オーダー・プロフェッション 2
さわさわと吹く風の中、3人は道なりに進んで宿を探す。
会話のあまり続かないなか、ラブはフロワへと近づいて、マリーには聞こえないように耳打ちをする。
「前回の世界の件だが・・・・俺らがエルフと敵対していたことや、現最強を倒そうとしていたことがバレると色々と面倒だと思ってな、一応誤魔化しておいたからそのつもりで・・・・」
「そうですか・・・・でも、私はともかく、ラブさんなら説明しても分かってくれるんじゃないですか?」
どうやらフロワは、俺とマリーの距離感や仲の良さが分かるらしく、その信頼関係を信用して言っているようだった。
「・・・・確かにそれはあるが・・・・今はまだ早いだろう、言うなら後で・・・・気づかないようなら話さないでもいい。下手に軋轢が生じても困るだけだしな・・・・」
「まあ、その辺はラブさんに任せますよ。距離感とかもラブさんの方が分かっているでしょうし・・・・」
理解してくれているようで、フロワはマリーのことはこちらへ任せてくれる。
・・・・だけどこの態度、何か引っかかるような――――、
「・・・・もしかして、嫉妬してる?」
「・・・・それは気づいても、言わない約束ですよ」
フロワは若干頬を膨らませ、こちらを睨むように見る。
「・・・・そんなに心配しなくても、マリーとお前ならすぐに仲良くなれるよ。それこそ、俺よりもな」
「そうですかねぇ・・・・」
不安な表情を見せながら、フロワはチラッと横目でマリーを見る。
マリーはニコニコと、ただただ嬉しそうに笑って、後を付けてきていた。
――――そして、しばらく歩くと、
「・・・・あ!何か見えてきましたわ!」
マリーが声を上げて指をさす。
その方向に目を向けると、そこには白い大きな壁、それを虹色に色を反射させるガラスのようなものが、ドーム型に覆い被さっていた。
「・・・・決まりだな、あの町はオーダー・プロフェッションの世界で出てくる町――――通称、ギルド・・・・」
ギルド――――このゲーム、オーダー・プロフェッションにおける拠点だ。
壁の中には無数の町や店が並んでいて、どれもプレイヤーを助けるような道具やNPCが存在している。
そして、間違いなく――――宿も、そこにはあった。
「ひとまずはノルマクリアってところか?とりあえず宿で一休みして、少し状況を整理しないとな・・・・」
「そうですね!なんだかんだで歩き続けてますし!」
ギルド内へ入るために、さらに歩みを進める。
やっと腰を下ろすことが出来ると思い、フロワとともに意気揚々と入ろうとすると――――、
「ちょ、ちょっと待ちますわ!」
「――――ん?なんだ?マリー」
後ろからマリーに呼び止められ、その足を止める。
それを見たフロワも歩みを止め、二人ともマリーの方向を見る。
「あの・・・・二人とも宿って行ってますけど、宿に泊まるためのお金って持っていますの?」
「「・・・・あ」」
そのマリーの一言に、お互いは顔を見合わせて――――、
何故今まで気が付かなかったんだと、衝撃と自分の不甲斐なさを感じ――――、
まるで、石にでもなったかのように、二人はその場で固まっていた――――。