オーダー・プロフェッション 3
右には張り紙――――左にはモニターと、立ち並ぶカウンター・・・・ここは宿だ。
カウンターには白髪長髪の少女――その少女は、いらっしゃいませとにこやかに言うと、モニターを目の前に表示させる。
「・・・・宿に泊まりたい」
「はい!今空いている部屋はこちらです!」
白髪の少女がそういうと、空いている部屋の番号がチカチカと何度も点滅する。
しかし、それをどけて――――、
「いや、宿には泊まりたいんだが・・・・その・・・・金がないんだ」
「申し訳ございません。お手持ちの金額が不足しているようです」
「・・・・そこをどうにかできないか?」
「申し訳ございません。お手持ちの金額が不足しているようで――」
「だぁ!くっそ!やっぱりこいつNPCだ!」
カウンターが壊れそうな勢いでぶったたき、感情をあらわにする。
すると、
「大丈夫ですか?良ければこちらの回復薬はいかがですか?」
そう言って、白髪の少女は目の前に緑色の液体の写真――――その下に500Gと書かれている画面を表示させる。
「このセリフの言い回し・・・・露骨な課金催促・・・・間違いなくオーダー・プロフェッションの宿娘ですわ」
「こっちの宿も同じことを言われました・・・・どうやらどこも同じようですね」
ガチャリと開けられた扉、その奥にいるのは金髪の少女と銀髪の少女、フロワとマリーだ。
マリーとフロワには手分けをして宿の空き状況と、宿娘の反応を見に行ってもらった。結果はご存知の通り――――どうやらNPCだったということで。
「こうなってくると面倒くさい・・・・まずは金集めから――ということになってくる」
「でも、私の時みたいに腕相撲大会で稼ぐとかすれば――――」
「いや、それは無理だ。まず【熟練】がないし、この町にいるやつらは人間のように見えるがおそらく全部NPCだ。人口AIが入ってるから、かなり人間に近い動きをするがな・・・・」
そう――例えばこの宿にいる客も、怒ったり悲しんだりはするが全てがNPCだ。
こちらが話しかければ返事はするし、殴れば殴り返してくる。
しかし、その全てがパターン化された行動であり、AIによる判断でしかない。そのため、このNPCたちはプレイヤーが死ぬまで殴ってくるわけでもないし、プレイヤーがこのNPCを殺しても罪に問われることはない。
「・・・・だから、NPCなんかが金を持っているとは思えない。【熟練】もないし、その稼ぎ方はなしだな」
「そうですか・・・・じゃあどうすれば・・・・」
「だったら稼げばいいはなしですわ!」
「だから、その稼ぐ方法を今模索しているわけで・・・・あ、そうか・・・・」
指を指しながらニコニコと笑うマリーを見て、とあることに気づく。
そんな様子に置いてかれたフロワは「え、え?なんですか?なんですか?」と、興味津々に何度も尋ねてくる。
「ここはゲームの世界・・・・オーダー・プロフェッションの世界・・・・だから、金稼ぎだってゲームのやり方で稼げばいい――」
マリーの指さす方向――――そこには、大きな塔が1つ。
「オーダー・プロフェッション内における金稼ぎはただ一つ――――モンスター倒しまくって、報酬金ゲットだ」
「私、今回はなんの職業にするか迷いますわ!」
「ちょっと!私にも説明してくださいよ!」
スタスタと、塔の方向に向かって進んでいく。
しかし、ただ一人理解できていないフロワは、ただただ教えられないことに不満を感じながら――――その後を付いてきていた。