序 異世界召喚ですって。
「よく来てくださいました、勇者様方!ようこそ、アークフィリアへ!」
そう言って、俺たちの目の前にいる女性が笑顔でこちらを見る。
その女性の周りには、ローブを着た人が何人か立っていた。
周りにいる同じクラスの連中は驚いているやつがほとんどだな。俺の幼馴染みの一人(男)は嬉しそうにしてるが。
俺が冷静に周りを観察していると、目の前の女性が一歩前に出る。
「どうか、私達をお救いください。勇者様方」
そう言って、俺たちに向かって深々と頭を下げる。
俺は、頭を下げている女性を見ながら、こうなる前のことを思い出すことにした。
* * *
月曜日。それは学生にとってとても憂鬱な日だ。きっと大多数の学生が、ため息をつきながら学校に行くのだろう。
まあ、俺にとっては休日以外はどの曜日も憂鬱なんだが。
「はあ……なあ、学校ってなんであるんだろうな?」
昼休み時、そう言って俺は目の前で弁当を食べている幼馴染みに話しかける。
「急にどうしたんだ、忍」
そう言って、俺こと小鳥遊 忍に呆れた表情をする俺の幼馴染み。
彼の名前は神無月 亮。俺の幼馴染みの一人で、世間一般で言うところの所謂オタクだ。
髪は短めに切り揃えられており、顔は中の中くらい。
俺の方はというと、適当に切られた髪に眠そうな目、顔は自分でいうのもなんだがけっこう整っている。ちょくちょく告白なんかもされているし。
「学校なんか来たって学ぶこともないし、人間関係は面倒だし、暑いし、来る意味なんかないだろ」
「それはお前だけだ。まあ、人間関係が面倒なのは同意するが」
そう言って亮がため息をついたところで、俺たちに女生徒が近づいてきた。
「忍君、亮君、お弁当一緒に食べよう♪」
そう言って俺のもう一人の幼馴染みが俺たちに話しかけてきた。
それと同時に、亮に突き刺さる男子の視線。それを受けて、亮は冷や汗を流している。
彼女の名前は西園寺 瑞希。男女問わず人気があり、この学校で一二を争う美少女だ。
腰まで伸びた黒髪に優しげな目、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるスタイルもかなりいい。
「俺はいいけど」
「俺も、まあ……」
亮がそう言ったところで、さらに男子の視線が強くなる。お前ごときが西園寺さんと一緒に食べるんじゃねえ、といった感じだ。ちなみに、俺にその視線は向かっていない。
「西園寺、小鳥遊。一緒にこっちで食べないか?」
そう言って、亮をナチュラルにスルーしながら俺たちに話しかける声があった。
そちらを見ると、爽やかなイケメンが立っている。
彼の名前は神崎 悠人。容姿端麗で文武両道、成績優秀な男子生徒だ。
その隣では、お弁当箱を持った女子生徒が顔を赤くしてこちらを見ている。
確か名前は白木 七海だったか。
ふと、教室の床が目に入る。そこには、なぜか光輝いている円環と幾何学模様があった。
徐々にその光は強くなり、次第に他の生徒も気づき始める。
(おいおい、異世界転生の次は異世界召喚かよ)
俺は一人ため息をつきながら、その光に包まれていった。