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雷と兎と 【改訂版】  作者: 雪沫 コウ
雷と兎とサバイバル?
12/13

雷と兎と 12

 


 どう説明すれば分かってもらえるか。




 世界樹の記憶を探してみれば、大昔、シルに似た髪色の人間種が氷魔法を使えたとあった。

 詳しいことはわから無いが、そう書かれた羊皮紙を読んだ、世界樹の欠片を貰った者の記憶だった。


 とにかく水魔法を使えれば、進化して氷になるのではないかと、仮定してシルに伝える。


「さすがに、水の魔法は知っているよな?」


「バ、バカにすんな!兄さ、あっ兄貴の教科書で読んだ!……………………教科書は最初の頁しか読んで無い、俺は魔法の勉強はして無いんだ」


 身体を乾かすために魔法使ってたけど、勉強しなくても簡単に使えるのかな。


「シルは上手く風の魔法を使ってたように見えたけど?」


「あれは、冒険者に教えて貰ったんだ」


 冒険者。

 この世界での何でも屋。

 魔物の討伐、要人の護衛から、畑の水やりやゴミ拾いまで、なんでも引き受けますとばかりに依頼を受けてくれる組織。


 ーーーー今の時代より前に地球からの転生者か転移者がいたのでは無いかと、私は疑っている。

 まるでゲームや、小説だ。


「使える魔法がないってのも、その冒険者が?」


 シルは悔しそうに頷く。

 冒険者もピンキリだから、どの程度の実力の者に教わったかは知らないが、本格的に魔法の勉強はしたことはなさそうだ。



 どんな魔法を使うのであれ、まず教わるのは、明、影、火、水、風、土の6種類から。

 その次に光、闇、炎、氷、嵐、地の進化した6種類。


 持ちうる属性によって現れる色素が、

 明が金

 暗が銀

 火が赤

 水が青

 風が黄

 土が茶


 進化した6種類が、

 光が白金

 闇が黒銀

 炎が紫紺

 氷が藍白

 嵐が山吹

 地が焦茶


 全ての魔法がそうなのだが、これは目安の色素であって、色の濃淡が変わっていたり、混じって違う色になっていたりと、絶対とは言えない。


 シルの場合、瞳が青味がかった緑色。これは風魔法の黄色と水魔法の青が、混じっているのではないかな?


 薄ーく青の混じった白い毛皮はやはり氷の魔法。進化する前の水の魔法が使えればもっと、氷についてわかりやすくなるんではないのかな。



 うん?なら私も樹の魔法が使えるんだから、水と土も使えるのではないかな。この二つで樹の魔法に派生するのだから。


 手に持った水筒の水に集中して、水に波紋浮かべようと集中する。

 波紋は波だよね、一般的に波は風が起こす。でも今は水単体を動こしたいのだからーー水だけを持ち上げればいいんだ!そうすれば波紋だけじゃなくって形作れる。鳥の形にして飛ばしてみたり出来るわけで、マールの形だって、


「出来た。ほら、マール!」


 小さな水でマールに似せた像を形作り、マールの前に動かす。

 マールは目の前に来た水の像を、大きく口を開けて、バクン、と食べて、飲み込んでしまった。


『華、もう一回!』


 瞳をキラキラさせてマールがおねだりする。動き回る水の像に本能を刺激されたのか、頭を低くしてお尻を上げていつでも追いかける準備が出来ている。


 私はマールの子供らしい姿に嬉々として、水の魔法を練り出す。


 水の魔法なんだからわざわざ水を汲んでおかなくても、水の像も作れるはず。

 まずは大きさだね。テニスボールくらいにして、形は魚にしよう、うん、飛魚、もちろん美味しい清流で、跳ねるようにマールの側で遊ばせよう。


 おお、狙ってる、狙ってる!


 少し静止させて、一気に上昇。



 跳んだ‼︎



 マールが私が見上げるほど高く、跳び上がって飛魚を捉えていた。上空で器用に回転し、前足から危なげなく地面に降り立った。


 思わず拍手して、マールを褒め称える。


 が、そんな私に興味もなく、新たに生まれた水玉に飛びかかっていく、マール。



 新たな水?


「えっ……今の、シルが?」


「…………………で、きた?………………出来た!!!」


 尋ねた私に、本人も信じられなくて確認するシル。他にいないしと頷くと、こぶしを突き上げて喜ぶシル。


『もう一回!』


 まだ足りないようで、マールが戻って来て催促する。次は何を作ろうかと思ったが、これはシルの練習になるんじゃ無いかと、シルに作ってもらってとマールに言う。


 喜びに浸っていたシルにマールが突進する。


「うわ、えっ、何?聖獣さま?」


『もう一度だ、兎』


 鼻でグイグイ押して、催促するが、シルには伝わらないため、尻尾で地面を叩き出す。


「シル、マールがもう一回水玉、作って欲しいって」


 マールをじっと見つめた後、シルは水玉を作り始める。

 両手を伸ばして集中して、


「水よ、出ろ!」


 その言葉でシルの両手から水が出た。


 ジョロジョロと水道のように細い水が……


「ーーガウッ‼︎」


 もう一回!とマールの催促。


 慌てて手を握りこみ、シルが魔法をとめ、もう一度集中する。


「水よ、玉となれ!」


 シルの手のひらからフヨフヨと水の玉がでてーー直ぐに、目の前のマールに食べられた。


 出来たことに喜ぶ暇も無く、マールによって消され、また、ガウッっと催促されるシル。

 何度か繰り返すと、集中するシルがだんだんと涙目になって来たが、徐々に水玉が大きく早く動くようになって来た。

 マールが楽しそうだし、シルの練習にもなるしと放って置くことにした。





読んでいただきありがとうございました。

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