襲撃
タイトルなんかに意味は無い
同様に、サブタイなんかに意味は無い
景は別に、危険を察知する能力も何かを視れる目も特殊な訓練もしていないような一般人だ。
ただ後ろから音がしたため、振り返った。
そうしたら、空中にいくつも手榴弾があった。
(…………はっ!? ふざけんな、馬鹿か!!)
何故、手榴弾がそこに有るのか理由は知っていた。しかしあまりにもバカバカしい。
(狙うんなら、本人狙えよ………っ!!)
考えるより先に体が動き出していた。
正面を向き、立ち去ろうとする黒笠に抱き着き、
「えっ! かげかかか景、急にどうし―――」
そのまま力任せに半回転。灯澄を盾にするようにして景はその身を隠した。
直後、爆風が二人を襲った。
灯澄の陰に隠れていた為か、景は少し強い風に当てられ、頬に何かが掠る程度で済んだ。
自分を対象にした攻撃の対象をすり替える能力の才能者である灯澄にはかすり傷一つ付いていない。当然の結果である。そうでなければ景がわざわざ盾にした意味が無い。
「ちょっと酷いよ景! あたしドキドキしたのに!」
爆風が一段落したところで、さっそく灯澄が景の行動にケチをつけてきた。
「助かったよ、黒笠。お前がいなかったら大怪我してただろうし、そもそもお前がいなければ巻き込まれることも無かったよ」
景は手榴弾の原因が灯澄であると予測していた。
というよりも、それ以外に原因があるわけが無かった。景は一般人で命を狙われる機会などそうそう無いのだから。
「何そのあたしが全て悪いみたいな言い方!? 女の子を盾にするっていう外道なことしたのはそっちだよ!」
「ランクXがランクSを盾にして何が悪い。むしろ正当、俺の判断は間違ってはいない」
「論理的にはそうかもしれないけど、倫理的には大間違いだよ!」
「倫理を守ろうが命は守れないんだよ。そういや、ここまでで良かったんだよな。じゃあ」
「じゃあ、で済むと思ったか! あたしの器はそんなに広くなーい!」
そう言うと灯澄は景の襟首を掴み、引き摺ろうとする。
「何すんだ、離せ。地獄に堕ちるだろ」
「最後まで、巻き込んでやる! あたしを盾に使った罪だぁ!」
「復讐は何も生み出さない、冷静になって離すんだ黒笠」
必死に引きずろうとする灯澄の手をどうにかして景は解こうと暴れ出す。
「あたしの才能にかけて、絶対に仕返ししてやる!」
「ランクXを盾にするつもりか!? 木の板よりも防御力が低いぞ!!」
さすがに自分の命の危機を感じたのか、景が声を荒げた。
その時、
「おいおいイチャイチャしてんじゃねぇーよ。気に障る」
硝煙の向こうから、無精髭を生やした黒いコートの男が現れた。
「……この季節にコートって、頭おかしいんじゃないですか?」
その男の姿を見た瞬間、灯澄の表情が険しくなり口調がですます調に変わる。
知り合いか……? と思い、景は一応灯澄に問い掛けてみる。
「全然。今日初めて会った」
「まあ、そりゃそうだろうな。俺も知り合いを壊すのは気が滅入る」
無精髭の男が、またも二人の会話に割り込む。
「後ろに居て……」
「そこ以外に安全な場所があるか?」
「はは! それもそうね」
灯澄は笑顔を消して、無精髭の男へと向き直る。
「さっき、壊すって言ってましたけど、殺すの間違いじゃないんですか?」
「そんなんやったら、俺が死ぬだろぉーが。それに俺の才能はそういうのに向いちゃいねぇ」
「そうですか。でも、どちらにしろ貴方の攻撃はあたしに通用しませんよ?」
「どぉーかなぁー? お嬢ちゃんの才能は強いけど、無敵ってわけじゃないだろ」
無精髭の男の一言に、灯澄は眉をひそめる。
「何が言いたいんですか?」
「お嬢ちゃんの才能は、あくまで自分を対象にした攻撃に適応されるわけで、攻撃以外には適応されないんじゃねぇーか?」
「……それはつまり、あたしを拘束をすると言ってるんですか?」
「ちげぇーよ。最初に言ったろ壊すって。まぁー、正確には―――」
男は不敵な笑いを見せ、
「見せるんだけどな」
「ッ!!!?」
ビクンッ、と灯澄の体が何かに反応するが、それ以上に何も起こらない。
笑い続ける男と硬直する灯澄、状況を窺う景。
三者三様の沈黙が作りださた空間で、景は無精髭の男よりも灯澄の様子を最優先で観察した。
無精髭の男は自分の才能を見せるものだと言った。
その発言と共に灯澄は何かに反応するように体を動かし、それ以来、一切動きを見せない。
おそらくは無精髭の男の才能が原因だろう。言うまでもない。
今、灯澄は何かを見ている。それは自分にも降りかかる可能性がある。何よりも灯澄が倒れでもしたら、逃走すら困難になる。
以下の理由を持って、景は灯澄の様子を観察していた。
「ぁう……あ、あ…………っ!!」
「黒笠?」
いきなり呻き出した灯澄に景は思わず声を掛ける。
すると、錆びた機械の様にゆっくりとぎこちなく灯澄が景に視線を向け、
「…………やだ!!」
「っ!?」
景の手を取り、その場から走り出した。
灯澄のいきなりの行動に、景は戸惑っていたが、一応最後まで無精髭の男から視線を逸らさなかった。
男は、相も変わらず不敵な笑い見せるだけ。
(あいつの才能が原因…………、でもなんでいきなり……?)
男の姿が見えなくなったところで、景は灯澄へ視線を向ける。
「やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ――――」
駄々をこねる子供のようにひたすら同じ言葉を繰り返しながら、泣いていた。
前回、手抜きしたので連続投稿。
やっと超能力バトルに……発展しません。すいません