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最終話

あの日、保健室での彩乃からの告白を受けて、キスをして、人外になり始めてという怒涛の放課後から一ヶ月が経った。

まだ人外化が完了しているのかは分からないが、だいぶ安定してきたのか、人外としての力も使えるようになってきている。

そして、その一ヶ月の間にそれなりに変化があった。

例えば登下校、どちらかの家に迎えに行くというのはあまりないが、通学路として被る部分で待ち合わせて一緒に登校し、帰りもたいていはそこまで一緒に帰っている。

他には呼び名とか、最初の頃はずっと、俺からは氷桜、彩乃からは緋桜くんと互いのことを呼んでいた。

だけど、今では俺からは彩乃か白、彩乃からは刀夜くんと紅と呼び合っている。

あ、ちなみに響だが、あいつも案の定人外だった。

俺が人外化を始めた次の日に、あっさり響の方からばらしてきた。

まあなんとなくそんな気がしてたので特に驚くこともなく、その後も変わらず適当なノリで仲良くしている。

最近では、人外化が終わりつつある影響か、人外と人が見分けられるようになったけど、俺のクラスには人外は響しかいなかった。

人外だからどうというのはないけど、唯一の同じクラスの人外が響で、そしてその響と早くから仲良くなったのはいい偶然だったと思う。

まあそんなわけで、人外としての力が使えるようになってた俺は、彩乃に内緒で人外の力を使ってあるものを作っている。

ちなみに、妖狐の力は創造の力らしい。

彩乃曰く、霊気を変換して現象や物質に変換する力とかなんとか。

創造の力、と一括りに言っても一人ひとりで力の質は異なるらしく、例えば現象創造なら火を出すだけとか、物質創造なら鉄しか出せないとか、現象系か物質系のどちらかの系統で、一つの現象か物質しか創造出来ないというのがほとんどらしい。

だけど、俺の紅狐や彩乃の白狐は妖狐の中でも特に強い力を持ってるらしく、俺は物質創造全般、彩乃は現象創造全般が使える。

俺は、その物質創造の力をフルに活用して彩乃へのプレゼントを作っていたのだ。

この物質創造というのが便利なもので、イメージさえしっかり出来れば、形状や材質はほぽ思いのままに作ることが出来る。

極端な話、地方ごとに異なる宝石で形作られた日本地図の形の宝石とかも簡単に作れるのだ、いやまあそんな珍妙なものは作らないけど。

ちなみに、彩乃の現象創造全般というのもなかなかに強力で、凍える炎とかも作れるらしい。

炎なのに凍るとか物理法則に喧嘩売ってるとしか思えない。

まあそんなわけで、物質創造の力で俺の思い描く形、材質で彩乃へのプレゼントを作っていたわけだけど、それがついに完成したのだ。

今日が丁度あの日から一ヶ月ということで、割とギリギリだったけど、どうにか今日までには間に合わせることが出来た。

あとは、これを今日の帰りに彩乃に渡す予定だ。

そんなことを考えながら、俺は放課後を楽しみに待ちながら授業を受けていた。


そして、ついに迎えた放課後、俺と彩乃はいつものように二人で帰っていた。

「そういえば、今日で俺と彩乃が付き合い始めてから、そして俺が人外化を始めてから一ヶ月になるんだよな」

「うん、もう一ヶ月経ったんだ...なんかあっという間だった気がするね」

「ああ、ほんと瞬く間に一ヶ月が過ぎ去っていった気がするな」

俺は、彩乃とそんな風にこの一ヶ月を振り返っての雑談をしながら、頭の片隅でプレゼントをどのタイミングで渡そうかと考えていた。

プレゼントを作り、一ヶ月記念の今日の日に渡すというのは決めていたのだが、肝心の渡すタイミングについてをすっかり失念していたのだ。

そんなわけで、楽しく彩乃と話しながらも、徐々に緊張が高まっていたのだが、ふと少し先に小さな公園があるのを思い出す。

あまり大きな公園ではないためか、いつもほとんど人がいないような公園だが、かなり綺麗に手入れされており、ベンチなどもあってプレゼントを渡すには丁度いい場所かもしれない。

そう考えた俺は、彩乃にその公園に寄ることを提案することにした。

「なあ、彩乃。このまま真っ直ぐ帰るんじゃなくて、ちょっとだけ寄り道したいんだけどいいか?」

「え?うん、私は全然大丈夫だけど、どうして?」

「いや、な、この先に小さな公園があるだろ?ちょっと一緒にそこに寄りたいんだよ」

「??まあ刀夜くんのお願いなら全然いいけど」

彩乃は俺の突然の頼みに不思議そうな顔をしたが、幸いにも深く問いかけることもなく了承してくれた。

俺と彩乃は、それから少し歩いたところの小さな公園を目指していく。


公園に入った俺と彩乃は、手頃な位置にあった一つのベンチに腰掛けた。

ベンチに腰かけると、彩乃は何の用なんだろうとでもいいたそうな感じの目で俺のことを見つめてくる。

俺は、深呼吸を一つすると、ポケットからプレゼントを入れた小さな小箱を取り出して彩乃の方を向く。

そして、

「これ、俺の人外の力、物質創造の力を使って彩乃のためにアクセサリーを作ってみた。気に入ってもらえるかは分からないけど、よかったら受け取ってほしい」

俺は彩乃にそう言って、取り出した小箱を彩乃へと差し出した。

「え...?ええ!?これ、私に...?」

差し出した直後、彩乃はぽかんとしていたが俺の言ったことが頭に入ってきたのか、とても驚いている。

「ああ、俺が彩乃からもらった人外の力で、彩乃に、彩乃のために作ったものだ」

俺が改めてそう言うと、彩乃はおずおずと小箱を受け取ってくれた。

「ここで開けてもいい?」

「ああ、もちろんだ」

彩乃からの許可を求める質問に、はっきりと頷きを返すと、彩乃はそーっと小箱を開ける。

小箱の中には...

「わあ…!!桜と狐のネックレス?」

「ああ、俺たちの名前にある桜の字と、俺たちの人外の種族の妖狐をモチーフに作ってみた」

そう、小箱の中には、舞い散る桜と、その中で向かい合う二匹の狐のネックレスが入っている。

桜はアクアマリンとルビーで作っており、狐は片方は白、片方は紅の色をつけた銀製だ。

彩乃は、目を輝かせて小箱の中からネックレスを取り出すと様々な角度からネックレスを眺めている。

ひとまずは喜んでもらえたようで安心していると、彩乃はネックレスをおずおずと差し出してきた。

「あ、あのね、折角だからこのネックレスを今ここで付けてみたいの、それでね、刀夜くんにネックレスを付けさせてもらいたいんだけど、ダメかな?」

彩乃は遠慮がちにそう聞いてくるが、断る理由などどこにもない。

「ああ、いいぞ。折角だから俺もこのネックレスをつけた彩乃を見てみたいしな」

俺はそう言って彩乃からネックレスを受け取ると、彩乃の首に手を回してネックレスを付けてやった。

彩乃は首からかけたネックレスを眺めながら嬉しそうにニコニコと笑っている。

「気に入ってくれたみたいだな」

「うん!凄く素敵なデザインだし、なにより刀夜くんからのプレゼントって言うのが凄く嬉しい!ありがとう!」

俺が声をかけると、彩乃は本当に嬉しそうに答えて、それから勢いよく抱きついてきた。

「うおっと」

俺が慌てて彩乃を抱きとめると、彩乃は甘えるように頭を擦り付けてくる。

しばらく頭を擦り付けてきていた彩乃だが、しばらくすると頭を擦り付けるのをやめ、俺のことを見上げてきた。

そして、

「刀夜くん、こんな私だけどこれからも一緒にいてくれると嬉しいな」

そう俺に言ってくる。

それなら、と俺は彩乃へと返事を返す。

「ああ、彩乃が俺を好いてくれている限り俺は彩乃と一緒にいるよ、今世(いま)も、来世(みらい)も、ずっと、ずっと」

そして、俺がそう言った後、俺と彩乃はどちらからともなく唇を重ね合わせた。

今世(いま)来世(みらい)も、いつまでも、いつまでも、ずっと一緒に歩めることを願いながら。

はい!これにて本作【輪廻の先で出逢った二人】は完結となります。


まだまだ色々な面で未熟ゆえ色々と言いたいことはあったと思いますがお楽しみいただけましたでしょうか?


もしよかったらここが良かった悪かったなど感想をいただけたらとても嬉しいです。


それではまたいずれ5円がありましたら新たな物語の舞台でお会いしましょう。

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