第8話 3年後
読んでいて方言が出ていると気づいたときに教えていただけるとうれしいです。自分では注意しているつもりですが普段使っている言葉なのでわからないことがあるので……
シュッ!
風を切る音とともにおれの射た矢が獲物にむかう。
矢は狙い通りドゥドゥルバードの頭に刺さり絶命させる。俺はそれを確認し、その場に向かい血抜きを行う。
「こんなもんか…」
これで4羽目だ。鳥はこれで十分だろう。
そう考えて家路につこうとする。
フィーネが初等学校に行ってもう3年以上がたつ。あれから俺は家で魔法の練習をしたり、たまに家にくるレオニダスさんに魔法を使わない戦い方を教わったりしている。あのころに比べいろいろな魔法を使えるようになった。出来始めの頃はいろいろイメージして、それが魔法となって現実になるのが楽しかった。
ある程度レオニダスさんに訓練してもらった頃から森で食料用の動物を狩るようになった。クリスさんは最初はいい顔をしなかったけれど、最近はもう諦めたようで、何もいわなくなった。
フィーネは毎年夏と冬と春に帰ってくる。友達をちゃんと作れるかおれもクリスさんもどきどきしていたが、杞憂だったようで毎回楽しそうに学校のことを話してくれる。
……まあ帰ってくるたびに新しい魔法を見せてたからそのたびに不満そうにしてたけど。
季節は冬。今日はフィーネが帰ってくる日だ。レオニダスさんも来るらしいのでいつもより多めにとってくるよう頼まれた。
森に入る前に野菜も採ったためあとはこの鳥を持って帰れば調理に入れる。
「じゃあかえ……?!」
探知に反応がある。これは…
グルルルル
グレイウルフの群れか
そう判断すると同時に足元から魔力を見つけたやつらの足元に流していく。
「……ランドホーン」
ザクッ!
周りから生物を貫いた時独特の音がし、鉄の臭いが立ち込める。それを、風を起こして適当に霧散させる。
それから反応がないことを確認して家路につく。
家が見えてくると庭に人影があるのがみえる。あちらからもこっちが見えたようで、こちらにむかって走ってくる。
「おかえり、おにいちゃん!」
そう言って飛び込んでくるのはフィーネだ。
「ただいま、フィーネ。帰ってたんだ」
「うん、さっきついたとこ。レオニダスさんもきてるよ」
「じゃあ、帰って挨拶しないとな。ほら、いくよ」
「はーい」
フィーネの手をとって家の中に入る。
「帰ったか、リオン。お邪魔してるよ」
「おかえりー」
「いらっしゃい、レオニダスさん。クリスさん、これ今日のです」
「ありがとう。少ししたらご飯にしましょう」
夕食時
「学校はどうなんだ、フィーネ?」
「んー。特に新しいことはないかな。ちゃんと勉強もしてるし魔法の練習もしてるよ」
「精霊との調子はどうなの?」
「まあまあかなぁ。前に比べると結構長い間ルーをよべるようになったよ」
ルーというのは彼女の精霊の名前だ。
「成長著しいのう。リオン、負けておれんぞ?」
「そうですね。もっと練習しないと……」
「おにいちゃん私よりうまいじゃん。私ルーに手伝ってもらってもおにいちゃんほどうまく魔力扱える気がしないよ」
「魔力扱うだけじゃ…ね」
「ふふ。けどリオン?あなたちゃんと体術もしてるじゃない。そこはフィーネよりも上よ、確実に」
「そうだよね、ママ。うらやましいよ、レオニダスさんに教われるなんて。学校の先生は体術あんまし教えてくれないもん」
「厳しいけどな、この人の鍛錬」
「ハハハハハ!まあ、まだフィーネたちが本格的に体術を習うのははやいのう。まだ初等学校だし」
「けど私次は魔法学校だから体術あんまりしないんじゃない?」
「まあのう…魔法学校だとどうしても魔法の方に重きをおくからのう。そこから騎士団に入ってくるやつらの訓練は大変だったわい」
「……つーかレオニダスさん?フィーネと俺そんなに年かわらないんですが?」
「お前さんは近接戦闘もするじゃろ?それに将来は必ず役にたつものだ」
「それは否定できないわね。体は動かせるようになってるほうがお得よ」
「それはそうなんですけど…」
「で、フィーネ。他にはなにかあったのかい」
「あ、そうそう。魔法学校に挨拶に行ったの。魔法学校って校長先生に会ったよ」
「今の校長というと……」
「ナウム・カンブレンね。確か」
「そうそうその人。少しお話したんだけどすごく優しそうな人だったよ」
「カンブレンか。やつは人徳者だわい。そうか、校長になっとるのか」
「お知り合いなんですか?」
「昔、少しの」
そう言って遠くを見るレオニダスさん。過去に思いをはせているのだろうか……
「私が学校に通ってた頃から教職をとっておられたわ。私に魔法を教えてくれた恩師よ」
クリスさんがいう。
「そんなにすごい人なんですか?」
「ええ。今でも国内有数の魔術師よ」
「へぇ」
そこまでの人なのか。
「なんども宮廷魔術師にならないかって誘いがあるほどよ。本人はその気はないようだけど」
「それは……すごい人ですね」
そうとしか言えないな
「フィーネはそんなひととお話したんだな」
「うん。いろいろお話したよ。そうそう、おにいちゃんの話もしたの。先生おにいちゃんに会ってみたいって言ってたよ」
「そうか」
すごくキラキラした目で見てくるのを軽く流す。まだ10歳の子供だし社交辞令というものを知らないのだろう。
「……フィーネももうすぐ高等学校にいくのか。はやかったな」
「ほんとにね。契約したのがついこないだのように思えるわ」
「うん。…おにいちゃん」
「ん?」
「魔法学校、一緒にいかない?」
「はい?」
またいきなり変なことを言い出すな。
「初等学校の友達にもおにいちゃんのこと話したらみんな会いたいって言うんだよ」
「はは。まあ機会があればな」
「学校にいけば機会なんて作んなくてもいいじゃん。いこうよ〜」
「だいたい行きたいって思っていけるところじゃないだろ、フィーネの学校は」
契約者が通う王立魔法学校と、同じく王都にある王立騎士養成学校は王立なだけあって設備がいい。そのため契約者じゃなくとも、魔術師や騎士になりたいという子供には人気の学校で、当然倍率も高い。特に魔法学校の方は契約できなかった貴族のこどもも普通に受験するため難易度が高いのだ。
「おにいちゃんならいけるでしょ?だいたいあれだけうまく魔法が使えるのにうからないとか考えられないよ」
「んー……ほら、試験てそれだけじゃないから」
「……手をぬかなかったら問題なくいけるでしょ?」
ジト目で睨んでくるフィーネ。そんな俺達のやり取りをクリスさんもレオニダスさんも微笑ましそうに見ている。
「ふふふ。でも確かに、リオンならうかりそうよね」
「たしかにのう」
「ちょっ、二人まで何を」
「だってあなたの年でそこまで魔法使える人、なかなかいないわよ?」
「う……」
「じゃあ決定ね。おにいちゃん試験がんばって」
「いや、ちょっとまてよ。まだうけるなんて……」
「明日先生がきて、そのときに試験についても教えてくれるって言ってたよ」
……………はい?
「ちょっとまとうか、フィーネ?」
「ん?どうかした?」
「気のせいかな。今、明日先生がくるって言わなかったか?」
「うん。言ったよ。カンブレン先生が明日くるの」
「……なんのために?」
「だから〜おにいちゃんに試験の説明をしにくるの」
フィーネがあまりにも普通に言うのでおれは自分の頭がおかしくなったのかと疑ってしまう。
視線を大人二人にむけると、二人とも話についていけてないかのように呆然としていた。
「………ねえ、フィーネ?」
復活したクリスさんが口を開く。
「本当にカンブレン先生がくるの?」
「うん!」
元気のいい返事だなぁ………
なかば現実逃避しだした俺を尻目に二人が話をつづける。
「……はあ………。リオン、諦めなさい。もう手遅れよ。まったくこの子は……」
「へへへ。」
はぁ、と溜息をはくクリスさん。
「……まあがんばれよ」
そう言ってレオニダスさんが肩に手をおいてくる。
………逃げ道はないのか…?
上流貴族には騎士養成学校は不人気です。理由として授業中の鍛練が厳しいことや騎士になる人が少ないあげられます。
そのため魔法を使える貴族の子供は基本的には魔法学校に通います。