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なう・ろーでぃんぐ 2

「・・・・そうか、主様は亡くなったのか」


「・・・・あぁ」


 現最強が死ぬまでの過程を・・・・理解しがたい過程を、上手くリンに伝える。

 自分が主を殺したわけではないことを、自分にも理解ができないことを・・・・ただ、自分の本来の目的だけは話さないようにして・・・・。


「・・・・わかった、主様のことについては、こちらから皆に事情を説明しよう――――だが、お前らはもうこの森には来ないほうがいい。人間が・・・・特に男が領地に足を踏み入れた途端に主様が死んだとなっては、たとえお前たちに関係がなかろうと、非難の目を浴びるのは明らかだ」


「そうだな・・・・それにしても、案外落ち着いているんだな」


「まぁな・・・・主様は亡くなっても・・・・決して、存在が消えたわけではないからな――――それどころか、まだどこかで生きている気がするのだ、またどこかで笑って、なんでも面倒くさがっているような気が・・・・そんな気がするのだ」


 リンは天を仰ぎ、そこにはいない誰かを見るかのような素振りをする。


「・・・・じゃ、俺はそろそろ行くよ。なるべくバレないように、早急に立ち去ることにする」


そう言って、残りの階段を踏み下りていく。


「そうか、気を付けていくといい」


「あの・・・・また・・・・」


 リンはこちらを見て、その後ろからルリが顔を出すように、手を振って見届けてくれた。


「そうだ・・・・ハルは付いてきてくれよ、入り口の壁を開けられないからな」


「あ、そうですねぇ・・・・じゃあ私はまだ付いて行くことにしますかねぇ」


 そう言うと、ハルは後ろからタッタッと足早にこちらを駆けよってくる。

 2人で階段を下りながら、ハルはふと――指を頬に当て、左上を見て考え始める。


「――――ん?そういえばぁ・・・・何かを忘れている気がするのですよぉ・・・・」


「・・・・さあ、一度死んだし、気でも動転してるんじゃあないか?」


「・・・・それもそうですねぇ、では――――行きましょうか!」


 どうやら約束のことは思い出せなかったようで、こちらとしてもそんな面倒くさいことを今はしたくないわけで・・・・、ハルが思い出すよりも先にこの世界から出ようと、自然と足は速くなっていた。


***


「はやく・・・・!返しなさい!」


「・・・・あ!ラブさん!」


「・・・・何やってんだお前ら」


 下に降りると、すぐさま目に入ったのは高台に昇って座っているフロワ・・・・そして、そこにピョンピョンと跳ねて、フロワを掴もうとしているサラの姿だ。


「ラブさん、遅いですよぉ・・・・待ち疲れました」


「それは悪かったな・・・・とりあえずこっちの要件は終わったから、次の世界に行くぞ」


「・・・・!ということは、倒したんですね!」


「倒した・・・・というか・・・・まぁ、詳しくは後で話すよ」


 その言葉を聞くと、フロワは「分かりました!」と言って、高台を何度も跳ねて移動して近づいてくる。

 そして、移動するフロワを追いかけ、サラもまたこちらへと駆けよってくる。


「ちょっと!待ちな――――・・・・!あなたは・・・・」


「おねぇ様!無事、帰還しましたよ!」


「え?ハ、ハル――――一体どこへ・・・・それより、あなたは・・・・!」


「あー・・・・妹は無事だから、とりあえず落ち着いて・・・・」


 とてもいい笑顔で敬礼のポーズをとるハルに、肩を掴み無事を確認するサラ。

 そして自分の存在にも気づいたサラを、とりあえずなだめて――――、


「おねぇ様、私何もされていないので安心してください!」


「本当なのですね?・・・・よかったぁ・・・・」


 サラは安堵した様子で、膝から崩れ落ちると、またハッとした様子で――――、


「そうだ、アレを取り返さないと――――」


「フロワ――――返してやれ」


「はい――――」


 そう言うと、フロワは何やら木やらツタやらで編まれた巾着を取り出す。

 そして、それをサラの前に差し出すと、サラは勢いよくそれを取り、ジッ・・・・としばらく見た後、無事を確認してホッとした顔をする。


「これ・・・・私が昔に作った・・・・ずっと持っていたんですか?!」


「当然ですよ・・・・妹が私にくれた、大切なものですもの・・・・」


 サラは巾着をギュッと自分の胸に押し当て、大切そうに抱えてそういう。


「・・・・じゃ、これで用はすんだから――俺たちは行かせてもらうぞ」


「あれぇ?もう行っちゃうんですかぁ?」


「あんまりここにいても混乱を招くだけだしな・・・・」


「そうですかぁ・・・・じゃあ、ここから帰ってください。そうすれば見つかることもありませんからぁ」


 そう言うと、ハルは壁に言葉を掛ける。

 すると――――通路が・・・・、確かにここを通れば、誰にも見つかることなく進むことが出来そうだ。


「さんきゅ、じゃあ――――」


「はい、また――――」


 最後にそれだけを交わすと、ハルは軽く手を振って見送ってくれる。

 状況をいまいちつかめていないサラは、「ねぇ、ハル?どういうことですか?」と、ハルに何度も問い詰めている。

 そんな光景を最後に、フロワと俺は通路へと足を踏み入れた。

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