いい加減刑事 神崎の流儀
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いい加減刑事・神崎の流儀
~美女刑事たちと組んだら、
なぜか事件が解決しちゃうんですが?~
【第1期 前半 第1話〜第12話】
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【登場人物紹介】
●神崎 遼・26歳
本作の主人公。警視庁捜査一課所属の刑事。
常にネクタイが曲がり、書類は山積み、
締め切りはギリギリ、遅刻は日常茶飯事。
しかし、ふとした一言や行動が事件解決の
糸口になることが多く、「天然の名探偵」と
一部から恐れられている。本人は全く自覚なし。
口癖:「まあ、なんとかなるでしょ」
●霧島 凛・27歳
第一バディ。捜査一課のエース。完璧主義者で
神崎とは真逆の性格。最初は彼を嫌悪するが
徐々に惹かれていく。
●桐谷 夏帆・25歳
第二バディ。科学捜査班所属。
天才的な分析力を持つが引っ込み思案。
神崎の自由さに刺激を受ける。
●瀬川 澪・28歳
第三バディ。ベテランのベテラン刑事。
サバサバしているが根は優しい姉御肌。
●天城 遥・24歳
第四バディ。新人刑事。憧れの職場で奮闘中。
神崎を「反面教師」として慕い始める。
●鷺沼 千夏・30歳
第五バディ。刑事部長付き特別捜査官。
クールで謎めいた過去を持つ。
●上条 署長・55歳
桜丘警察署の署長。神崎を「宝の持ち腐れ」と
評しながらも期待している。
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◆ 第1話「バディ始めます(したくないけど)」
四月の朝。桜丘警察署の廊下を、神崎遼はあくびをしながら歩いていた。
コーヒーを片手に、ネクタイを片手に持ったまま――つまり、まだ着けていない。
「神崎! 貴様、また遅刻か!」
廊下の角から現れたのは、捜査一課の霧島凛。ピシッとスーツを着こなし、
書類を脇に抱えた彼女は、遼を見るなり額に青筋を浮かべた。
「あー、霧島さん。おはようございます。まだ一分しか遅れてないんで
セーフじゃないですか?」
「セーフではない! 本日から貴様と私はバディを組むことになった。
上条署長の命令だ」
遼は目を丸くした。
「え。なんで俺が凛ちゃんと……」
「凛ちゃんと呼ぶな!!」
こうして、桜丘警察署史上最も凸凹なコンビが誕生した。
最初の事件は、連続窃盗犯の追跡。
霧島は緻密な証拠分析で犯人を特定しかけていたが、
最後の一手が揃わない。
「もしかして」と遼がぼんやり言った。「犯人、左利きじゃないですか?」
「……なぜそれを」
「さっきコーヒー飲んでたら、その資料の指紋の向きがなんか変で」
確認すると、的中。霧島は絶句した。
事件解決後、報告書に「神崎の指摘が突破口」と書きながら、
彼女はこっそり耳まで赤くなっていた。
「……少しだけ、見直した。ほんの少しだけな」
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◆ 第2話「科学捜査班の天才は照れ屋さん」
「神崎さん、今日から科学捜査班との合同捜査です」
霧島から告げられた遼は、地下の科学捜査室を訪ねた。
そこにいたのは、大きなメガネをかけた小柄な女性。
桐谷夏帆――DNAから人間関係まで分析できる天才科学捜査官だ。
「あ、あの……刑事さんですか? 私、その、うまく話せないんですが」
「大丈夫大丈夫。俺もうまく仕事できないんで、お互い様です」
夏帆はキョトンとした。刑事がそんなことを言うとは思っていなかったのだ。
事件は毒殺疑惑。夏帆は成分分析を完璧にこなしたが、
「動機の糸口が見つからない」と頭を抱えていた。
遼は被害者の書棚を眺めながら、ぼそりと言った。
「この人、本の並べ方がバラバラですね。几帳面そうな人なのに。
……最後に誰かに見せたくないものを隠したんじゃないですか?」
本の裏から、遺言書が発見された。
「す、すごい……どうして……」
「いや、本棚が気になっただけです。整理したくなっちゃって」
夏帆は報告書を書きながら、何度もちらちらと遼の横顔を見た。
「変な人だけど……なんか、安心する」
そう、小さなメモに書いて、そっと引き出しにしまった。
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◆ 第3話「姉御刑事は実は寂しがりや」
捜査一課の姉御・瀬川澪は、見た目こそ豪快だが、
実は一人でコツコツ捜査を続ける孤独派だった。
上条署長の命令でまた遼とバディを組むことになり、澪は渋い顔をした。
「私はそういうの、苦手なんだけど」
「俺も苦手ですよ」と遼が答えた。
「……じゃあなんで平気そうな顔してんの」
「なんとかなるかなって思ってるだけです」
澪は呆れた。
事件は組織的詐欺。澪は長期間単独で追い続けていたが、
ラストピースが揃わない。
現場を歩き回る遼が、突然立ち止まった。
「このタコ焼き屋さん、一年中ずっとここにありますよね?」
「……何が言いたいの」
「逃げる気がないってことじゃないですか。犯人。
この店を毎日見てたって言ってたじゃないですか、目撃者の人が」
犯人は、現場近くで働く人物だった。澪の長年の勘と遼の見落としなさが合わさり、
一気に事件が解決した。
夜、居酒屋で澪が缶ビールを遼に押しつけた。
「……おごってやる」
「え、やったー」
「うるさい。ただ、付き合わせてごめんって言いたかっただけ」
「楽しかったですよ? 本当に」
澪はそっぽを向いた。でも、その耳は赤かった。
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◆ 第4話「新人刑事の初めての現場」
天城遥は、配属されたばかりの新人刑事。
正義感と理想に燃えているが、現実の捜査の複雑さに戸惑っていた。
遼は彼女の指導係になった。
「えっ、神崎さんが私の先輩ですか?」
「そう言われると俺も困るんですが……まあよろしく」
遥は必死にメモを取り、現場では一ミリも見逃すまいと目を血走らせた。
そんな彼女に遼は言った。
「そんなに張り詰めてたら、大事なもの見逃しますよ」
「でも……!」
「力抜いて歩いてみてください。足元が気持ちよくなりますよ」
事件は迷子の子供と誘拐疑惑。
遥は手がかりを求めて奔走する中、疲労でパニックになりかけた。
そのとき遼がぽつりと。
「この子、アメをくれた人の方向を向いてますね」
子供がいつも見ている方向。そこに、鍵を握る人物がいた。
遥はぼろぼろと泣いた。
「私、全然役に立てなかった……」
遼は頭をポンと叩いた。
「今日気づいたこと、全部持って帰ってください。それが次の力になるから」
遥は「はい!」と笑って敬礼した。
この日から遥は、遼を「師匠」と呼ぶようになった。
(遼は呼ばれるたびに照れた)
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◆ 第5話「特別捜査官は謎めいている」
ある日、刑事部長から特別捜査官・鷺沼千夏が派遣されてきた。
長い黒髪、クールな目線、一言も無駄にしない話し方。
「神崎遼刑事。あなたと合同捜査を行います」
「あー、よろしくお願いします。お昼ご飯、一緒に食べますか?」
「……いきなり何を言ってるんですか」
千夏は遼の評価を「問題外」と判断した。
事件は連続企業恐喝。千夏は完璧な捜査計画を立てたが、
犯人グループの内部分裂という想定外の展開になった。
遼は現場で全員の顔を見回してぽそりと言った。
「このグループ、リーダーに嫌われてる人いますよね。
靴の向きが全員リーダーから離れてる」
千夏は固まった。心理的グルーピングの分析を三時間かけてやろうとしていたことを、
遼は三秒で言い当てた。
「……あなたは、訓練を受けていますか?」
「いや、特に。なんとなくです」
「なんとなく……」
千夏は夜、報告書を書きながら、遼のことを「未知数」と記録した。
そして少しだけ、次の捜査が楽しみになっていた。
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◆ 第6話「全員集合! バレンタイン捜査会議」
二月十四日。桜丘署の捜査会議室には、
霧島・桐谷・瀬川・天城・鷺沼の五人が集まっていた。
上条署長が告げる。
「本日は特殊事件の合同捜査会議だ。全員で神崎の指揮のもと——」
「え、俺ですか」と遼が目を白黒させた。
事件は美術館からの連続絵画盗難。
五人の女性刑事たちは、それぞれの専門分野から分析を始めた。
そしてなんと、全員が遼に小さな差し入れを持ってきていた。
霧島は「業務上の差し入れです」とそっけなく渡し、
夏帆は真っ赤になってテーブルに置いてそっぽを向き、
澪は「義理だからね」と言いながら手作りチョコを押しつけ、
遥は「先輩! もらってください!!」と満面の笑みで渡し、
千夏は「……体力維持のためです」と黒糖飴を置いた。
遼は全部ありがたくいただきながら、事件を整理し始めた。
「あの……盗まれた絵、全部同じ画家の作品じゃないですよね。
でも全部、窓際に飾られてた作品ですよね? 日当たりを好んだ人?」
犯人は、その画家の元弟子だった。
思い出の場所にあった絵だけを、誰にも言えない理由で盗んでいたのだ。
事件後、全員でチョコを食べながら、遼は言った。
「なんか……俺、幸せ者ですね」
五人は口々に「気のせいです」「勘違いしないで」「うるさい」などと言いながら、
みんな少しだけ笑っていた。
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◆ 第7話「霧島さんの過去と、遼の一言」【感動回】
ある夜、遼は残業中に霧島が一人でコールドケースのファイルを
眺めているのを見つけた。
「霧島さん、まだいたんですか」
「……あなたには関係ない」
しかし遼はそのまま隣に座った。
霧島が睨んでも、遼はコーヒーを二つ持ってきて、一つを彼女の前に置いた。
ファイルの表紙には——七年前の未解決事件の名前があった。
「……同僚が、犯人に……。私が先に行っていれば」
「霧島さん」
「何」
「その人は、今の霧島さんを見て、どう思うでしょうね」
霧島は答えなかった。
「きっと誇りに思うと思いますよ。俺は、そう思います」
しばらく沈黙が続いた。
霧島は静かに涙をぬぐい、そしてコーヒーを飲んだ。
「……ありがとう」
霧島が遼に「ありがとう」と言ったのは、この日が初めてだった。
翌朝、霧島は遼に「神崎くん」と名前で呼んだ。
遼は気づかないふりをしたが、耳が真っ赤だった。
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◆ 第8話「桐谷さんとフィールドワーク」
珍しく夏帆がフィールド捜査に同行することになった。
普段は室内での分析専門の彼女にとって、現場は未知の世界。
「あの、神崎さん……私、外でうまくやれるかどうか」
「大丈夫です。俺もいつもうまくやれてませんから」
「それ、フォローになってないんですが……」
でも夏帆は少し笑った。
事件は薬品の不法投棄疑惑。現場は廃工場で、複雑な化学物質の痕跡が残っていた。
夏帆は現場で即座に成分を特定し、遼は目を丸くした。
「夏帆さん、すごい……」
「ひ、ひとつ間違えたら大変でしたけど」
「でも間違えなかった。それがすごいんです」
遼に率直に褒められた夏帆は、メガネが曇るほど顔を赤くした。
帰り道、夏帆が転びそうになったとき、遼がさりげなく手を取った。
「あっ……」
「道、でこぼこしてますね。気をつけて」
そのまま駅まで手をつないで歩いた。
夏帆は翌日、「昨日の現場分析の詳細」というファイルを作りながら、
全然関係ない「手の温度について」というメモをこっそり書いた。
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◆ 第9話「瀬川先輩と夜の追跡劇」
瀬川澪との二度目のバディ。今回は夜間の追跡捜査だった。
容疑者の逃走ルートが複数に分かれ、二人は一時的にはぐれてしまう。
遼は路地裏で容疑者と鉢合わせした。
武器はない。相手は明らかに危険な人物だ。
遼はにこっと笑った。
「あのー、近くのコンビニどっちですか?」
容疑者は一瞬、完全に力が抜けた。
その隙に澪が飛び込んで取り押さえた。
「神崎ぃ! 心臓止まるかと思ったよ!!」
「いや、なんとかなるかなって」
「そのセリフ、もう聞きたくない!」
でも澪はぎゅっと遼の腕をつかんでいた。安堵と、何か別の感情が混じって。
「……無事でよかった」
小さな声だった。
遼はそれを聞いて、「澪さんも無事でよかったです」とちゃんと返した。
澪はそっぽを向いた。でも今度は、ずっと長い間そっぽを向いていた。
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◆ 第10話「遥ちゃんの初手柄」
天城遥が初めて単独で情報収集に成功した。
彼女は興奮しながら遼のもとへ飛んできた。
「先輩! 聞いてください! 私、やりました!!」
「おー、すごい! 教えて!」
遥が持ってきた情報は、長引いていた連続傷害事件の有力な証言だった。
しかも、遥が被害者に寄り添って話を聞いたことで得られた、
他の誰も引き出せなかった情報だった。
「遥ちゃんって、話を聞くのが上手いですよね」
「えっ……そう、ですか?」
「うん。ちゃんと相手の目を見て、うなずいて。俺にはできないことです」
遥は目をキラキラさせた。
「先輩に褒められるの……すごく嬉しいです」
事件解決後、上条署長から遥への表彰状が出た。
遥は表彰台で泣きそうになりながら、会場の遼に目をやった。
遼は親指を立てて、にこっとしていた。
遥はその日の日記に書いた。
「先輩みたいな刑事に、私もなりたい。
でも先輩のことが、少し好きかもしれない」
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◆ 第11話「鷺沼さんの秘密と過去の傷」【感動回】
千夏が突然、任務から外れることになった。
遼だけがその理由を偶然知ってしまう——彼女の過去の事件で、
無実の人を巻き込んだ可能性があると再調査が入ったのだ。
千夏は一人で抱え込んでいた。
遼は捜査資料を読みあさり、夜通し調べた。
そして翌朝、千夏を呼び出した。
「調べました。鷺沼さんは間違ってない」
「……あなたには関係のないことです」
「関係あります。バディですから」
千夏は目を細めた。
「一度しか組んでいない相手が、なぜバディだと」
「俺の中ではそうです。それに……」
遼は資料を広げた。
「あの時の判断は正しかった。証拠がここにある」
千夏は資料を一枚一枚確認した。
遼の見つけた証拠は、確かに彼女の判断が正しかったことを示していた。
千夏は長い間、黙っていた。
そして静かに言った。
「……なぜ、あなたはそこまでするんですか」
「なんとかなるかなって思ったら、なんとかなりました」
千夏は微笑んだ。それは誰も見たことのない、柔らかい表情だった。
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◆ 第12話「桜丘署の春祭りと告白未遂」
毎年恒例、桜丘署の春祭り(近隣住民との交流イベント)の日。
遼は出店担当になり、ゲームコーナーを任された。
「なんとかなるでしょ」と思っていたら、準備が全然間に合わず、
霧島・夏帆・澪・遥・千夏の五人に大目玉を食らった。
「あなたって本当に……!」「もう!」「仕方ないわね」「先輩ー!」「……呆れます」
でも全員が手伝ってくれた。わいわいと準備しながら、なんとかオープンに間に合った。
子供たちに人気が出て、五人はそれぞれ笑顔で子供たちの相手をした。
遼はその光景をぼんやり眺めた。
「なんか……みんな、本当にいい人だな」
夕方、桜の木の下で霧島が遼の隣に立った。
「ねえ、神崎くん」
「はい」
「あなた……その……」
霧島は珍しくもじもじしていた。
そこに遥が猛ダッシュで飛んできた。
「先輩! 子供がお礼を言いたいって!!」
「あ、うん、行きます!」
霧島はため息をついた。「……またにします」
そのつぶやきは、花びらにさらわれた。
第1期前半 完。
——第13話へ続く——
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「いい加減刑事・神崎の流儀」第1話〜第12話 おわり
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いい加減刑事・神崎の流儀
~美女刑事たちと組んだら、
なぜか事件が解決しちゃうんですが?~
【第1期 後半 第13話〜第24話】
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◆ 第13話「新しいバディ・橘 花音登場」
梅雨の季節、桜丘署に異動してきた人物がいた。
●橘 花音・23歳
他署から転属してきた若手刑事。明るくおしゃべりで、
どこか天然な雰囲気を持つ。料理が得意。
「神崎先輩ですよね? 噂で聞きました! 天才刑事だって!」
「え。俺がですか」
「署長室の前で聞こえたんです。『あいつは宝の持ち腐れだが天才だ』って」
「それ、褒めてるんですかね……」
花音はあっという間に署内に馴染んだ。
ただ、空回りすることも多く、初日から書類を盛大にひっくり返した。
初めてバディを組んだのは、空き巣多発事件。
花音は聞き込みで近所の人から大量の情報を集めてきたが、
整理できずに混乱している。
「先輩、どれが重要なんでしょう……」
「全部読んでみます。……あ、これ。同じ時間帯に散歩してる犬の話、三件ある」
「犬がどうして重要なんですか?」
「犬は知ってる人には吠えない。ってことは犯人、この近所に住んでる顔見知りかも」
花音の目が輝いた。
「先輩って……本物だ!」
「いや、犬が好きなだけですよ。昔、実家で飼ってたんで」
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◆ 第14話「ラッキースケベ大作戦(本人には作戦の気なし)」
証拠保管室の棚を整理中、遼は盛大に転んだ。
運悪く——いや、運よく?——霧島が入ってきたタイミングと重なり、
棚から落ちたダンボールが霧島にぶつかり、二人は倒れ込んだ。
「っ……か、神崎くん!!」
「いたた……霧島さん、大丈夫ですか?」
気がつくと二人の顔は至近距離。霧島の長い髪が遼の顔にかかっていた。
霧島は三秒固まり、その後猛スピードで起き上がった。
「み、見ていない! 今のは業務中の事故です!!」
「はい。でも本当に大丈夫でしたか、頭」
「……だ、大丈夫です。ありがとう」
遼は真剣に心配していた。霧島はそれが余計に困った。
同日、今度は休憩室で夏帆が実験データのプリントアウトを大量に持ちながら歩いていたところ、
遼とぶつかり、紙が舞い散り、夏帆がよろけ、遼が咄嗟に抱きかかえた。
「わああっ……ご、ごめんなさい……!」
「こちらこそ。落ちましたか、資料」
「そ、それより……そのっ……」
夏帆は遼の腕の中で固まっていた。
遼はすぐに離したが、夏帆はその日一日、鮮やかに赤いままだった。
霧島・夏帆・澪の三人は夕方、休憩室で顔を見合わせた。
「あの人、本当に天然なのよね」
「天然だと思います……」
「それが一番タチ悪い」
全員、なぜか複雑な表情で苦笑いした。
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◆ 第15話「花音の料理と、みんなのご飯」
ある土曜日の夜。残業組がぽつぽつと残る署内に、
花音が大きなリュックを背負って現れた。
「みなさん、食べてないでしょ? 差し入れ持ってきました!」
出てきたのは手作りのおにぎりと豚汁と卵焼き。
残業していた霧島・夏帆・澪・遥・千夏・遼が全員集まった。
みんなで食べ始めると、不思議と会話が弾んだ。
夏帆が好きな映画の話をし、澪が昔の捜査の失敗談を話し、
千夏が珍しく笑い、遥が先輩たちのエピソードに目を輝かせた。
遼は豚汁を二杯おかわりした。
「花音ちゃん、料理上手いね」
「ありがとうございます! 先輩に褒めてもらえると嬉しいです!」
霧島は「差し入れは私も今度するわ」と言い、夏帆は「お菓子なら……」と手を挙げた。
澪は「じゃあ私は酒で」と言い、遥が「私は! なんでも!」と張り切った。
千夏は黙ってお茶を出してきた。
遼は全員を見回した。
「なんか……本当にいいチームですよね」
誰かが「あなたがいちばんいい加減なくせに」と突っ込んだ。
全員が笑った。
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◆ 第16話「上条署長の秘密の依頼」
上条署長が遼を個室に呼び出した。
「神崎。一つ頼みたいことがある」
「珍しいですね、署長が個人的に」
署長は渋い顔で言った。
「私の娘が……危ない目に遭いかけている。正式な捜査はできない。
ただ、誰かに見ていてほしい」
遼は即答した。
「わかりました。やります」
「理由も聞かずにか」
「署長が頼むんだから、大事な話でしょう。それで十分です」
署長はしばらく遼を見つめた後、静かに言った。
「……お前は、本当に不思議な奴だな」
遼は霧島に事情を話した。霧島は即座に「私も動きます」と言った。
夏帆は「分析支援します」と。澪は「当然でしょ」と。
遥は「私も!」と飛び上がり、千夏は無言で合流した。
六人体制で署長の娘を守りながら、背後にある組織の脅威を突き止めた。
事件解決後、署長は全員に頭を下げた。
「……ありがとう。皆」
遼はちょっと照れた。
「署長が頭下げるのは珍しい」
「うるさい。二度と言わんぞ」
でも署長は、確かに泣いていた。
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◆ 第17話「千夏さんと星空の夜」【感動回】
長期任務の終わりに、遼と千夏は山間部の宿に一泊することになった。
夜、千夏は縁側で空を見ていた。
遼もお茶を持って隣に座った。
「きれいですね」
「……ええ」
しばらく沈黙。
「鷺沼さんって、なんで刑事になったんですか」
「……昔、大切な人を守れなかった。だから」
「守れなかったのに、また誰かを守ろうとするんですね」
「……矛盾しています?」
「いいえ。それが一番強い動機だと思います」
千夏はゆっくり遼を見た。
「あなたは……どうして刑事に?」
「俺は……まあ、なんとなく」
「なんとなく……」
「でも、こうしてみんなと仕事してたら、だんだん本気になってきました。
守りたいって思う人が増えてきたんで」
千夏は長い間、星を見ていた。
「……そうですか」
その声はとても、やわらかかった。
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◆ 第18話「ラッキースケベ第二弾・今度は花音も巻き込まれる」
署内の給湯室でまたやらかした。
遼がドアを開けたら、着替えようとしていた花音と鉢合わせ。
「わああっ!!」
「ご、ごめん!!」
遼は反射的に目をつぶり、後退りし、廊下の霧島に激突した。
「なっ……神崎くん!?」
「霧島さん!? いや、これは——」
さらに廊下を走ってきた遥が二人にドカン。
三人が廊下で連鎖倒れ。
給湯室から花音が顔を出した。
「……先輩、何してるんですか」
「俺も聞きたい」と遼が天井を見上げた。
廊下のカメラ映像は「業務上の接触」として処理されたが、
その日の昼休み、女性陣の間で「今日の件」が十五分間話し合われた。
遼本人は昼寝していた。
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◆ 第19話「遥ちゃん、本気の告白」
天城遥は決めた。今日こそ言う。
事件が一段落した夕方、遥は遼を屋上に呼び出した。
「先輩、あの……」
「なんですか?」
「私、先輩のことが好きです。ずっと前から」
遼は止まった。
遥は続けた。
「先輩に出会って、初めて刑事の仕事が楽しくなりました。
先輩みたいになりたいって思ったし、先輩のそばにいたいって思ってます。
だから……聞いてほしかったんです」
遼はしばらく黙っていた。
「遥ちゃん……」
「返事は、いつでもいいです。ただ、伝えたくて」
遼は空を見た。
「俺、今の自分でそれを受け止めていいか、まだわからないんだ。
ちゃんと向き合いたいから、少し時間をください」
「……はい」
遥は泣かなかった。でも目が真っ赤だった。
遼は「ありがとう、ちゃんと言ってくれて」と言った。
その言葉が、遥には一番嬉しかった。
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◆ 第20話「霧島さんの本心」
遼が遥からの告白を受けたことは、なぜか翌日には署内に広まっていた。
(犯人:花音。「みんな知るべきだと思って!」)
霧島は午前中、ずっと無言だった。
昼休み、遼が声をかけた。
「霧島さん、怒ってます?」
「怒っていません」
「そうですか」
「…………」
「本当に大丈夫ですか」
「うるさい!」
廊下に響く声。遼はびっくりした。霧島もびっくりした。
「ごめんなさい……その、私は……」
霧島は珍しく言葉に詰まった。
「神崎くん。あなたはどうするの」
「どうって……まだわかりません。ちゃんと考えたい」
霧島は一呼吸おいた。
「……私も、あなたのことを考えることがある。
それだけ、言っておきたかった」
遼は真剣な顔をした。
「霧島さん」
「返事はいい。私も遥ちゃんと同じで、今は伝えたかっただけ」
霧島は歩き出した。でも五歩で立ち止まり、振り返らずに言った。
「……ちゃんと食べなさい。昼ごはん」
遼は「はい」と答えた。
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◆ 第21話「最大の事件と、全員集合」
桜丘署を揺るがす大型事件が発生。
複数の企業を狙った組織犯罪で、背後には政界との繋がりも見えてきた。
上条署長は全員を集めた。
「この事件、解決できるのは今この部屋にいる者だけだ」
霧島・夏帆・澪・遥・千夏・花音、そして遼。
全員がそれぞれの専門を活かして動き始めた。
捜査が難航する中、遼はひたすら現場をぶらぶら歩き回っていた。
「神崎くん、何を見ているの」と霧島が問う。
「特に……でも、なんか引っかかるものがあって」
三日目の夜。遼が言った。
「犯人グループ、全員がある会員制サービスを使ってますよね?」
「それは確認しています。でも違法性は——」
「使い始めたのが全員、同じ月です。つまり、誰かに紹介された。
その紹介者が黒幕じゃないですか?」
夏帆が即座に解析を始めた。
翌朝、犯人が特定された。
全員が一斉に動き、組織を一網打尽にした。
署内に歓声が上がった。
その夜、全員で乾杯した。
遼はコーラで、全員に言った。
「みんながいたから、できた事件です。俺一人じゃ何もできなかった」
誰もツッコまなかった。
みんな、なんとなく目が潤んでいた。
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◆ 第22話「夏帆さんの秘密の想い」【感動回】
大事件の後、夏帆は遼に「少し話があります」と伝えた。
科学捜査室の窓際、夕日が斜めに差し込む中で夏帆は言った。
「私、子供の頃から人と話すのが怖かったんです。
だから刑事ではなく、分析官を選んだ。
でも……神崎さんと現場に出るようになって、外が怖くなくなりました」
「夏帆さん……」
「最初に手をつないでくれたとき、あなたはたぶん何も考えていなかったと思うけど。
私にとっては、すごく大事なことでした」
遼はしばらく黙った後、言った。
「夏帆さんが笑ってくれると、俺もなんか元気になるんです。
だから……これからも笑ってください」
夏帆は一瞬呆けて、それからゆっくり笑った。
今まで見た中で、一番きれいな笑顔だった。
「……はい」
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◆ 第23話「澪先輩と花音と、ちょっと本気の飲み会」
澪が珍しく全員を居酒屋に誘った。
「大事件終わったんだから、ちゃんと飲もう」
全員が集まり、賑やかな夜になった。
酔った花音が遼に抱きついた。
「先輩って、ほんとうにいい人ですよね! 私もう大好きです!!」
「花音ちゃん、飲みすぎ」
「大好きって言ったんです! 聞こえましたか!!」
澪は見ていてため息をついた。
「花音ちゃんはほんとうに正直だね」
「澪先輩は正直じゃないんですかー?」
「うるさい」
遼が澪に言った。
「澪さんって、みんなのこと、ちゃんと見てますよね。
花音ちゃんのフォローとか、遥ちゃんの成長とか。
いつも全員のこと、気にかけてる」
澪は黙った。
「……別に、なんとも思ってない」
「そうですか。俺は思ってますよ。澪さんのおかげで、このチームが成り立ってる」
澪はビールをごくごく飲んだ。そして小さく言った。
「……あんたも、ちゃんと見てるじゃない」
「そうですか? なんとなくです」
「……それが一番いい加減なのよ、あんたは」
でも澪は笑っていた。本当に、いい顔で。
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◆ 第24話(最終話)「俺が選ぶのは、みんなとの道」
春。桜丘署に、また桜が咲いた。
上条署長から発表があった。
「神崎遼。お前をこの度、桜丘署捜査一課チームリーダーに任命する」
署内がざわついた。
「え。俺が、ですか?」
「貴様が、だ。異議はあるか」
「……まあ、なんとかなるかなって思ってるんで、受けます」
署長はふっと笑った。
「そのセリフを待っていたよ」
その日の夕方、霧島が遼に話しかけた。
「神崎くん。その……おめでとう」
「ありがとうございます。霧島さんが先のほうがよかったんじゃ」
「いい。あなたが適任だと私も思ってる」
霧島は少し間を置いた。
「それと……さっき言いかけた話の続きだけど」
「はい」
「あなたと、ずっとバディでいたい。それだけ」
遼は霧島を見た。真剣な目で。
「俺も、そう思います。それだけじゃなく、もっと」
霧島は目を見開いた後、ゆっくり笑った。
「……それは、ちゃんと聞かせてもらうわ。今度」
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桜が舞う中、全員が署の前に集まった。
霧島は少し照れながら遼の隣に立ち、
夏帆はそっと遼のそばに来て、
澪は腕を組んでそっぽを向き、
遥は「先輩! チームリーダーおめでとうございます!!」と飛びつき、
千夏は静かに微笑み、
花音は「私、絶対チームから離れません!!」と宣言した。
遼は全員を見回した。
「俺、みんながいれば、なんとかなる気しかしないんですよね」
「「それだけは信用できます」」と全員がハモった。
全員が笑った。
桜の花びらが、六人の上に降り注いだ。
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【 完 】
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【あとがき】
この物語は、「いい加減な人間こそが、周りを本当に幸せにする」
というテーマで書かれています。
完璧でなくていい。
計画通りでなくていい。
「なんとかなる」と思って歩いていれば、
いつのまにか大切なものが増えていく。
神崎遼の生き方は、不器用だけど、たしかに温かい。
そしてその温かさに、気づいた人たちが集まってくる。
それが、このお話の全てです。
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【登場ヒロイン 最終一覧】
① 霧島 凛(27歳) …… エース刑事。遼の正式バディ。
② 桐谷 夏帆(25歳) …… 科学捜査の天才。笑顔が一番きれい。
③ 瀬川 澪(28歳) …… 姉御刑事。本当はずっと見守っていた。
④ 天城 遥(24歳) …… 新人刑事。最初に告白した勇気の人。
⑤ 鷺沼 千夏(30歳) …… 特別捜査官。星空の夜に心を開いた。
⑥ 橘 花音(23歳) …… 転属組の天然刑事。一番正直な人。
そして——
神崎 遼(26歳)
「なんとかなるでしょ」
桜丘署捜査一課、チームリーダー(昇格)。
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「いい加減刑事・神崎の流儀」第13話〜第24話 おわり
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