍、つまりザンヤの囲い以外はみんな聞いてないというような顔をしてざわつき始める。


まあ、こういうのはお決まりの展開だ。たいていこういう事になっているのは・・・


「はいは~い!じゃあ大体のことはこの書類に書かれているので見てくださ~い!」


やっぱりか・・・


サキが勢いよく立ち上がり、書類を配り始める。

こういう時はたいてい別のところで話が進んでいるもんだ。たいてい――――身内という最悪なところで。


書類を見ると、そこには何やらクマような謎のキャラクターやら星などのイラストで可愛くされている中に、出し物の文章が書かれている。

内容は――――


「歌合戦・・・?」


「そう!校内歌合戦です!参加者は学校から募集して、楽器は――――」


意気揚々とサキは説明を続けていく。


だが――――


「でもこれ・・・人数とか集まらなかった時どうするの?」


一人の女子生徒がおずおずと意見を出す。


「大丈夫ですよ先輩!集まりますって!」


サキがそういうと周りの女子生徒たちも「そうそう」「いけるって!」とサキの意見を肯定し始める。

――――最悪の状況だ。


「え・・・でも・・・」


「ていうか、先輩は考えすぎなんすよ。こういうのって何があるか分からないから面白いんでしょ?」


反論しようとする先輩に向かって、サキはそれっぽいことを言って黙らせる。

周りの生徒も「確かに」「だよねー」とやはりサキを肯定しだす。


――――確かにサキの言っていることはもっともかもしれない。だが、今の状況でそれはダメだ。今考えているのは、あくまでも基準、お手本なのだ。問題があっては絶体ダメなのだ。

何があるか分からないから面白い?考えすぎ?じゃあ何かあったとき、その時はどうするつもりのなのだろうか。

それを考えすぎだというならば、それは考えなさすぎだ。だが、今の状況でそれを伝えてもサキの耳には入らない。

サキという存在を矛とするならば周りの生徒は盾と言ったところだろうか。サキがどれだけ無茶なことを言っても、それを反対しようものならば周りに押しつぶされてしまう。

そして最終的に「みんなもそう言ってるから仕方ないか」とあきらめてしまうのだ。

所詮『井の中の蛙』にすぎない、だがその井戸の中に入れられた途端に、世界がその井戸の中だけに感じてしまう。大海を知っていても、それはそれと割り切ってしまう。日本人にありがちの集団意識というやつだろう。


もう一度言わせてもらおう――――最悪の状況だ。


「まあまあ、とりあえず人の集める方法はあとで考えるとして、そのアイデアをもっと具体的にしていこうか!」


ソラ先輩が間に入り、二人をなだめる。


「・・・そうですね!じゃあ会議続けましょうか!」


「う・・・うん・・・」


サキは自分の考えが認めてもらえたと思うと、再び説明を始める。

だが、意見を言おうにもさっきの光景を見た後だ、誰も言い出せないだろう。

言い出したところで同じ結果だろうが・・・


ショウはチラリとザンヤの方を向く。


何故そんなにも自信満々としているんだお前は――――


なにか方法があるとでも言いたげにザンヤはずっとニコニコ笑って―――――――いや、嗤っていた

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