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何故か彼女はついて来る  作者: 坂津狂鬼
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16/28

屋上

タ、イ、ト、ル、な、ん、か、に、意、味、は、無、い

蓮野景は屋上にいた。

(……鍵穴ぶっ壊したけど、まあバレなきゃ大丈夫か…………〉

片手にはビニール袋を持ち、今からここで昼食を食おうとしているわけだ。

フェンスに体重を預けるように凭れ込み、街の風景を眺める。

しばらく風景を眺めた後、袋からパンを取り出そうとし、

「早まっちゃダメですぅー!!」

不意に後方からきた衝撃に咳き込む。

「けほっけほっ……何すんだ、黒笠」

「ダメです蓮野君、早まっちゃ! なにか悩み事が有るなら、あたしが聞きますからぁー!」

「離せよ、黒笠。暑苦しい」

腰に回された灯澄の腕をどうにか振り解いてから何を勘違いしたかを聞こうと思った景。

しかし景はよく分からないが自殺しようとしていたと思っている灯澄からしてみれば、それは勘違いを増大させるだけの行動であって……。

「絶対にダメですぅー! 離しませーん!!」

「いい加減にしろよ、黒笠」



 ~10分後~


「す、すいません! あたしはてっきり蓮野君がそのあの自ら命を断とうなんて考えてしまったのだと……」

「分かればいい」

フェンスの近くに腰を下ろし、コンビニおにぎりを頬張りながら景は言う。

灯澄は先程からペコペコと頭を下げるばかりで自分の昼食に手をつけていない。

「……それで黒笠。お前は何で屋上に?」

「あぁ、その、えぇーと…………」

「時間はある。弁当でも食いながら話せよ」

「そ、そうですね」

灯澄は景の近くに腰を下ろし、弁当を開き、食べ始める。

しばらく互いに口を交わさなかったが、最初に話し掛けてきたのは灯澄だった。

「あ、あの…………蓮野君は、あたしの事がその……嫌いですか?」

「何で?」

「い、いえ……その、蓮野君はあたしとお喋りしてる時、顔が暗いですから」

「そうか? いつもながらのポーカーフェイスだと思うけど」

「なんとなく、ですけど暗いですよ。いっつも」

しょんぼりとした様子で灯澄は言う。

景はそんな灯澄を見て、少しばかり言葉を選んだ後、

「そうだな。黒笠の事が嫌いだ」

「ッ! そ、そうなんです……か…………」

「まあ、嘘だが」

「ほ、本当ですか?」

「いや嘘だ」

「ど、どっちなんですか!? 蓮野君、本当の事を言ってください」

「本当の事を言うと、別に黒笠なんて眼中に無かった。存在すら知らんかったよ。まったくもって、どうでもいい」

「一番酷いです!」

今の灯澄は遊び甲斐があると景は少し思った後、今度は真面目に答える事にした。

「前まで黒笠は、蓮野君じゃなくて景って呼んできてたからな。本当に記憶が無くなってしまったんだなーって」

そして記憶を消したのが自分なんだという罪悪感に苛まれる。多分、その多少の罪悪感が自分の表情を暗くしてしまっていたんだ。

景の独断であるが、それが本当の理由であろう。

それしか思い当たる節が無かった、というのもまた事実だ。

「そ、そうですか………やっぱり、あたしのせいでしたか」

「やっぱり?」

「蓮野く……か、かかか景が―――」

「無理して名前で呼ぼうとしなくていいぞ」

「うぅ……すいません。で、その蓮野君が最初にあたしの病室に来た時があったじゃないですか」

「ああ、あったな」

ビニール袋の中に入っていた物全てを食い終わってしまった景は、灯澄へ視線を向けながら続きを待つ。

「その時にあたし、無神経な事を言っちゃったじゃないですか…………その……カナシイヒトって」

「ああ、言われたな」

「それがその……原因で、蓮野君はあたしの事が嫌いなのかなぁーって思ったんですけど……」

「いや、実際言われた時に傷付いたし、今でも死にそうなくらい悩んでいる」

「そ、そうなんですか!? そ、それは本当に失礼な事を……すいませんでした!」

「いや別にいいよ。多分、言われた理由もわかったし」

景の言葉に灯澄は眉をひそめたが、深くは問わなかった。

(結局……記憶を消した事を本人の前で気にしてるってわけか…………気にするんなら最初からやらなければよかったのに)

あの状況なら、べつに記憶を消す以外の選択肢もあった。

しかし、あそこまで人の精神をすぐに簡単に壊してしまうような記憶は消してしまった方が楽だろう。本人のためにも。

景なりの他人への優しさが、景本人を苛ませる。

「ともかく黒笠の事は好きでも嫌いでもない。というか眼中にない。どうでもいい存在だから安心しろ」

「それは安心していいんですか!? むしろ嫌いと言われた方がマシな気がします!」

「なら嫌いだ。黒笠の事は嫌い。これで満足か?」

「うぅ…………蓮野君は、酷い人なんですね……」

「違う。カナシイヒト、なんだろ?」

「本当に酷いですよ! そこまであたしを苛めて何が楽しいんですか!?」

「イジメじゃない。自意識過剰っていうんだぞ、お前みたいなの」

「うぅ……もう、あたしも蓮野君のこと嫌いです!」

そう言って、灯澄はそっぽを向きながら弁当を貪り始めた。自棄食いだろうか。

その後、しばらく無言の時間が続いたがそれを破ったのは景だった。

しかし景の口から出た言葉は上っ面の謝罪ではなく、

「好きだよ黒笠―――」

「…………ふぇ!?」

「―――嘘だけどな」

虚偽妄言の上っ面な告白だった。

マンネリしてるんだけど、次話は動き出します

多分、いや絶対……だといいなぁー

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