絶対的少女たち
宿屋で二階にある3部屋を借りると、俺は即座に自分の部屋に引きこもった。
フロワやマリーとの会話をしたくない――――というよりかは、これが落ち着くのだ。
灯りのない部屋でひたすらゲームに熱中するように、他に一切の情報がない状態で思考を整理したい。というのが本音だ。
「ラブさん・・・・大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですわ!ショウですもの!」
下では、自分を心配してかそんな会話がされていた。
というのも、俺は「ちょっと部屋にこもりたい」それだけをいって籠っているのだ。心配するのも当然だろう。
しかし、そこは流石幼馴染。マリーは心配は無用だと自分を信じてくれているらしい。
「・・・・はぁ」
それにしても、どういうことなのだろうか。
マリーに続き、ミロまでもが異世界へと転生・・・・または転移している。
マリー同様に、ミロも何らかの形で死んだということだろうか。
「よく分からないな・・・・」
しかし、とりあえずの資金は貯まった。これで当分は食料などの心配はないだろう。
今は・・・・とりあえず、休もう・・・・。
「それでいいのかい?」
「!?」
壁にもたれて目を瞑ったのも束の間、向こう側・・・・つまり、自分の隣の部屋から聞こえた声に驚き、すぐさま目を開く。
違う――――声に驚いたのではない。正確には――――
――――聞き覚えのある声に驚いたのだ。
「久しぶり――――なんてね、元気かい?」
「・・・・なんで、お前がいるんだ?――――不老不死」
聞こえた声は、前の世界の現最強――――植物を操り、己を不老不死と自称した女だ。
「不老不死呼びとは失敬だ、私にはカグヤという名前がある」
「生憎、名前なんて聞く暇もなく死にやがりましたんでね・・・・」
――――そう、確かに死んだはずなんだ。
メモルと名乗った男にくし刺しにされ、確かに死んだんだ。
「違う、そうじゃない。と言わせてもらうよ?私は確かに死んだ――――一度死んだが、よみがえった。不老不死だから――――と」
「・・・・嘘だ、それだけじゃない」
「うん。嘘だよ、確かに私の能力だけではない。そもそも、彼の能力の前では私も死んでしまうよ」
カグヤはあっさりと自白すると、第三者すらも知らない自分自身の死因をまるで理解しているようにそう話す。
「・・・・能力か、あいつも能力を持っているろいうことは現最強・・・・または元最強なのか?」
「現最強・・・・?あぁ、転生者たちのことか。君たちはそう呼んでいるんだね――――彼は、確かに元最強だよ・・・・といっても、私も詳しくは知らないけどね」
「・・・・お前らは何者なんだ?どうやってここに来て、何を目的としているんだ?」
「おいおい・・・・質問ばかりするなよ――――それに君は、そんなことより大切なことがあるだろ?」
「・・・・ミロのことか?それすら知っているのか」
「――――見ていないフリはいけないなぁ・・・・私は別に、てめぇらがどうなろうが、何しようが・・・・それが運命ならば従うだけだ。だけど――――私のものに手を出して、それを大切にしないってのは見逃せないねぇ」
「・・・・・・」
「逃げるなよ、それこそ妥協はするんじゃない。仕方がないなんて思ってたら――――まず最初に、私がお前を殺すぞ」
カグヤがそう言い終えると、隣の部屋からはもう物音はしなくなる。
どうやらいなくなったようだ。
「・・・・分かってるんだよ、そんなことは・・・・誰よりもこの俺が一番」
ミロのことじゃない。この世界のことでもない。
どこぞの神様に出された無理難題でも、カグヤとメモルのことでもない。
「・・・・そうだよな、俺がやらなくちゃいけないんだ」
――――彼女はもう、どこにもいないのだから。