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雷と兎と 【改訂版】  作者: 雪沫 コウ
雷と兎とサバイバル?
9/13

雷と兎と 9

 


 兎が肩を震わせた気がするが、気のせいだろう。

 ふふ、まさか、私の笑顔が怖かったなんてあるわけ無いよね。


 兎が鑑定結果を包み隠さず、教えてくれたので私のステータス?で良いのかな、ゲームのような感じがするけど。

 前の世界でも自分のスキルがこんな感じでわかったら、天職が見つけられたのかな…………。





 チョット思考がズレてしまったが、改めて、



 名前 ハナ

 種族 人間種

 年齢 アラサー

 ギフト 植物鑑定 念話 他

 魔法 樹 他


 こんな感じだ。

 下級鑑定はそこまで詳しくは分からないらしい。善悪は鑑定した時の雰囲気でわかるらしい。


 うん、年齢はこう言うようにと教えてあげた。


 ギフトはまだいくつかあるらしいのだが、兎にはここまでしか見えなかったそうだ。

 魔法は雷も使えるのだが、『他』にまとめられている。

 もしかしたら、まだ何か使える魔法もあるのかもしれない。後で試してみよう。


 ちなみに、兎のことも教えてもらったら、


 名前 シル

 種族 獣人種 兎

 年齢 62歳

 ギフト 鑑定 脱兎

 魔法 風


 有ったのだ。

 まさかの脱兎が。

 笑いを堪えるのに苦労した。

 せめて、逃げ足とかにして欲しかった。



 獣人の寿命は長い。平均500歳。戦闘好き種族なため老衰で死ぬより戦いで散る方が多いため、700歳過ぎれば長寿と言われるらしい。獣人は100歳で成人となるのでシルは人間に直すと12歳ほどだ。


 名前 マール

 種族 聖獣 雷

 年齢 33歳

 ギフト 瞬足 念話 他

 魔法 明 風 水 他


 聞いてもいないのにマールの鑑定も話し出す兎に、私たちの鑑定結果を、他の誰かに話さないように約束させる。

 兎改め、シルが涙目になっているのは見なかったことにした。

 個人情報は保護されなければならない。


 マールの鑑定で雷獣なのに、魔法に雷が出ていなかったことに驚いた。

 魔法については、初めの6種類、明、影、火、水、風、土が開示されるのだろうか?

 私の樹魔法はなんで開示されたのだろうか?



 グウーー。



「お腹空いたの?確かーーーそこらへんに肉の包みがあるから、持ってきてくれるかな?」


 帰ってきてマールに駆け寄った時に、何処かに放り投げた気がするんだが、どこにやったんだっけ?


 周りを見渡すと徐々に明るくなってきているようだ。

 泉に光が当たり、キラキラ輝き出す。

 樹海の中にポッカリと空いた穴から朝日が差し込んでくる。泉が大きいため空から見れば緑の中に、突如現れた、水色の鏡が見えるだろう。


 世界に光が差す。


 彩り(いろどり)が増す世界をぼんやりと見つめていると、膝でモゾモゾ動きを感じる。


「ーーーマール、おはよう」


 柔らかく暖かい生き物の感覚に、私は嬉しくなり、自然と頬が緩む。


 うーんと前足を伸ばしていたマールが、こちらを見て止まった。

 隣に重い包みが落ちてきた。

 兎、じゃ無くって、シルが包みを待ってきて、落としたようだ。

 ドジだなと思いながら肉の包みを拾うと、マールが私の膝から降りて肉の包みの匂いを嗅ぎ始める。


「ご飯にするか、って言ってもほぼ肉だけだけど」


 二人……二匹?に言うと、シルが動き出し、鞄を探って一つの袋を取り出し渡してきた。


「ん?何?…………くれるの?」


 大きく頷いたので中を確認すると、お皿と岩塩と堅パンが小鍋に入って出てきた。

 おお、パンだ!

 この世界のパン。硬く頑丈に焼かれ日持ちがするように作られたもの。

 少し赤みがかっているこぶし大の岩塩。昨日の昼間に摘んだ野草とで美味しいものが出来そうだ。


 焚き木もだいぶ小さくなってきたので、半分に枯れ木を足して、半分を熾火(おきび)にして、強火と弱火を作る。

 と言っても、シルが上手く火加減を調節してくれ、私は教わっていただけなのだが。


「じゃあ、シルはパンを薄く切って、軽く焼いておいて。マールは水飲みに行こう」


 泉に行き、水を飲んでから、小鍋と皿を洗う。

 少し離れた所でマールが一生懸命に水を飲んでいる。私もタオルを出して顔を洗って、さっぱりする。

 午後になり、もう少し暖かくなったら水浴び出来そうだ。


 リュックに入れておいた、昨日摘んだ野草と木の実を軽く洗う。全て食用で、美味しい食べ方も植物鑑定で調べてある。

 焚き木に戻ってシルと交代する。


 鉄の鍋を強火にかけて、大きな肉塊の脂身部分から焼く。

 小玉ねぎ似の野草の葉と、皮を剥いた球根をナイフでぶつ切りにして、香ばしく焼けたパンを火から離す。

 全体をよく焼いた肉に、水と小玉ねぎ似と、匂いが生姜似の野草の茎を入れて岩塩を削って入れて沸騰させた。肉をいったん取り出し、一口大に切って鍋に戻し出来上がりだ。


 深皿に半分盛り、パンを乗せてシルに渡し、私は鍋の残りにパンを入れる。この世界の堅パンは名の通り物凄く硬い。釘が打てるくらいに硬いので、スープでふやかして食べるのが一般的なのだ。

 マールにはもう一つの生肉を渡す。

 調味料に塩があっただけでもありがたいが、圧倒的に足りない。


 足りないものだらけだが、とりあえず


「いただきます」


「世界に感謝をーー」


 お互い食事の前の挨拶も済ませ、シルはスプーンを、私は箸で食べ始めた。





読んでいただきありがとうございます。

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