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オーダー・プロフェッション 4

 塔の中、白いタイルで埋められ、まるで協会のようなものを連想させるこの部屋は――――


「転職部屋・・・・」


「ようこそ冒険者よ、そなたは何を望む」


 入ってすぐに神父の格好をした男が腕を広げ、そう言う。


「はいはい!****、私の装備をください!ですわ!」


 その男に、マリーは手を上げて勢いよく言葉を投げる。

 しかし、その言葉の一部はノイズのようなものが掛かって聞こえなくなる。


「な、なんですか・・・・?あれは?」


「ここは転職部屋、ゲーマーの間じゃホームワークとか呼ばれている空間だな。アイテムや装備を預けたり引き出したり、ゲームの要となる職業を決めることができる場所だ。今のように自分のパスワードを言えば装備を出してくれるんだ」


「は、はぁ・・・・で、私たちはここに何をしに?」


 装備を受け取るマリーを確認しながら、フロワはさらに質問する。


「この世界はオーダー・プロフェッションの世界・・・・なら、ルールに従って金を稼ぐ。これが一番手っ取り早いと――そう考えたんだろうな、元からこのゲームをプレイしている俺たちは装備を手に、フロワは職業を選択しに――それで準備を整えたら依頼をこなして報酬金稼ぎ・・・・と、いうところか」


「・・・・つまり、お金を稼ぐための準備・・・・ということですか?」


「ま、簡単にいうとそうだな。お前はあの神父に話しかけて職業の選択をしてくれ、説明は勝手にしてくれるからさ」


「は、はい・・・・分かりました」


 そういうと、素直にフロワは神父の元へと走りだす。


「それにしても、まさかお金稼ぎから始まりなんて・・・・思いもしませんでしたわ」


「まあな、オーダー・プロフェッションは預金はできない・・・・だからこそ、今の俺たちは一文無しか・・・・まさかこんなゲームの仕様に苦労することになるとはな・・・・」


 片手に銃のような形をした杖を持ちながら近づくマリー。

 マリーの職業は魔法使い。防御が低い代わりに、遠距離から攻撃が可能となる職業だ。

 そのため、マリーの装備は防御に徹するのではなく、完全に避ける前提としての装備だ。

 魔法を使うためのMP、素早さを高める装備――――その装備を形容し例を出すとするならば、天女というのが適切だろう。


「それにしても・・・・いくらVRがリアルでも、やっぱり現実で着ると少し恥ずかしいですわ」


 自分の着た服をみると、マリーは少し照れ笑いしながら、自分の顔を隠すように頬を触る。

 そんなマリーの頬は、少しばかり赤らんでいた。


「・・・・ま、ここの現最強を倒すまでの辛抱だ。悪いが少しだけ我慢してくれ」


「うぅ・・・・分かりましたわ」


「ラブさーん!」


「お、終わったようだな」


 右手を上げて駆けてくるフロワに「どうだった?」と聞くと、「はい!」と元気よく返事をする。


「剣士にしました!」


「剣士か、結構いいじゃないか」


 剣士――――剣士という職業は、攻撃力と素早さが高くなり、主に前衛を得意とする職業だ。

 今回は遠距離を得意とする魔法使いがいるため、パーティとしても中々バランスがいい。


「・・・・だとすると、俺が選ぶ職業はタンクかヒーラーか・・・・」


 今俺が言った職業、タンクとヒーラーは、主に味方の補助役のような職業だ。

 タンクは体力がとても高く、前衛の盾役としての役割が主となる。

 逆に、ヒーラーは体力が少ない。その代わり、味方を回復させるような魔法を使うことができ、主に後衛で援護をする。

 ・・・・さて、今回は補助役に回るため、この二つの職業に絞ったが・・・・どちらにするべきだろうか。


「・・・・よし」


 少し考え、神父に近づく。


「パスワードは****、役はタンクでいく」


「タンク・・・・確かに今回は初めての方もいますし、それがいいですわ!」


「タンクですか、説明は聞きましたが・・・・確か盾役でしたっけ」


「あぁそうだ、フロワはこのゲームを初めてやるしな、経験者が近くにいたほうがいいだろ」


「じゃあ、前は任せますわ!フロワさん!」


「はい!任せてください!」


 そんな2人の会話を背に、神父の反応を待つ。

 しかし、一向に神父の返答はなく――――・・・・。


「・・・・?どうした?パスワード****、頼むぞ?」


「申し訳ございません。そのパスワードは破損しています」


「・・・・は?」


 聞き間違いかと、一瞬耳を疑う。

 しかし、神父は繰り返しその言葉を話す。


「・・・・だ、大丈夫ですわ!ショウはアカウントを複数持ってましたわ!」


「そ、そうだな・・・・じゃあパスワード****」


「申し訳ございません。そのパスワードは破損しています」


「じゃあパスワード****は?」


「申し訳ございません。そのパスワードは――――」


「どういうことだ?」


 マリーのフォローも空しく、自分のアカウントのパスワードは破損が続く。

 アカウントの停止でも喰らったのだろうか?いや、心当たりはない。

 じゃあなんだ?それ以外にデータが()()することなんてありえるのだろうか。


「・・・・じゃあパスワード****」


「はい、こちらの装備でよろしかったでしょうか」


「・・・・あぁ」


「よ、よかったですわ!そのパスワードが使えて・・・・って、その装備は・・・・」


「・・・・ラブさん、何かあったんですか?」


 神父から受け取るのは鉄の装備、剣士が主に扱う序盤の装備だ。


「・・・・なるほど、強い装備が入っているパスワードだけが破損か・・・・」


「・・・・!?それ、どういうことですの?」


 マリーは何かを察したらしく、慌てた様子で問いかける。

 そんな様子を、フロワは理解ができないような顔をして、疑問符を頭の上に浮かべる。


 強い装備だけが破損。残ったのは、ほぼ新規アカウントのパスワードのみ。このことが表すのはつまり――――、


「・・・・データが盗まれた・・・・?」


 一体誰に、という疑問に答える者は当然おらず・・・・。

 ただその状況を飲み込もうと、頭を必死に働かせるしかなかった。

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