本物の盗賊
カチャカチャと――――腕や腰に巻き付けた装備たちを鳴らしながら町を歩く。
「・・・・結局、職業は盗賊ですか・・・・」
スタスタと歩く二人の後ろで、そう嘆くのはポンチョを着た少女フロワ。
「なんだよ、不服なことがあるのか?」
歩みを止め、後ろを振り向いて聞く。
フロワは俯けていた頭を上げ、こちらを見ると――――、
「なんだかこのパーティの中に1人犯罪者がいるかと思うと・・・・」
「酷い言い草だな、名前が名前なだけでちゃんとした職業だぞ?」
「そうですわ!アイテム、装備が無くなった今、盗賊はかなり有能な職業ですわ!」
アイテム、および装備がすべてなくなった俺の職業は盗賊になった。
盗賊は全体的にステータスが低い。しかし、敵の位置を確認したりアイテムを探すのに役立つ探知スキルや、身を隠すときに使う隠密のスキル、敵からアイテムを奪うスキルなども持っている。
このスキルは盗賊にしか使えず、とてもレアなのだ。だからこそ、多少ステータスが低くともアイテムを入手しやすくなるスキルを持っている盗賊がいいと考えた。
・・・・それに、盗賊の経験値入手量はかなり多い。敵さえ倒せば、マリーのレベルまで到達するのも簡単だ。それに、味方がいる今敵を倒すのは容易だ。やはり盗賊がいいだろう。
「それにしても、復活が早すぎませんか?さっきはあんなに落ち込んでいたのに・・・・」
「ま、垢BANなんてよくあることだ」
「といっても、私はありませんし・・・・きっと運営に嫌われてますわ!」
「それが本当だとしたら相当辛いな」
「・・・・っと、まあ名前はいいとして――これからどうするんですか?私はこの世界のことをよく知らないのでどうしようもないのですが・・・・」
「それもそうですわ、お金を稼ぐにしてもどうやって稼ぐか・・・・」
「お金の稼ぎ方は決まってるんじゃないんですか?そのためにあの塔へいったんじゃ――――」
「このゲームに、お金の稼ぎ方は二通りあるんだよ・・・・1つは依頼所へ行き、村人の依頼をこなして報酬金を得ること。2つめはダンジョンと呼ばれる、階層ごとに分かれた場所に行ってモンスターの落とすアイテムを売ることで換金することだ」
「へぇ・・・・じゃあ、その2つの中から選ぶとして、私たちは今どこへ行こうとしていたんですか?」
「そういえばそうですわ、どこへ行こうとしていたんですの?」
「あぁ・・・・それはだな――――」
後ろへ振り向き、目の前に立つモニター・・・・自分の2倍ほどの大きさのモニターを見る。
緑色の背景に映し出されているその文字には1・・・・2・・・・と、番号が表示されていた。
「・・・・ランキングですの・・・・?」
「ランキング・・・・?なんのですか?」
「・・・・まあ、簡単に言えば活躍したやつのランキングだ。依頼をこなせばこなすほど、敵を倒せば倒すほど・・・・より強い敵を倒したものほど上位に輝くことができる」
「へぇ・・・・でも、このランキングになんの関係が?」
「・・・・今までの転生者を見てきて――全ての転生者が、どこか地位の高いところや・・・・人気のある人間になっていた。だから、今回の転生者もそうなんじゃないかと思ってな・・・・」
そう言いながら、モニターに近づく。
すると、モニターは自分の目線に合わせて高さが変わり、手動で操作できるようになる。
それを上にスライドさせ、どんどんランキングを上にあげていく。
「例えば――――ランキング上位にいるプレイヤー・・・・とかな」
――――そうして、見せたモニターにはランキング上位者の名前と、その横にポイント数が書かれている。
しかし、その中でも1人――――異彩な雰囲気を持った者だと分かる名前が書かれていた。
ランキング1位・・・・桃木 明日香――――ポイントはカンスト・・・・上限限界という、まさに最強と呼ばれるのに相応しい値がそこには表示されていた。
「桃木 明日香・・・・この人が転生者・・・・現最強だと?」
「ま、憶測だがそうだろうな・・・・さて、このランキングなんだがな、少しばかり面白い機能がある」
「面白い機能?」
「あぁ、このランキングの名前のところ・・・・触れてみると、なんとそのプレイヤーの今の位置が分かるんだ」
「!――――それって・・・・!」
「この世界の現最強――――ちょっとばかり、見てみようぜ」
そうして押されたプレイヤーの名前――――桃木 明日香の名前の隣には、位置情報・・・・ダンジョン、階層70層目と示されていた――――。