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リアルファンタジア  作者: なぎゃなぎ
第三章~失望と幻滅の先にあるもの~
21/59

第二十話~奇跡の代償~

ココハ戦場。

死ヲ覚悟スルハ武人ノ習ワシ。

死ハ誉レニアラズ。

タダ、当然ノ事ト思ウベシ。

シカシ、汝、死ヲ許容スル事ハ許サレ難シ咎人也。

己ノ欲望ガ為、触レル事許サレヌ神ノ道具ヲ無断使用シタ罪。

人ノ所業ヲ越エタ奇跡ノ代償ヲ神ニ捧ゲルモノトセヨ。



優人は底知れぬ闇に落ち行く感覚に安堵すら感じていた。

もう痛い思いはしないで済む。

もう悲しい気持ちはしないで済む。

もう自分の非力さに苦しまないで済む。


考えてみれば『生きる』とは何なのだろう?

ただ、一瞬で終わる試験や試合の為に散々努力をする。

勝てば一瞬の優越感が与えられ、その繰り返しが周りの評価を勝ち得る。

それでも負ければ、その信用は無くなり、また1から努力の日々が始まる。

どんなに努力をしても、その努力が報われない事も多い。

どれだけ頑張っても、試験、試合当日体調を崩せばそれもやはり負けと等しいのだから。


優人は死して初めて自分の人生を客観的に見つめ直し気付く。

夢は幻滅し、希望は絶望に終わるのが世の常だと。

人は生まれながらに不公平に生きる。

金持ちの家に生まれれば何不自由なく暮らせる。

社長の家に生まれれば生まれながらに社長になれる。

美人に生まれれば異性に恋をされ、体格に恵まれれば運動で注目を浴びる。

何もない人間は生まれながらに敗者なのだ。

敗者は勝者をいかに引き立てるかを考え、いかに気に入られるかに意識を送るしかない。

人の世が生み出した世の中は、人に対して残酷だ。


しかし、そんな人生も今終わった。

優人は薄れゆく意識の中、瞳を閉じたままゆっくりと眠ろうとする。

闇が優人を優しく包み込む。


不意に、一筋の光が優人の閉じた瞼を照らす。

最初は無視していた優人だが、その光がしつこく優人の瞼を照らすので、優人は怠そうに瞼を開ける。

闇の中に、1か所穴が開いており、そこから光が差し込んでいるようだ。

優人は面倒だと思いつつも光を塞ごうと、その穴に近づくとある風景が穴の先に見えた。


土砂降りの雨の中、大きな槍を持った男と、盾と片手斧を持った小さな女の子が睨み合っている。

その後ろに綾菜の姿があり、綾菜が女の子に何かしらの魔法を付与していた。

これから、この女の子と大槍を持つ男が戦闘をするのであろう。

しかし、結果は一目瞭然である。

大槍の男は体つきも、槍を構える体裁きも超が付くほど一流である。

しかし、女の子の方は盾も片手斧も構える動きに悩みの色が見える。

根性の座り方からすれば歴戦の戦士であると見受けられるが、盾や片手斧はまだ使い始めて日が浅いと想像できる。


無駄な事を・・・。


優人はその女の子を見てそう思った。

その瞬間、大槍の男が動き出す。

女の子を無視して綾菜の方へ・・・。


キィン!!!!!!!


優人は自分の行動に自分で驚いていた。

気付くと、綾菜を突き飛ばし、男の大槍を受け止めいたのだ。

持っている刀はさっき折れた居合刀。

武器を持った攻撃は、武器のどの部分を当てるかを考えながら無意識か意識的なのか打撃点に一番力が入る攻撃の仕方をする。

優人はその打撃点よりも攻撃者に近い部分に剣を当て、相手の力を殺して攻撃を受け止める。

大槍を持つ男は何が起こったのか分からず、優人に止められた槍を見ている。


「てめぇ・・・綾菜に何をする気だった!!!!!」

優人は男に怒鳴り、槍を押し返すと、そのまま横一文字に切り裂く。

その男は槍が押し返されたことに反応し、後ろへ飛ぶ。

男が間合いから逃れたことを確認すると、優人は後ろの綾菜が気になり、後ろを振り向く。


綾菜は、地面に尻餅をついたまま大粒の涙をぽろぽろとこぼし始めていた。

いつもはお洒落に気を使い、綺麗な格好をしていた綾菜が、雨に打たれドロドロの格好をしている。

汗をかき、髪も乱れているのも気にせず、必死な顔をしている。


綾菜・・・。


優人はそんな綾菜の必死な顔に罪悪感を覚えた。

『綾菜の努力も苦労も無視してのうのうと闇に飲まれ、死にゆく自分。』

もし、綾菜が自分の遺体を見つけた時どんな顔をするのだろう?

多分、今以上に涙を出し、泣きじゃくるだろうと考えられる。


自分の人生はろくでも無かった。

生まれながらに負ける為の命であった。

死んだ方が良いとも思える思いでしか無かった。


違う。


少なくとも綾菜と共に過ごした日々は毎日が満たされていた。

起きるのが楽しみで、寝るのが寂しかった。

例えそれでも、辛い事が多すぎる人生だ。

このまま優人は眠りたい。

しかし、自分の遺体を見た綾菜の顔を想像するのが怖い。

自分は良いが、綾菜にまで悲しいと思わせる事を優人が綾菜にして良いのだろうか?


答えは・・・。


否!!!!!


綾菜が泣く人生?


「そんなもん、許せるか!!!!!!」

優人は右手に持っていた一虎を力いっぱい振り上げ、一虎の勢いを利用して再び立ち上がる。


ビチビチ!!


一虎の重みに耐えきれず、優人の右腕の筋が悲鳴を上げる。

ブシュゥウウウウウと音を立て、優人の左肩と右足の太ももから激痛と共に血が噴き出る。

爆発で火傷した右腕全体から血が滲み、痛みと痒みが、粉砕骨折した左手にも激痛が走る。

そしてそれ以上に出血し過ぎて血が足りない。


「はぁはぁ・・・。」

優人は立っているだけで気を失いそうなくらい弱っている自分に気付く。

不意に横を見ると麒麟を叩いた優人の槍が地面に突き刺さっていた。

優人はその槍に左手を添え槍の名前を口にする。


「雷槍・・・ラインボルト・・・」


ここは戦場。

死を覚悟するは武人の習わし。

死は誉れにあらず。

ただ、当然の事と思うべし。

しかし、汝、死を許容する事は許され難し咎人也。

己の欲望が為、触れる事許されぬ神の道具を無断使用した罪。

人の所業を越えた奇跡の代償を神に捧げるモノとせよ。


槍を持つ優人にテレパシーが届く。

「はぁはぁ・・・馬面か?」

優人はテレパシーの犯人を呼ぶ。


馬ではない。

竜である。


麒麟はいつもの返しを優人に送る。


「嘘つけ。麒麟だろ?」

優人は微笑みながら麒麟に答える。


貴様が言い出したのだろう?

貴様が女神エルザの神器『遠き心の大鐘』を鳴らしたのだ。

慈愛の女神の神器に手を出し、思いを叶えず死ぬとは何事だ?

貴様は人為らざる奇跡を強引に起こしたのだ。

このまま無責任に死なれては神器の名が落ちる。


「神器・・・。」


地上界の人間は神や悪魔の事を誤解している。

神も悪魔も時として人知を超えた力を授ける。

その力を与える条件が違うだけだ。

神は、奇跡の代償に信仰心、喜び、努力の奉納を求める。

悪魔は、奇跡の代償に信仰心、妬み、憎しみ、苦悩の奉納を求める。

貴様はエルザの神器に手を出してしまったのだ。

愛を司る女神の力を借りた人間が愛を貫き通さず死ぬなど無責任な事をしてはならぬ。


「呪いみたいだな・・・。エルザとやらもなかなかに根に持つタイプなのか?」

と優人。


女神の祝福なんて呪いなのかもしれんな・・・。


「それを神獣が言ってもいいのかよ?」

と優人が笑いながら麒麟に言う。


女神は寛容だ。

なので私がお前の尻を叩きに来たのだ。


麒麟の言葉に優人はふっと笑う。

「じゃあさっきの光景はお前が見せたのか?あれは嘘の映像か?」


いいや。事実だ。

実際に綾菜が大槍の男と対峙していた。

私は貴様に事実を見せただけである。

貴様が勝手に怒り、復活した。

しかし、それで良い。

貴様は死ぬことは許さない。


「そいつが奇跡の代償か?ならこの怪我も治してくれよ・・・。」

優人が麒麟に文句を言う。


これだから人間は気に入らん。

神は見守るのが定め。

人間に直接力を貸すなどあり得ん。


「そういう事言うなよ・・・俺はお前を友達だと思ってるんだから・・・。」

と優人。


ば・・・馬鹿・・・。

まぁ・・・友と言うなら一つ教えてやる。

あの大槍の男は綾菜との戦闘を止め、お前を殺しに向かっている。

気を付けよ。さらばだ。


言うと麒麟のテレパシーが途切れる。

優人は呟く。

「お前は神に仕える獣じゃねぇか。神様面すんなし・・・ツンデレ駄馬が・・・。」


しかし、これが神の呪いか・・・ありがたい。

もう少しで綾菜を悲しませるところだった・・・。


優人は自分につきまとう痛みを感じ、命を感じる。

あの大槍の男はこちらに向かっている。

あいつを潰せば良いだけの話だ。

これで綾菜の危険は下がる。


優人は今さっき自分が斬り捨てたスールムの騎士を見る。


一虎の攻撃力は魅力的だが重すぎてまともに戦えなない。槍で迎え撃つ。

付き合えよ、駄馬。


優人は一虎を背中の鞘にしまい、槍を右手に持ち直す。

周りには数人のスールム兵が優人を囲んでいるが近づいてこない。


こいつら、俺にビビっているな・・・。

恐らく、死んだと思ったらどこからともなく槍が飛んできたんだろうしな・・・。

何人も実力者を倒し、大けがで倒れても立ち上がる俺をスールムの兵士は不死身の化け物とでも思っているのだろう。


「お前ら・・・死ぬ覚悟は出来てるか?」

優人がスールムの兵士に言葉を放つ。

優人の言葉にスールムの兵がざわめく。


「俺は、今、生きる覚悟をした。俺の命は例え死神でもくれてやれない!!!」


バチン!!


優人は雷槍の雷の力を自分の体に入れ、一瞬でスールムの兵士に近づき、槍で一刺しにする。

人間の体は弱い電気信号で動くと聞く。

ならばと思い、試してみたのだ。

体に入れる電気の量もどういう電気の流し方をすれば良いかイマイチわからないが、電気で思い通り動くことは出来た。

しかし、電気量が強すぎて全身の毛細血管が高熱を出すのが分かる。


やはり激痛だ。

それも全身にくる。

本来ならば地面に倒れ込み、身もだえる程の痛み。

それすらも今の優人にはありがたく感じる。

痛みがあるのが生きていると言う何よりの証なのだから。


キィン!!


スールム兵を倒した優人に突然、剣での一撃が襲い掛かって来た。

優人は反射的に槍を剣に当て、受け止める。


ブシュウ!


踏ん張った右足から血が噴き出る。

優人に攻撃してきた騎士はパッと後ろへ飛んで、優人を見る。


「ん?和装の剣士???」

戦場であまり聞くことのないすっとんきょうな声に優人の気が少し緩んだ。

騎士の姿を確認する優人。


ミドルシールドとミドルソードを持つその騎士の鎧の右胸にはジールド・ルーンの国章が彫られている。

顔にも見覚えがある。

厳密には知っている人間の面影がある。


こいつ・・・まさか・・・。


「一つ、質問する。」

騎士は盾を構え、優人に話しかけて来た。

「真城綾菜の好物はなんだ?」


「はぁ?」

変な質問に優人の気がそがれる。


「答えられんか?」

騎士が優人に詰め寄る。


「綾菜の好物?プラム?ミルクティー?それとも、ショートケーキ?イチゴ??

甘い系のものとフルーツ系がとりあえず好きだ。」

くだらない質問に優人も焦るが、騎士の真剣な眼差しについ本気で答える優人。

自分で自分がおかしく感じる。


優人の返答を聞き、騎士は構えた盾を下す。

「水口優人さんですね?真城綾菜さんの彼氏の。」


「あ・・・ああ。」

優人は騎士に答える。


「私はジールド・ルーン聖騎士団副団長を務め、砦の最高責任者のアレスと申します。」

そのアレスと名乗った男は優人に丁寧な挨拶をした。



降り続ける大雨の中、スールムの兵士たちは話をする2人に近づけず、遠くから2人を見張っていた。

その騎士たちの視線を無視し、会話を続ける2人の姿が戦場に存在していた。

1人は優人。

もう1人はアレスである。


「それで、アレスさん。ジールド・ルーンの戦況を教えてくれませんか?」

優人は気を失いそうな自分に鞭を打ち、必死に堪えながらアレスに聞く。


「戦況の説明も良いですが、その怪我、かなりやばそうですね?癒しながら説明します。」

言うとアレスは左腕のガンドレットを外し、優人の左肩にそっと手を添える。


「私は怪我の治癒は専門では無いので応急処置程度しかできませんが、許してください。」

そう言い、アレスは優人に回復の魔法を施す。

アレスが手を置くとみるみる傷口が塞がって行く。

痛みも少しづつ和らぎ、優人もホッとする。


「ところで、アレスさんは一人でここに来てるのか?他の仲間は?」

優人はジールド・ルーンの砦の総責任者が1人でここに来ている事に素朴に疑問を抱く。

本来ならば騎士たちの中心で指示を出すはずの人間である。


「あー・・・。」

優人の質問に詰まるアレス。

何かを隠そうとしているのが見え見えである。

そして、その表情はどちらかと言えば作戦によるものでは無く、ミスをごまかそうとする人間の顔であった。


「お前・・・迷子だな?」

優人の言葉にビクッとするジールド・ルーン聖騎士団副団長。


「大方、戦闘に集中しすぎて、味方を見失ったんだろ?指揮者がいなくて部隊は大丈夫なのか?」

優人の質問に大粒の汗を流しながら回復に専念してみせるアレス。


「ぶ・・・部隊は大丈夫です。みんな、自己の判断で戦闘できるので・・・。」

アレスが優人に答える。


「しかし、指揮者が方向音痴って致命的じゃないか?

迷子になるから砦に引きこもっていたのか?」

優人の性格の悪い質問がアレスに襲い掛かる。


「いや・・・はい。すみません。」

アレスはなんか気持ち小さくなって見える。


優人は口には出さないがアレスの強さは実感していた。

迷子になって1人でこの戦場を抜けて来た事。

敵の兵種はなんだか分からないが、民兵にしろ、騎士にしろ、傭兵にしろ複数人を相手取るのは至難の業であることは自分が良く知っている。

そして、アレスの装備にもその強さが現れている。

盾には多少の傷がついているが、鎧は無傷なのである。

これは敵の攻撃を全て盾で受け止めて来たことを物語っている。

そして、盾が傷つくほどの戦闘をしてきているのに剣に刃こぼれが無い事は刃当てが的確である事も分かる。


アレスにはシンの面影がある。

シンの遺伝子を持つなら強くても驚くことは無いが、強さの質がシンとは別物である事に底知れぬ恐ろしさを感じる。

シンの強さは基礎能力。身体能力が人間離れしている事にあるが、アレスは技術が高いのである。

この技術にシンの人間離れした身体能力が加われば間違いなく最強の戦闘マシーンになる。

優人はアレスを見ながら一度手合わせしてみたいと感じていた。



「騎士たちは今、どうしてる?どんな指示を出した?」

真面目な顔に戻し、優人はアレスに聞く。


「敵陣突入を指示しています。後、別動隊で西の森の援軍の確認とあなたの救助の部隊を出してます。」

アレスは優人に真剣に答える。


「別動隊?」

優人はアレスの返答に出た別動隊が気になった。


「はい。そこに綾菜さんとジハドの司祭もいます。じきに来ると思いますが・・・。」

アレスが優人に説明をする。


「西の森はガルーダ山賊団だ。お前たちの救出作戦に乗っかってくれた。」

優人がアレスに答える。


「ガルーダさんが!?」

優人の言葉にアレスが驚き、回復の手を止め、優人の顔を見る。


「ああ。」

優人の言葉を聞き、アレスの機嫌が良くなるのが分かる。


「ガルーダさんが・・・これは頼もしい・・・。」

嬉しそうにするアレスに優人が話を続ける。


「しかし、本陣突入は一端やめてくれないか?」


「え?」

優人の言葉にアレスの手がまた止まる。


「西の森に撤退をして欲しいんだ。」

優人が説明をアレスにする。


「それは出来ません。俺たちは国を守る騎士です。砦を敵に明け渡すなんて・・・。」

アレスの顔が険しくなる。


「砦は明け渡しはしない。一端ここを離れるだけだ。」

優人がアレスに言う。


「あの砦は難攻不落の砦ですよ?奪われたら取り返すのにどれだけの犠牲を払うか・・・。」

アレスが優人に答える。

中々意思が固く、折れる気配がない。


「犠牲は払わない。このまま戦っても数の差がでかすぎる事位分かるだろ?」

優人が懲りずにアレスの説得をする。


「俺たちは戦います。あなただって1人で1000人近くの敵兵を倒してるじゃないですか!!数の差は何とかできます!!」

アレスが答える。


「考えろ!!俺のは奇襲だ!!!戦闘準備が整った敵兵と正面からぶつかっての結果じゃない!!

それにここで戦えば騎士を犬死にさせるだけなんだよ!!

全滅して砦を奪われるくらいなら、砦をなくして敵兵8000人を全滅させることの方が国の為じゃないのか!?」

つい、優人も怒鳴る。


「ここの敵を全滅させるなんて出来るわけないでしょ!?」

アレスも怒り出す。

優人はアレスの胸倉を掴み、アレスにおでこをこすりつけて言う。


「それをやるって言ってるんだよ・・・。

ここで死ぬかもしれない戦闘を続けるのはお前ら騎士のエゴだ。

騎士のエゴで国を亡ぼすつもりか?

ここは引け。絶対に国を守って見せるから。今は協力するんだ!!!」

優人の真剣な表情にアレスも黙り、そして優人の傷の手当を再開する。


「できるんですか?そんな事が・・・。」

アレスが優人と目を合わせずに口を開く。


「出来る。その証拠に西の森の川を渡れるように細工してある。

川を渡ったら、そこで動ける騎士だけで追いかけてくるスールム兵を迎え撃ってくれ。

大丈夫だから。絶対に俺を信じたお前を裏切らない。英断をしてくれ・・・。」

優人の言葉にアレスは黙ってうなづく。


頑固なアレスが頷く姿を見て、優人は思った。

騎士は国を守る為に砦を守る。

砦を守る事が国を守る事だと信じて疑っていない。

にも関わらず、アレスはうなづいたのだ。

このアレスのうなづきは決して軽いものでは無い。

断腸の思いで、それでも出来る限りの被害を削る為に見ず知らずの流れの剣士に賛同したのだ。


辛い決断だろうな・・・。


優人はアレスの心境を肌で感じ、必ずここにいる兵を殲滅させると心に誓う。


ドンッ!!


優人が回復をしているアレスを眺めていたら急にアレスが優人を突き飛ばした。


「なっ???」

突然突き飛ばされ、姿勢を崩すが、優人はすぐに身を立て直し、アレスを見る。

その瞬間、黒い大きな影がアレスと優人の間を走り抜けた。

優人とアレスは同時に黒い影の進む先を見る。


馬に乗った大槍の男・・・。


優人はこの男を知っている。

さきほど夢の中で綾菜にあの槍を振り上げていた男だ。


「てめぇ・・・。」

優人の頭に血が上るのが自分でも分かる。

さっきは決着を付けられなかった相手である。


「貴様が優人か?」

大槍の男は馬に乗ったまま優人に話しかける。


「さっき綾菜と戦ってたな?あの後どうした?」

優人は大男を睨みつけ、威圧するように口を開く。


「???」

優人の質問に大槍の男は一瞬戸惑うがすぐに理解をする。


「先ほど、俺の攻撃を受け止めたのは貴様か?」

大槍の男は優人に質問を変えて来た。


「そうだ。綾菜はあの後どうなった?」

優人が聞く。


「無事だ。止めを刺そうとしたが、粘りやがってな・・・。

時間が掛かりそうな所に貴様がカルマとシュダムを打ち取ったと報告が来た。

わが軍の士気が格段に落ち始めているのでな。

そろそろ貴様にご退場願おうと思い、戦闘を中断してここまで来た。」

大槍の男はゆっくりと優人に説明をする。


その返答を聞き、優人は綾菜の無事に胸を撫で下ろすと共に一つの警戒心が生まれる。

この状況で心理戦に持ち込まないこの男の不気味さに気付いたのである。

この状況では綾菜を殺したと嘘をつき、優人を動揺させる方が得策である。

挑発をする訳でもなく、恐らく事実とだろう事を答える男。

これは心理戦をする必要すらなく優人を打ち取る自信があるからなのだろう。

そう考えるとなおさら優人の腹が立つ。


「なるほど。お前はそんなに悪いやつではなさそうだな?

確かに俺が優人だ。さっきの決着を付けようぜ。」

言うと優人は槍を背中に納め、一虎を抜く。


「私はシュラである。恐らくはこの戦いがこの戦争の命運を分かつであろう。」

シュラと名乗りを上げた男も大槍を構える。


「ちょっと待て!!」

睨みあう2人の間に割って入って来たのはアレスである。


「あん?」

優人がアレスを睨む。


「優人。言ったはずです。優人の怪我は応急処置だと。ここは俺に任せて下がってください。」

アレスが優人の前にぐいっと出て来て言う。


「ふざけるな!!こいつは俺の得物だ!!綾菜を傷つけた!!俺がぶっ殺す!!」

優人がアレスに怒鳴る。


「あなたはすでに幹部を2人も打ち取っているでしょう?

ジールド・ルーンでは武勲を1人に渡し過ぎないと言うルールがあるんです。

下がってて下さい!!」

優人にアレスも怒鳴り返す。


「てめぇ・・・まずお前から片付けてやろうか?」

普段温厚で冷静を装う優人だが、らしくなく気が荒れている。

これは綾菜を攻撃したシュラに対する怒りである。

それは優人自身分かっている。

しかし、ここはどうしても譲りたくなかった。


アレスはシンの息子である。

シンはアレスの身を案じながらも、優人にこの砦を託したのである。

優人はシンと約束している。

『アレスを助ける。』と。

そして今、目の前にいる敵は強敵である。

実力があるのは分かるがアレスとぶつけさせてもしもの事があった時、シンに顔見せが出来ないのである。


「アレスでも優人でもどちらからでも良い。どっちも我が国の天敵である事には変わりない。」

シュラが揉める2人の仲介に出る。


「ほら?俺に任せろよ。」

優人がアレスに言う。


「今、どっちでも良いって言ったでしょ?俺が行きますよ。」

アレスも譲らない。


ここで再び優人とアレスが睨み合う。


ドンッ!!


睨み合う優人にシュラが馬で突進してきた。

優人はそれを難なくかわす。


「アレス!!作戦を譲ってくれた礼だ!!こいつはくれてやるよ!!」

優人はシュラの突進をかわすと一虎を持ち替え、シュラに突進する。


ズバァッ!!


馬ごと振り返ろうとするシュラの馬の首が次の瞬間吹っ飛ぶ。


ブルッブルッ!


優人に首を切断された馬は少し暴れ、そして地面にその大きな体を落とす。

シュラはそのタイミングで馬から飛び降りた。

優人の一撃にきょとんとする2人。

アレスとシュラが2人で優人を見る。

馬を首ごと切断するのがさぞかし珍しかったのであろう。

馬の首は太く、筋肉も張っていて、斬ろうと思って斬れるモノではないのだ。

そもそも普通の武器では刃を当てる事すらも難しい。

普通の武器では・・・。


しかし、今優人が持っている一虎は野太刀と言い、戦国時代に使われた大剣の種類である。

豊臣秀吉が朝鮮出兵の時に朝鮮人が日本刀を指して名付けた名が『斬馬刀』。

野太刀で豊臣秀吉の兵は馬を切り捨てたのだろう。

この斬馬刀と野太刀は実は実は同じ品物であると優人は思っている。

そんな野太刀だからこそ、馬の首を吹っ飛ばす芸当を可能にしたのである。


優人は唖然として見る2人を無視して、一虎の血ぶりをし、背中の鞘に納刀する。

「アレス。任せるぞ。けど、あまりにも見苦しかったら俺が取るからな。」


優人の言葉に黙ってうなづくアレス。

シュラも後ろへ下がる優人を追うことはせず、アレスに標的を変えてくれた。

優人は近くにある木に寄りかかり、そのまま座り込んだ。



ザーッと降り続く雨の中、アレスとシュラは睨み合う。

雨の音がうるさく降り続いているが2人の集中力は乱れる事は無い。

2人ともかなりの手練れである事が木に寄りかかり見ている優人にも伝わる。


優人はアレスの戦い方に興味があった。

盾の使い方を優人は知らないのである。

1度シンが使って見せたが、あれは使ったうちには入らない。

2人を見守る優人も緊張をする。


自分であればこういう時、シュラの呼吸を読み、隙をついて接近する。


ピクッ


優人がそう思った瞬間に、シュラが振り下ろした槍を上にふり上げようと動き出した。


ガキィン!


その瞬間、アレスがシュラに接近し、ミドルシールドをシュラの持つ槍の真上に叩き付ける。


あそこは・・・。


アレスがシュラの上に盾を置いた場所。

槍を持つ腕のすぐ上。

そこはシュラの力が一番伝わりづらい槍の柄の部分である。


「ぐぐ・・・。」

体格を見て分かるが、シュラはどう見てもパワーファイターである。

力に自信がある戦士なのだ。

そのシュラが槍を持ち上げられず、顔を引きつらせている。

アレスは槍の上から体重を乗せて槍を押さえつけているのだ。

そして、ゆっくりと視線をシュラに向けるアレスはゆっくりとミドルソードをシュラに向ける。


アレスは盾をどかすと同時にシュラの喉元に突きを入れる。

シュラは、槍を捨て、左後方に飛んでの回避だな・・・。


2人の位置関係を見て、優人は2人の次の手を予測する。

優人の予測通り、アレスは槍を抑える盾の力を抜き、ミドルソードで突きを打つ。

シュラは槍を地面に滑らせ、右に振り払いながら左後方に飛び避ける。


槍を捨てない!?距離を取って、シュラの突きが入る!!


シュラの行動を見て、優人が焦る。

しかし、アレスの次の動きに優人は愕然とする。

突きを放ち、そのままシュラの避けた左側に切っ先を払ったのである。


ブシュッ!


シュラの右ほほから血が流れだす。

そのアレスの払いに警戒をし、シュラの突きが来ない。

アレスはシュラから距離を置き、シュラの表情を確認する。


ミドルソード・・・。

剣のタイプは優人の居合刀や野太刀と言った曲刀に対し、直剣に当たる。

優人の持つ曲刀は斬りに特化し、突きは得意ではない。

突き技は今でこそ優人の得意技の1つになっているが、昔、どうしても上手くできず、使いこなすのに苦労をした。

得意技として使う今でも、突きの後の動きは慎重である。

それに対し、直剣は突きに特化し、斬りが苦手な武器である。

しかし、斬りが出来ないわけではない。

突きにストレスが無い分、アレスは突き後の斬りに集中していたのである。

シュラの逃げる方向も盾で押さえつけた時点で既に予測し、そこに追撃で斬る事を考えて・・・。


強い・・・。


アレスの動き、動作、読み、そして筋力と得物。

全てにおいて理に適っている。

2手、3手先まで読んでの動きをするアレスを優人ならどう戦うか?

スールム国で最強と言われたシュラを圧倒するアレスに優人の意識は向けられていた。


次の瞬間動き出したのはアレス。

ミドルシールドを前方に出してのシールドアタックだ。

防御しながらの突進である。


ガンッ!


そのアレスの盾を、シュラは槍の柄で受け止める。

シュラとアレスの間にミドルシールドが目前にあり、お互いが見えない状態になる。

しかし、横から見る優人には2人にある歴然の差がはっきりと分かる。

槍の柄で盾を受け止めるシュラ。ミドルソードを自由に動かせる体勢のアレス。

盾がどいた瞬間。アレスの突きがシュラを襲う。


自分ならどうするか?

優人はあの状況の自分の行動を考える。

盾を刀で抑えたまま横に移動し、盾を滑らせ、アレスの足を狙う。

しかし、シュラの得物は槍。

槍で優人のような動きはできない。

そもそも優人はアレスのシールドアタックを受け止めないだろう。

力に差がある事を優人は確信しているのだから。

回避して攻撃に移る。

しかし、シュラは力に自信があるタイプの戦士である。

あわよくばアレスの盾を逆に弾いて攻撃をする事を考えていたのか?

もしくは突然のアレスの攻撃でつい受け止めてしまったのか?

いずれにせよ、戦闘に置いて選択肢が多いと言うのは時に判断を遅らせるものなのであろうとシュラを見て思う。

実は非力な自分の強みはそういう所なのかと2人を見て少し思った。


シュラの表情が苦悩に歪む。

さっきの攻撃でアレスは突きの直後にすぐに斬りに転じる事の出来る戦士だと分かった。

どこによけても攻撃の体制が整っているだろうアレス相手に逃げ切るのは難しい。

かと言って、力で盾ごとアレスを弾いたとして、そのタイミングで盾をどかされたら攻撃をかわす事が出来ない。

この時点でシュラに行動がかなり制限されているのだ。


「負けを認めるか?」

力比べをしながらアレスがシュラに話掛ける。


馬鹿!!


口を開くアレスに優人がツッコミ入れ、背中に背負っていた槍を抜き、身構える。

この状況で口を開くと力が緩む。

そして、相手の返事を聞くことに意識が移る。

案の定、アレスが口を開いたタイミングでシュラは槍の力を抜き、横に逃れる。

急の事で今度はアレスの体が流れる。

体勢の乱れているアレスに槍を持ち替え、攻撃に移るシュラ。


バチン!!

ドスッ!!


「ぐ・・・。」

攻撃の体制を整えたまま、優人の槍に串刺しにされ、動きを止めるシュラ。

優人は槍を抜くとすぐさまシュラに突進したのであった。

シュラの視線が優人に移る。


「ここは戦場だ。悪く思うなよ?」

優人はシュラの目を見ながら言う。


「く・・・。」

何かを言いかけるシュラの口からは言葉ではなく血が出る。

優人は槍を横に振り払い、シュラを地面に投げ捨てる。

優人は地面に倒れるシュラを見下ろす。

シュラは優人を少し睨み返し、そのまま事切れる。


その一部始終をバツが悪そうに見るアレス。

「お前は戦闘に置いて全てが揃っている。うらやましい程に戦士だよ。

しかし、最後の、あれは素人でもしないミスだ。

殺し合いの戦闘で、甘さを前面に出すのは弱点でしかないぞ。」

優人はアレスの視線に気づき、シュラをじっと見つめながらアレスに言葉を放つ。


「すまなかった。俺の甘さだ。」

アレスは俯きながら優人に詫びを入れる。


「でも・・・無事でよかったよ。」

優人はアレスに笑顔を見せ、安心させる。


周りを見ると一か所を除き、シュラの死に静まり返っている。

これでスールムの幹部が3人沈んだ。

のこるはソイルと言うこの部隊の総大将と側近のガーランドのみである。

しかし、一か所が異様にやかましい。

何か他の部隊と戦闘をしているのだろうか?


「・・・ぅく~ん!!!!」

騒がしい部隊の奥の方から聞き覚えのある女の声が聞こえる。

優人はその騒がしい方向に目をやる。


「なぁく~ん!!!」

次ははっきりと聞こえる。

綾菜の声だ。

10年ぶりに聞く恋人の声。

聞きなれた愛しき綾菜の元気な声。

優人の心が、体が震えるのが自分で分かる。


「綾菜・・・綾菜ぁぁぁあああああああ!!!!」

意識をした訳ではない。

何か声を出さなければ心が押しつぶされそうになるので声を出した。

その声が自然と綾菜の名を呼んだのである。


スールムの兵士の中に綾菜の姿が一瞬見えると優人は走り出す。

体の痛みも、疲れも全て忘れて綾菜の方へ向かって走り出す。

優人の前を塞ぐ敵兵はどのように打ち取ったのか自分でも覚えていない。

優人の視界には綾菜しか見えていないのである。


ドンドン近づく綾菜の姿。

雨で濡れ、泥にまみれている。

それでも、綾菜の瞳はひときわ強く輝き、優人から目を逸らさない。

長い籠城で栄養も足りていないはずである。

大軍との戦闘で疲労もしているだろう。

シュラとの戦闘では殺され損ねていた。

その綾菜が元気に優人の方へ走ってくる。

今、優人の顔を濡らすのは雨か涙か自分でも分からない。

しかし、雨に感謝する。

戦場で涙を流す戦士ほどみっともないものはないのだから。


ドンッ!!


綾菜が激しく優人に飛び込んでくる。

両手を優人の首に回し優人の頬に自分の頬をくっつける。

雨で冷えたのか、もともと冷え性の綾菜の体によるものか、心地よい冷たさが優人の体に伝わる。

優人は綾菜の細い腰に手を回し、もう片方の手で綾菜の頭を撫でる。


綾菜は優人の首を抱きしめる手をほどくと、今度は優人の胴着に顔をうずめ、優人の臭いの確認をする。

地上界で優人が出張で3日以上綾菜と会えなかった時に綾菜が決まってする仕草だ。

綾菜は臭いフェチだと自分で豪語するくらい臭いを嗅ぐ。


「汗と血で臭い・・・。」

綾菜が優人の胴着に顔をうずめながら口を開く。

10年ぶりの婚約者に放った第一声がこれである。

この綾菜らしい辛辣な挨拶に優人はなぜかほっとする。


「ここは戦場だ。当たり前だろう?」

優人は優しく綾菜に答える。


「私のゆぅくんはこんなの楽勝だもん。汗も血も流さないよ?」

手厳しい綾菜の返答に優人は「くっ。」笑いをこらえる。


「お前のゆぅくんはそんなに凄くない。」

優人の返答に今度は綾菜が「くっ。」と笑いをこらえ、そして優人の顔を見上げる。


「更けたね?」

綾菜は傷つけないと再会すらできんのか?と優人は思いながら綾菜に言葉を返す。


「何年俺を放置してたと思ってるんだよ?」

優人の返答に綾菜は再び優人の胴着に顔をうずめる。


「ごめんなさい。」


「許さねぇよ。もう2度と俺から離れるなよ。」

優人は優しく綾菜に言う。

そして、少しの沈黙の後、綾菜が答える。


「うん。」


たったの10年だ。

たったの10年、地上界で死別した最愛の彼女を思い、苦しみ続けた。

何度か自殺をも考えた事もあった。

結婚と言う夢には幻滅させられ、将来と言う希望は絶望へと変わった。

この世には苦しみしかない。

少しの喜びは、苦しみをより大きなものにするためのいたづらである。

世界は残酷だと思い続けて来た。


この戦場でも優人は何度も失望した。

しかし、今、優人の腕の中にはじゃじゃ馬な奇跡の象徴が顔をうずめている。

綾菜の頭に手を置きながら優人は思う。


失望と幻滅の先には奇跡しか存在し得ないのだと。

本当の不幸に陥った者にはそれ以上の不幸は存在しない。

もしそれが存在するのであれば、自分はまだ、不幸のどん底にいる訳ではないのだから・・・。

そして不幸のどん底にいるならば、その先にはどん底から這い上がる以外何も無い。

それを人は奇跡だと言うのだろう。

だとしたら奇跡なども存在しないのである。

当たり前の事なのだから。


優人は今、綾菜を抱いている。

これをもし奇跡だと言うのであれば、この世に存在するすべての恋人たちは毎日、当たり前のように奇跡を起こしている。

当たり前の奇跡。

こう考えると、奇跡ほど安いものは存在していない気すらをもする。


いずれにせよ、10年重なる事の無かった影が空の上の戦場にて再び一つに重なった。



優人と綾菜の距離・・・0。




「臭いけど、ゆぅ君から離れないよ。」

少し間を置いて綾菜が声を出す。


「・・・へ?」

突然の綾菜の言葉に優人が聞き返す。


「汗と血で臭いけど、ゆぅ君が離れるなって言うから、離れない。

こういうの変態プレイっていうんだよね?」

綾菜が優人にもう一度言う。


「ちょっと待って。そんなに臭いの?俺?」

優人は綾菜に聞く。


「うん。臭死にするかも知れないけど離れない!!」

今度は綾菜が力強く言う。


「い・・・いや、ちょっと待て綾菜さん。一端離れようか?」

優人が綾菜に言う。


「無理。ちょっとも待てない。」

綾菜が答える。


「いや。分かった!許すから、離れようか?」

優人が焦り出す。


「ダメッ!こんなに大好きななぁ君を10年も放置したのに許さないで!!

私は例え臭死にしようとも離れないから!!」


臭死にってなんだよ・・・。


「いや・・・綾菜さん?俺が悪かったから!

ちょっとかっこつけて、もう離れるなとか言っちゃっただけだから!!

なんか臭いとか言われて恥ずかしくなってきた!!本当にごめんなさい!!勘弁してください!!!」

優人の悲鳴にも似た声が戦場にこだまする。


かくして、感動の再開のはずが綾菜の手により音も無く崩れ去ったのであった・・・。

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