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イケメンってやっぱクソだわ・・・

ゲームが終了したと同時に、向かいの台へと足早に向かう。

プレイングを称えにいくわけではない、文句を言うわけでもない。ただ、あのプレイング、そして最後の罠にひっかかった安直さ。俺はこいつを知っている――――


「・・・やっぱりお前か」


そこにいたのは金髪の少女、台に突っ伏して「うぅぅぅぅぅぅぅ・・・っ!」とうなっている小奇麗な少女だ。


「ショウ・・・あなたやるじゃありませんの・・・!あえて弾が無くなったと油断させて、さらに興味を惹いて罠にハメる・・・っ!最高に燃えましたわ・・・!」


「いや、つかなんでお前がここにいんだよ・・・マリー・・・」


麻里 沙理(あさり さり)――――通称マリー。

あさりの部分をマリと読んでいたのがいつの間にやらあだ名となったのだ。地毛が金髪ということもあり、外国人のような読み方がうけたのだろう。

本人はこのあだ名がそこそこ気に入っているらしく、自分でもマリーと呼ぶことがある。

そして、こんなところでこんなことをしているが、一応金持ちのお嬢様だ。


「たまたま電車に乗っているのが見えましたので、後を追って対戦を仕掛けたのですわ!」


「さらっとストーカー発言したなおい」


堂々とストーキングしましたと言うマリーに、即座にツッコミを入れる。

マリーはキョロキョロあたりを見まわすと、少し残念そうな顔をし、


「・・・やっぱり、今日も雪さんはいませんの?」


「・・・」


――――俺とマリー、そして雪はよく遊ぶ仲だった。

マリーとはゲームセンターで、雪とは幼馴染ということで、お互い性格はまったく違うものの意気投合し、仲良くやっていたのだ。

しかし、それは中学までの話だ。


()()()――――あなたたちの間で何がありましたの?」


「・・・別に、何もないよ・・・ただ少し喧嘩しただけだ」


「・・・そう・・・ですの・・・」


目をそらしながらそう言うショウの言葉を、マリーは全く信じず、ただ言いたくないことは察してそれ以上の追求はしない。

あの日のことは――――知らなくていい。特にマリーは、優しいからこそ知らなくていい。知ってしまったらきっと、自分を許してしまうから。


「またいつか、あの頃みたいに三人で遊びたいものですわ」


「・・・そうだな、仲直りできたらまた遊ぼう」


「その時は、ワタクシ最新のゲーム機を揃えてお待ちしておりますわ!」


「おぉ、それはいいな」


三人で遊ぶ姿をマリーは想像しながら、笑顔で計画を立てる。

ショウも賛成し、笑顔で「いいな」と返すものの、心の奥底では笑うことはできなかった。

だって、そんな日はこないのだから、だって雪は――――


***


マリーと別れ、家に向かって帰宅を始める。スマホをポケットから取り出し、時間を確認すると、すでに7時を回っていた。


そろそろネトゲのイベントも始まるし、急ぎで帰らないとな・・・


そう思い、小走りに家路を辿る。すると、どこかで見た制服――――どこかで見たような顔がチラリと映る。


――――あれは・・・


一度立ち止まり、壁を陰にして姿を隠しながらこっそりと除く。

整った顔立ちにスラリとしたスタイル――――ザンヤ先輩だ。


ここの地域の人だったのか、気づかなかった・・・だが、こんなところで何を・・・?


ザンヤ先輩の背が陰になってよく見えず、聞き耳をたてる。

すると、何やら「うぅ・・・」といった、うめき声のようなものが聞こえてくる――――男の声だ。


何をしているんだ・・・?


様子が気になり、体を半身ほど乗り出して確認する。

そこには、顔をボコボコに殴られ血を流している金髪の男が倒れていた。格好からして不良だと思われるその男に、ザンヤは思いっきり蹴りを顔に入れる。


――――なっ!?


男は「ぐぁ!」と声を漏らすと、追い打ちをかけられるように、さらにザンヤに顔を踏みつけられる。

何度も、何度も、何か恨みがあるかのようにザンヤは幾度となく踏みつける。

よく見ると、周りにその不良の仲間だと思われる者たちが2人ほど倒れていた。


何をやってるんだ・・・あいつは・・・


息を荒くしながら、ザンヤはこちらに向かってくる。


まずい、見ていたのを知られたら何をされるか分かったもんじゃない。


即座に電話をしているフリをし始め、何事もなかったかのような素振りをする――――が、どうやらダメみたいだ。


「おい・・・」


「・・・はい?」


電話をしているフリを続けながらも、ザンヤの呼びかけに答える。


「・・・お前同じ学校のやつだよな?・・・今の、見ていたか?」


「さあ、拙者何のことだか分からないでござるよ」


ふざけた口調でおどけてみるが、ザンヤは顔色一つも変えずに勢いよくこちらを殴りつける。

その拳はみぞおちにクリーンヒットし、ショウはその場でうずくまってしまう。


「・・・っ!ガハッ!ごほっ・・・!」


「もし誰かに言ってみろ、お前もあの不良どもと同じ目にあうぞ」


ザンヤはうずくまったショウに脅しをかけると、その場を立ち去っていく。


・・・これじゃどっちが不良だか分かったもんじゃねぇ・・・


運動神経抜群、スタイルよし、ルックスよし、しかし性格は悪かったようで・・・

二度と関わりたくはないと思いながらも、明日も文化祭会議で会うということに絶望を感じ、その場で数分ほどショウは動けずにいた。

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