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第一話  むっつりと優男




子供の頃は、テレビとか本に限らず大抵のエッチなものを敬遠してきた


多分親の教育的にそういうものはいけないって教わってきたからなんだろうけど、とにかくその存在自体を否定して認めてはいけないものと理解して、ずっと長いこと遠ざけてきていた


自分が覚えている中の子供に聞かれたら困る微妙な質問は、俺の場合は「せっくすって何?」といった直球なものだったと記憶しているのは笑い事としても、アニメとかで女の人が艶かしいシルエットとか女の子の変身シーンとか、或いはエッチな言葉を使っていたってそれだけで拒絶してきたのだから、我ながら何て融通の利かないガキンチョだったのだろうと思う


せめてもう少しでも柔らかい脳みそをしていれば、その分マシな人生(二十歳で人生って表現もどうかとは思うが)を送る事が出来ていたのかもしれない


そんな頑なとも言える生き方の中で、初めて夢精してしまった日には、そりゃ~驚いたもんだ


「この歳でお漏らし!?」なんて起き抜けに眩暈を起こしてしまったし、何でおしっこがこんな白くてしかも妙に生臭い匂いなんだ?とかって疑問に思う程度の知識しかなかったわけで(後々それが生理現象であることを知って男って変な機能がついてるんだなと思った)、素で病気かなんかじゃないかと疑ってしまったくらいである


中学に上がってからもエロ敬遠傾向には名残があり、さすがにアニメ程度で拒絶反応を示すことはなくなったとはいえ、周りで繰り広げられる男子トークにはほとほと嫌気が差しているくらいには抵抗感を抱いていた


正直よくもまぁ人前で、しかも女子がいるその目の前でそんな話が出来るもんだと軽蔑さえしていたくらいだったのだ


...けれど、それはあくまでも表面上の話


普段はあいつらは一体何が面白いんだろうって斜めから見ながらも、その実やっぱり俺も男の子で、影では女体には人並みくらい或いはそれ以上には興味津々だったし、深夜のエッチなテレビを見るのもほぼ日課になっていた


一言で言えばむっつりスケベなわけだ


まぁ、俺と同じ人種は他にもいるだろうし特別なことでもないわけだが、どうも思い出すとこの頃にはすでに『むっつり』ってのが悪口かからかう意味合いにはなっていたように思う


ついでに思い出すならば、初めて手にした(拾ってしまった)エロ本は緊縛モノの写真集で、テニスボールやらラケットやら、はたまた体育用具やらを活用した、まぁこう何というか、初めて手にするものとしてはややアブノーマルっぽいものだったように思えなくもない(今は好きなジャンルだけど)


ともかくそんなこんなで密かな劣情を抱いていた中学時代も過ぎ去って、寒々しい高校時代、さらには大学生...つまり現在に至るわけだが、それだけの時間が経ってもむっつり回路は基本的には相変わらずである


人前でその手の話をするのも態度をあけっぴろげにするのに抵抗があるし、自分の趣味傾向を友達連中に話すつもりも毛頭ない


そんな話をするくらいなら個人的には大人しくゲームの話でもしていた方が気分的に断然に楽なわけだ


そりゃ僕だって別に硬派を気取っているわけじゃないし、当然女に興味が無いないはずもなく超アリ


毎日最低一回はヌいているし、親に隠れてAVを鑑賞していたことだって間々あるし、普通に彼女は欲しかったし、あわよくば女性教師とねんごろになることさえ考えていた


とまぁずっとそんなだったから、きっと多分大人になるまでは、俺ってこのままなんだろうな~とすら漠然と思っていたわけだ


...一応、今日までは


「どう?...気持ちよかった?」


ベッド上の隣でうつぶせになっている彼女が、俺にそう尋ねてくる


「............」


けれど、俺はその問い対して何の言葉も吐く事が出来ないしその元気も...一箇所以外はない


もちろん恐ろしく気持ちよかったし、中に入っている時のねっとりとしたような、その蠢いているような感覚には歯を食いしばらざるを得なかった


これが挿れるってことなんだ、と感動さえ覚えた


もう単純にオカズを利用すつよりも十倍以上の快楽だったと言える


言葉を重ねてしまうが、世の中にこんな気持ちよさがあっていいのか?ってくらい衝撃的な出来事だった


なのに、俺の思考はそんな本能煩悩よりも現状が理解できない方にやや傾いている


というよりは、頭の中で理性的なことを考えていないと、自分の中の何かが決壊してしまうような心持になっていた


ともかく完膚なきまでにイかされてしまった身としては、今までの俺の生き方と今の敗北感とを含めて、とても彼女に何かを答えることは出来なかったのだ


「ふふ...」


そんな無反応の俺を見てなのか、彼女は俺を見て楽しんでいるような微笑を浮かべている


もしかしたら気付かぬうちに悔しそうな表情でも浮かべてしまっていたのだろうか?


だとしたら、尚更の敗北感だ


せめて一矢くらい報いてやりたい気持ちに苛まれてしまう


でも...


それにしても俺は、何だって大して知りもしないような彼女と、その彼女の部屋のベッドで、二人して裸で横たわってしまっているのだろう


確かたった30分前までは、俺は女とも女の体とも縁もゆかりも繋がりのつの字もないような生活をしていたはずなのに...








俺の家は一戸建てである


木造二階建て築5年くらいのよくある感じの一軒家


部屋分けとしては3LDK+ウォークインクローゼット


一階がダイニングと両親の和室、それと中々に大きめの洋服収納


でもって二階の二部屋がそれぞれ俺と姉の部屋として配されている


ちなみに、ここに引っ越してくる前はずっと狭い2Kのアパート住まいだったのだが、それがいきなり2倍以上の広さを有する戸建てを購入したっていうのだから、親父とお袋の頑張りには素直に感嘆してしまう


だからこれで、もう少し俺の部屋がマシだったのなら本当に何の文句もなかったに違いない


逆に言えば、俺は今の部屋に不満があり、言ってしまうと俺の部屋は日当たりが悪いのだ


灰色の世界くらいには言っていいと思う


というのも真正面にはお隣さんの家があって、7割ほどがお隣の壁と窓に塞がれているような有様なのだ


はっきり言って気持ちが沈んで仕方がない


対する姉の部屋は南向き日当たり良好のしかも広い部屋で収納も俺の部屋の倍というあからさまな好条件


そんな歴然な差があったものだから、この家に引っ越してきた当初は当然のように散々抵抗していたものである


けれど結局、お姉さま権限発動により今の湿気っぽくて薄暗い部屋に宛がわれてしまうことと相成った


全く持って負け犬人生どこまで続くって思ってしまったくらいだ


ともかく俺はこうして、ほぼ常時明かりをつけていなければならない部屋で暮らす羽目になったのだった


最初に気になったのはお隣さん...だったのだがお生憎様


魅惑のお隣さんは空き家だった


家的にはそこそこ古い感じで、規模的にはウチの家を同じくらいの大きさがあり、どうやらウチの家族が住み始めた時から、或いはそのずっと前から誰も住んでいる気配はなかったらしい


だから、窓向こうのカーテンもいつも締め切られたままだった


欲を言えば、テレビやゲームでよくある隣の女の子とのドッキリ遭遇を多少期待していたのだが、そんなマンガやアニメの話は早々あるものではないわけだ


だが逆にむさくるしい男の笑い声とも縁はなかったわけで、住めば都の理通り、俺は普通に湿気っぽくも穏やかな毎日を送ることに成功していた


実際、一人部屋というのは初めてだったこともあり充実のオナニーライフを満喫していたのだ


...が、けれどそれはすでに一ヶ月前までの話


つまり今は、もうすでに人が住んでしまっているわけだ


最初は正直うんざりしていた


だって今までずっと何年も静かに過ごしてきたのに、これからはお隣さんを意識しなきゃならないなんて面倒くさいことこの上ない


ただでさえ姉貴の鬱陶しいちょっかいがあるにも関わらず、この上お隣さんの影を気にしなければならないなんて、本気でやってられない話だ...なんて思っていたのが29日前のお話


我ながら現金なものだとは思うが、仕方ない


だってだって、男の子だもん


てなわけでつまりどういう事かと言えば、俺のお隣の部屋には何と念願の女の人が入ってきてくれたのだ


案外マンガやアニメの話ってのもあるらしく、事実は小説より奇なりとはよく言ったものだと感心してしまう(ってこれだと使い方が違うか?)


だとしたらもしかしたら或いは、窓を開けておはようイベントとか、はたまたカーテン開けたらイヤ~ンなお約束とかまであるかもしれない、とか考えていたのだが...


いや、本当に事実は小説より奇なりとはよく言ったものである(今度は使い方も合っているだろう)


何しろ今日俺は...





――もし良かったら、私とセックスしない?





と、何となく窓を開けて、この一ヶ月で初めて彼女とタイミング良く目が合った瞬間に誘われていたのだから





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