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朝の憂鬱な気分のまま僕はいつもの通学路を歩いている。外は寒波が過ぎ、長い休みから重い腰を上げた木々たちが今か今かと活動を待ちわびている。
「季節は春を迎えようとしてるってのに、俺の心はこれから氷河期突入とは……。」
春を迎え得ようとしていた心に突如寒冷前線が訪れ冬をぶり返していた俺を年中かんかん照りの太陽を携えている男が現れた。
「どうした?裕太。目覚め悪かったのか?それとも、新学期を迎える前に失恋でもしたか??」
太陽は俺に優しくはなかった。
「なんて勘の良い奴なんだよ。お前は」
「えっ!?マジかよ!!何があったのさ〜」
いつも2人でふざけ合いながら登校するのだが今日はこいつの底抜けのない明るさを受け止めてやれるスペースが俺の心には残っていなかった。
「寛人。お前とは長い付き合いだ。だからこそ、冷たい言葉で突き放すけど。ほっといてくれ」
伊東寛人こいつとは幼稚園から一緒で家族と同等の時間を過ごしてきた。クラスでは人気者で男女問わず分けて立てなく接する良い奴。だから、心配してくれてることは明白でいつもなら何かあればすぐ話すのだが……。
「おいおい。どうした?いつもなら話してくれるのに……よっぽど堪えてんのか??」
「わかってるなら、掘り下げようとするなよ!話したくないんだよ今は!」
そう言い放ち、詰め寄ってくる寛人を振り払い小走りで正門をくぐり階段を駆け上がり、教室の机に顔を埋めた。