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いい加減刑事 神崎の流儀

掲載日:2026/03/27

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     いい加減刑事・神崎の流儀

    ~美女刑事たちと組んだら、

     なぜか事件が解決しちゃうんですが?~

        【第1期 前半 第1話〜第12話】

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【登場人物紹介】


神崎かんざき りょう・26歳

 本作の主人公。警視庁捜査一課所属の刑事。

 常にネクタイが曲がり、書類は山積み、

 締め切りはギリギリ、遅刻は日常茶飯事。

 しかし、ふとした一言や行動が事件解決の

 糸口になることが多く、「天然の名探偵」と

 一部から恐れられている。本人は全く自覚なし。

 口癖:「まあ、なんとかなるでしょ」


霧島きりしま りん・27歳

 第一バディ。捜査一課のエース。完璧主義者で

 神崎とは真逆の性格。最初は彼を嫌悪するが

 徐々に惹かれていく。


桐谷きりたに 夏帆なつほ・25歳

 第二バディ。科学捜査班所属。

 天才的な分析力を持つが引っ込み思案。

 神崎の自由さに刺激を受ける。


瀬川せがわ みお・28歳

 第三バディ。ベテランのベテラン刑事。

 サバサバしているが根は優しい姉御肌。


天城あまぎ はるか・24歳

 第四バディ。新人刑事。憧れの職場で奮闘中。

 神崎を「反面教師」として慕い始める。


鷺沼さぎぬま 千夏ちなつ・30歳

 第五バディ。刑事部長付き特別捜査官。

 クールで謎めいた過去を持つ。


上条かみじょう 署長しょちょう・55歳

 桜丘警察署の署長。神崎を「宝の持ち腐れ」と

 評しながらも期待している。


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◆ 第1話「バディ始めます(したくないけど)」


 四月の朝。桜丘警察署の廊下を、神崎遼はあくびをしながら歩いていた。

 コーヒーを片手に、ネクタイを片手に持ったまま――つまり、まだ着けていない。


「神崎! 貴様、また遅刻か!」

 廊下の角から現れたのは、捜査一課の霧島凛。ピシッとスーツを着こなし、

 書類を脇に抱えた彼女は、遼を見るなり額に青筋を浮かべた。


「あー、霧島さん。おはようございます。まだ一分しか遅れてないんで

 セーフじゃないですか?」

「セーフではない! 本日から貴様と私はバディを組むことになった。

 上条署長の命令だ」


 遼は目を丸くした。

「え。なんで俺が凛ちゃんと……」

「凛ちゃんと呼ぶな!!」


 こうして、桜丘警察署史上最も凸凹なコンビが誕生した。


 最初の事件は、連続窃盗犯の追跡。

 霧島は緻密な証拠分析で犯人を特定しかけていたが、

 最後の一手が揃わない。


「もしかして」と遼がぼんやり言った。「犯人、左利きじゃないですか?」

「……なぜそれを」

「さっきコーヒー飲んでたら、その資料の指紋の向きがなんか変で」


 確認すると、的中。霧島は絶句した。

 事件解決後、報告書に「神崎の指摘が突破口」と書きながら、

 彼女はこっそり耳まで赤くなっていた。


「……少しだけ、見直した。ほんの少しだけな」


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◆ 第2話「科学捜査班の天才は照れ屋さん」


 「神崎さん、今日から科学捜査班との合同捜査です」

 霧島から告げられた遼は、地下の科学捜査室を訪ねた。


 そこにいたのは、大きなメガネをかけた小柄な女性。

 桐谷夏帆――DNAから人間関係まで分析できる天才科学捜査官だ。


「あ、あの……刑事さんですか? 私、その、うまく話せないんですが」

「大丈夫大丈夫。俺もうまく仕事できないんで、お互い様です」


 夏帆はキョトンとした。刑事がそんなことを言うとは思っていなかったのだ。


 事件は毒殺疑惑。夏帆は成分分析を完璧にこなしたが、

 「動機の糸口が見つからない」と頭を抱えていた。


 遼は被害者の書棚を眺めながら、ぼそりと言った。

「この人、本の並べ方がバラバラですね。几帳面そうな人なのに。

 ……最後に誰かに見せたくないものを隠したんじゃないですか?」


 本の裏から、遺言書が発見された。


「す、すごい……どうして……」

「いや、本棚が気になっただけです。整理したくなっちゃって」


 夏帆は報告書を書きながら、何度もちらちらと遼の横顔を見た。

 「変な人だけど……なんか、安心する」

 そう、小さなメモに書いて、そっと引き出しにしまった。


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◆ 第3話「姉御刑事は実は寂しがりや」


 捜査一課の姉御・瀬川澪は、見た目こそ豪快だが、

 実は一人でコツコツ捜査を続ける孤独派だった。


 上条署長の命令でまた遼とバディを組むことになり、澪は渋い顔をした。

「私はそういうの、苦手なんだけど」

「俺も苦手ですよ」と遼が答えた。

「……じゃあなんで平気そうな顔してんの」

「なんとかなるかなって思ってるだけです」


 澪は呆れた。


 事件は組織的詐欺。澪は長期間単独で追い続けていたが、

 ラストピースが揃わない。


 現場を歩き回る遼が、突然立ち止まった。

「このタコ焼き屋さん、一年中ずっとここにありますよね?」

「……何が言いたいの」

「逃げる気がないってことじゃないですか。犯人。

 この店を毎日見てたって言ってたじゃないですか、目撃者の人が」


 犯人は、現場近くで働く人物だった。澪の長年の勘と遼の見落としなさが合わさり、

 一気に事件が解決した。


 夜、居酒屋で澪が缶ビールを遼に押しつけた。

「……おごってやる」

「え、やったー」

「うるさい。ただ、付き合わせてごめんって言いたかっただけ」

「楽しかったですよ? 本当に」


 澪はそっぽを向いた。でも、その耳は赤かった。


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◆ 第4話「新人刑事の初めての現場」


 天城遥は、配属されたばかりの新人刑事。

 正義感と理想に燃えているが、現実の捜査の複雑さに戸惑っていた。


 遼は彼女の指導係になった。

「えっ、神崎さんが私の先輩ですか?」

「そう言われると俺も困るんですが……まあよろしく」


 遥は必死にメモを取り、現場では一ミリも見逃すまいと目を血走らせた。

 そんな彼女に遼は言った。

「そんなに張り詰めてたら、大事なもの見逃しますよ」

「でも……!」

「力抜いて歩いてみてください。足元が気持ちよくなりますよ」


 事件は迷子の子供と誘拐疑惑。

 遥は手がかりを求めて奔走する中、疲労でパニックになりかけた。


 そのとき遼がぽつりと。

「この子、アメをくれた人の方向を向いてますね」

 子供がいつも見ている方向。そこに、鍵を握る人物がいた。


 遥はぼろぼろと泣いた。

「私、全然役に立てなかった……」

 遼は頭をポンと叩いた。

「今日気づいたこと、全部持って帰ってください。それが次の力になるから」


 遥は「はい!」と笑って敬礼した。

 この日から遥は、遼を「師匠」と呼ぶようになった。

 (遼は呼ばれるたびに照れた)


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◆ 第5話「特別捜査官は謎めいている」


 ある日、刑事部長から特別捜査官・鷺沼千夏が派遣されてきた。

 長い黒髪、クールな目線、一言も無駄にしない話し方。


「神崎遼刑事。あなたと合同捜査を行います」

「あー、よろしくお願いします。お昼ご飯、一緒に食べますか?」

「……いきなり何を言ってるんですか」


 千夏は遼の評価を「問題外」と判断した。


 事件は連続企業恐喝。千夏は完璧な捜査計画を立てたが、

 犯人グループの内部分裂という想定外の展開になった。


 遼は現場で全員の顔を見回してぽそりと言った。

「このグループ、リーダーに嫌われてる人いますよね。

 靴の向きが全員リーダーから離れてる」


 千夏は固まった。心理的グルーピングの分析を三時間かけてやろうとしていたことを、

 遼は三秒で言い当てた。


「……あなたは、訓練を受けていますか?」

「いや、特に。なんとなくです」

「なんとなく……」


 千夏は夜、報告書を書きながら、遼のことを「未知数」と記録した。

 そして少しだけ、次の捜査が楽しみになっていた。


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◆ 第6話「全員集合! バレンタイン捜査会議」


 二月十四日。桜丘署の捜査会議室には、

 霧島・桐谷・瀬川・天城・鷺沼の五人が集まっていた。


 上条署長が告げる。

「本日は特殊事件の合同捜査会議だ。全員で神崎の指揮のもと——」

「え、俺ですか」と遼が目を白黒させた。


 事件は美術館からの連続絵画盗難。

 五人の女性刑事たちは、それぞれの専門分野から分析を始めた。


 そしてなんと、全員が遼に小さな差し入れを持ってきていた。

 霧島は「業務上の差し入れです」とそっけなく渡し、

 夏帆は真っ赤になってテーブルに置いてそっぽを向き、

 澪は「義理だからね」と言いながら手作りチョコを押しつけ、

 遥は「先輩! もらってください!!」と満面の笑みで渡し、

 千夏は「……体力維持のためです」と黒糖飴を置いた。


 遼は全部ありがたくいただきながら、事件を整理し始めた。


「あの……盗まれた絵、全部同じ画家の作品じゃないですよね。

 でも全部、窓際に飾られてた作品ですよね? 日当たりを好んだ人?」


 犯人は、その画家の元弟子だった。

 思い出の場所にあった絵だけを、誰にも言えない理由で盗んでいたのだ。


 事件後、全員でチョコを食べながら、遼は言った。

「なんか……俺、幸せ者ですね」

 五人は口々に「気のせいです」「勘違いしないで」「うるさい」などと言いながら、

 みんな少しだけ笑っていた。


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◆ 第7話「霧島さんの過去と、遼の一言」【感動回】


 ある夜、遼は残業中に霧島が一人でコールドケースのファイルを

 眺めているのを見つけた。


「霧島さん、まだいたんですか」

「……あなたには関係ない」


 しかし遼はそのまま隣に座った。

 霧島が睨んでも、遼はコーヒーを二つ持ってきて、一つを彼女の前に置いた。


 ファイルの表紙には——七年前の未解決事件の名前があった。


「……同僚が、犯人に……。私が先に行っていれば」

「霧島さん」

「何」

「その人は、今の霧島さんを見て、どう思うでしょうね」


 霧島は答えなかった。

「きっと誇りに思うと思いますよ。俺は、そう思います」


 しばらく沈黙が続いた。

 霧島は静かに涙をぬぐい、そしてコーヒーを飲んだ。


「……ありがとう」

 霧島が遼に「ありがとう」と言ったのは、この日が初めてだった。


 翌朝、霧島は遼に「神崎くん」と名前で呼んだ。

 遼は気づかないふりをしたが、耳が真っ赤だった。


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◆ 第8話「桐谷さんとフィールドワーク」


 珍しく夏帆がフィールド捜査に同行することになった。

 普段は室内での分析専門の彼女にとって、現場は未知の世界。


「あの、神崎さん……私、外でうまくやれるかどうか」

「大丈夫です。俺もいつもうまくやれてませんから」

「それ、フォローになってないんですが……」


 でも夏帆は少し笑った。


 事件は薬品の不法投棄疑惑。現場は廃工場で、複雑な化学物質の痕跡が残っていた。

 夏帆は現場で即座に成分を特定し、遼は目を丸くした。


「夏帆さん、すごい……」

「ひ、ひとつ間違えたら大変でしたけど」

「でも間違えなかった。それがすごいんです」


 遼に率直に褒められた夏帆は、メガネが曇るほど顔を赤くした。


 帰り道、夏帆が転びそうになったとき、遼がさりげなく手を取った。

「あっ……」

「道、でこぼこしてますね。気をつけて」


 そのまま駅まで手をつないで歩いた。

 夏帆は翌日、「昨日の現場分析の詳細」というファイルを作りながら、

 全然関係ない「手の温度について」というメモをこっそり書いた。


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◆ 第9話「瀬川先輩と夜の追跡劇」


 瀬川澪との二度目のバディ。今回は夜間の追跡捜査だった。


 容疑者の逃走ルートが複数に分かれ、二人は一時的にはぐれてしまう。


 遼は路地裏で容疑者と鉢合わせした。

 武器はない。相手は明らかに危険な人物だ。


 遼はにこっと笑った。

「あのー、近くのコンビニどっちですか?」

 容疑者は一瞬、完全に力が抜けた。

 その隙に澪が飛び込んで取り押さえた。


「神崎ぃ! 心臓止まるかと思ったよ!!」

「いや、なんとかなるかなって」

「そのセリフ、もう聞きたくない!」


 でも澪はぎゅっと遼の腕をつかんでいた。安堵と、何か別の感情が混じって。


「……無事でよかった」

 小さな声だった。

 遼はそれを聞いて、「澪さんも無事でよかったです」とちゃんと返した。


 澪はそっぽを向いた。でも今度は、ずっと長い間そっぽを向いていた。


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◆ 第10話「遥ちゃんの初手柄」


 天城遥が初めて単独で情報収集に成功した。

 彼女は興奮しながら遼のもとへ飛んできた。


「先輩! 聞いてください! 私、やりました!!」

「おー、すごい! 教えて!」


 遥が持ってきた情報は、長引いていた連続傷害事件の有力な証言だった。

 しかも、遥が被害者に寄り添って話を聞いたことで得られた、

 他の誰も引き出せなかった情報だった。


「遥ちゃんって、話を聞くのが上手いですよね」

「えっ……そう、ですか?」

「うん。ちゃんと相手の目を見て、うなずいて。俺にはできないことです」


 遥は目をキラキラさせた。

「先輩に褒められるの……すごく嬉しいです」


 事件解決後、上条署長から遥への表彰状が出た。

 遥は表彰台で泣きそうになりながら、会場の遼に目をやった。

 遼は親指を立てて、にこっとしていた。


 遥はその日の日記に書いた。

「先輩みたいな刑事に、私もなりたい。

 でも先輩のことが、少し好きかもしれない」


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◆ 第11話「鷺沼さんの秘密と過去の傷」【感動回】


 千夏が突然、任務から外れることになった。

 遼だけがその理由を偶然知ってしまう——彼女の過去の事件で、

 無実の人を巻き込んだ可能性があると再調査が入ったのだ。


 千夏は一人で抱え込んでいた。


 遼は捜査資料を読みあさり、夜通し調べた。

 そして翌朝、千夏を呼び出した。


「調べました。鷺沼さんは間違ってない」

「……あなたには関係のないことです」

「関係あります。バディですから」


 千夏は目を細めた。

「一度しか組んでいない相手が、なぜバディだと」

「俺の中ではそうです。それに……」


 遼は資料を広げた。

「あの時の判断は正しかった。証拠がここにある」


 千夏は資料を一枚一枚確認した。

 遼の見つけた証拠は、確かに彼女の判断が正しかったことを示していた。


 千夏は長い間、黙っていた。

 そして静かに言った。

「……なぜ、あなたはそこまでするんですか」

「なんとかなるかなって思ったら、なんとかなりました」


 千夏は微笑んだ。それは誰も見たことのない、柔らかい表情だった。


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◆ 第12話「桜丘署の春祭りと告白未遂」


 毎年恒例、桜丘署の春祭り(近隣住民との交流イベント)の日。


 遼は出店担当になり、ゲームコーナーを任された。

 「なんとかなるでしょ」と思っていたら、準備が全然間に合わず、

 霧島・夏帆・澪・遥・千夏の五人に大目玉を食らった。


「あなたって本当に……!」「もう!」「仕方ないわね」「先輩ー!」「……呆れます」


 でも全員が手伝ってくれた。わいわいと準備しながら、なんとかオープンに間に合った。


 子供たちに人気が出て、五人はそれぞれ笑顔で子供たちの相手をした。

 遼はその光景をぼんやり眺めた。

「なんか……みんな、本当にいい人だな」


 夕方、桜の木の下で霧島が遼の隣に立った。

「ねえ、神崎くん」

「はい」

「あなた……その……」

 霧島は珍しくもじもじしていた。


 そこに遥が猛ダッシュで飛んできた。

「先輩! 子供がお礼を言いたいって!!」

「あ、うん、行きます!」


 霧島はため息をついた。「……またにします」

 そのつぶやきは、花びらにさらわれた。


 第1期前半 完。

 ——第13話へ続く——


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     「いい加減刑事・神崎の流儀」第1話〜第12話 おわり

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     いい加減刑事・神崎の流儀

    ~美女刑事たちと組んだら、

     なぜか事件が解決しちゃうんですが?~

        【第1期 後半 第13話〜第24話】

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◆ 第13話「新しいバディ・橘 花音登場」


 梅雨の季節、桜丘署に異動してきた人物がいた。


たちばな 花音かのん・23歳

 他署から転属してきた若手刑事。明るくおしゃべりで、

 どこか天然な雰囲気を持つ。料理が得意。


「神崎先輩ですよね? 噂で聞きました! 天才刑事だって!」

「え。俺がですか」

「署長室の前で聞こえたんです。『あいつは宝の持ち腐れだが天才だ』って」

「それ、褒めてるんですかね……」


 花音はあっという間に署内に馴染んだ。

 ただ、空回りすることも多く、初日から書類を盛大にひっくり返した。


 初めてバディを組んだのは、空き巣多発事件。

 花音は聞き込みで近所の人から大量の情報を集めてきたが、

 整理できずに混乱している。


「先輩、どれが重要なんでしょう……」

「全部読んでみます。……あ、これ。同じ時間帯に散歩してる犬の話、三件ある」

「犬がどうして重要なんですか?」

「犬は知ってる人には吠えない。ってことは犯人、この近所に住んでる顔見知りかも」


 花音の目が輝いた。

「先輩って……本物だ!」

「いや、犬が好きなだけですよ。昔、実家で飼ってたんで」


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◆ 第14話「ラッキースケベ大作戦(本人には作戦の気なし)」


 証拠保管室の棚を整理中、遼は盛大に転んだ。

 運悪く——いや、運よく?——霧島が入ってきたタイミングと重なり、

 棚から落ちたダンボールが霧島にぶつかり、二人は倒れ込んだ。


「っ……か、神崎くん!!」

「いたた……霧島さん、大丈夫ですか?」


 気がつくと二人の顔は至近距離。霧島の長い髪が遼の顔にかかっていた。

 霧島は三秒固まり、その後猛スピードで起き上がった。


「み、見ていない! 今のは業務中の事故です!!」

「はい。でも本当に大丈夫でしたか、頭」

「……だ、大丈夫です。ありがとう」


 遼は真剣に心配していた。霧島はそれが余計に困った。


 同日、今度は休憩室で夏帆が実験データのプリントアウトを大量に持ちながら歩いていたところ、

 遼とぶつかり、紙が舞い散り、夏帆がよろけ、遼が咄嗟に抱きかかえた。


「わああっ……ご、ごめんなさい……!」

「こちらこそ。落ちましたか、資料」

「そ、それより……そのっ……」


 夏帆は遼の腕の中で固まっていた。

 遼はすぐに離したが、夏帆はその日一日、鮮やかに赤いままだった。


 霧島・夏帆・澪の三人は夕方、休憩室で顔を見合わせた。

「あの人、本当に天然なのよね」

「天然だと思います……」

「それが一番タチ悪い」


 全員、なぜか複雑な表情で苦笑いした。


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◆ 第15話「花音の料理と、みんなのご飯」


 ある土曜日の夜。残業組がぽつぽつと残る署内に、

 花音が大きなリュックを背負って現れた。


「みなさん、食べてないでしょ? 差し入れ持ってきました!」


 出てきたのは手作りのおにぎりと豚汁と卵焼き。

 残業していた霧島・夏帆・澪・遥・千夏・遼が全員集まった。


 みんなで食べ始めると、不思議と会話が弾んだ。

 夏帆が好きな映画の話をし、澪が昔の捜査の失敗談を話し、

 千夏が珍しく笑い、遥が先輩たちのエピソードに目を輝かせた。


 遼は豚汁を二杯おかわりした。

「花音ちゃん、料理上手いね」

「ありがとうございます! 先輩に褒めてもらえると嬉しいです!」


 霧島は「差し入れは私も今度するわ」と言い、夏帆は「お菓子なら……」と手を挙げた。

 澪は「じゃあ私は酒で」と言い、遥が「私は! なんでも!」と張り切った。

 千夏は黙ってお茶を出してきた。


 遼は全員を見回した。

「なんか……本当にいいチームですよね」

 誰かが「あなたがいちばんいい加減なくせに」と突っ込んだ。


 全員が笑った。


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◆ 第16話「上条署長の秘密の依頼」


 上条署長が遼を個室に呼び出した。

「神崎。一つ頼みたいことがある」

「珍しいですね、署長が個人的に」


 署長は渋い顔で言った。

「私の娘が……危ない目に遭いかけている。正式な捜査はできない。

 ただ、誰かに見ていてほしい」


 遼は即答した。

「わかりました。やります」

「理由も聞かずにか」

「署長が頼むんだから、大事な話でしょう。それで十分です」


 署長はしばらく遼を見つめた後、静かに言った。

「……お前は、本当に不思議な奴だな」


 遼は霧島に事情を話した。霧島は即座に「私も動きます」と言った。

 夏帆は「分析支援します」と。澪は「当然でしょ」と。

 遥は「私も!」と飛び上がり、千夏は無言で合流した。


 六人体制で署長の娘を守りながら、背後にある組織の脅威を突き止めた。


 事件解決後、署長は全員に頭を下げた。

「……ありがとう。皆」

 遼はちょっと照れた。

「署長が頭下げるのは珍しい」

「うるさい。二度と言わんぞ」

 でも署長は、確かに泣いていた。


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◆ 第17話「千夏さんと星空の夜」【感動回】


 長期任務の終わりに、遼と千夏は山間部の宿に一泊することになった。


 夜、千夏は縁側で空を見ていた。

 遼もお茶を持って隣に座った。


「きれいですね」

「……ええ」

 しばらく沈黙。


「鷺沼さんって、なんで刑事になったんですか」

「……昔、大切な人を守れなかった。だから」

「守れなかったのに、また誰かを守ろうとするんですね」

「……矛盾しています?」

「いいえ。それが一番強い動機だと思います」


 千夏はゆっくり遼を見た。

「あなたは……どうして刑事に?」

「俺は……まあ、なんとなく」

「なんとなく……」

「でも、こうしてみんなと仕事してたら、だんだん本気になってきました。

 守りたいって思う人が増えてきたんで」


 千夏は長い間、星を見ていた。

「……そうですか」

 その声はとても、やわらかかった。


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◆ 第18話「ラッキースケベ第二弾・今度は花音も巻き込まれる」


 署内の給湯室でまたやらかした。


 遼がドアを開けたら、着替えようとしていた花音と鉢合わせ。

「わああっ!!」

「ご、ごめん!!」


 遼は反射的に目をつぶり、後退りし、廊下の霧島に激突した。

「なっ……神崎くん!?」

「霧島さん!? いや、これは——」


 さらに廊下を走ってきた遥が二人にドカン。

 三人が廊下で連鎖倒れ。


 給湯室から花音が顔を出した。

「……先輩、何してるんですか」

「俺も聞きたい」と遼が天井を見上げた。


 廊下のカメラ映像は「業務上の接触」として処理されたが、

 その日の昼休み、女性陣の間で「今日の件」が十五分間話し合われた。

 遼本人は昼寝していた。


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◆ 第19話「遥ちゃん、本気の告白」


 天城遥は決めた。今日こそ言う。


 事件が一段落した夕方、遥は遼を屋上に呼び出した。


「先輩、あの……」

「なんですか?」

「私、先輩のことが好きです。ずっと前から」


 遼は止まった。

 遥は続けた。

「先輩に出会って、初めて刑事の仕事が楽しくなりました。

 先輩みたいになりたいって思ったし、先輩のそばにいたいって思ってます。

 だから……聞いてほしかったんです」


 遼はしばらく黙っていた。

「遥ちゃん……」

「返事は、いつでもいいです。ただ、伝えたくて」


 遼は空を見た。

「俺、今の自分でそれを受け止めていいか、まだわからないんだ。

 ちゃんと向き合いたいから、少し時間をください」

「……はい」


 遥は泣かなかった。でも目が真っ赤だった。

 遼は「ありがとう、ちゃんと言ってくれて」と言った。


 その言葉が、遥には一番嬉しかった。


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◆ 第20話「霧島さんの本心」


 遼が遥からの告白を受けたことは、なぜか翌日には署内に広まっていた。

 (犯人:花音。「みんな知るべきだと思って!」)


 霧島は午前中、ずっと無言だった。


 昼休み、遼が声をかけた。

「霧島さん、怒ってます?」

「怒っていません」

「そうですか」

「…………」

「本当に大丈夫ですか」

「うるさい!」


 廊下に響く声。遼はびっくりした。霧島もびっくりした。


「ごめんなさい……その、私は……」

 霧島は珍しく言葉に詰まった。

「神崎くん。あなたはどうするの」

「どうって……まだわかりません。ちゃんと考えたい」


 霧島は一呼吸おいた。

「……私も、あなたのことを考えることがある。

 それだけ、言っておきたかった」


 遼は真剣な顔をした。

「霧島さん」

「返事はいい。私も遥ちゃんと同じで、今は伝えたかっただけ」


 霧島は歩き出した。でも五歩で立ち止まり、振り返らずに言った。

「……ちゃんと食べなさい。昼ごはん」


 遼は「はい」と答えた。


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◆ 第21話「最大の事件と、全員集合」


 桜丘署を揺るがす大型事件が発生。

 複数の企業を狙った組織犯罪で、背後には政界との繋がりも見えてきた。


 上条署長は全員を集めた。

「この事件、解決できるのは今この部屋にいる者だけだ」


 霧島・夏帆・澪・遥・千夏・花音、そして遼。

 全員がそれぞれの専門を活かして動き始めた。


 捜査が難航する中、遼はひたすら現場をぶらぶら歩き回っていた。


「神崎くん、何を見ているの」と霧島が問う。

「特に……でも、なんか引っかかるものがあって」


 三日目の夜。遼が言った。

「犯人グループ、全員がある会員制サービスを使ってますよね?」

「それは確認しています。でも違法性は——」

「使い始めたのが全員、同じ月です。つまり、誰かに紹介された。

 その紹介者が黒幕じゃないですか?」


 夏帆が即座に解析を始めた。

 翌朝、犯人が特定された。


 全員が一斉に動き、組織を一網打尽にした。

 署内に歓声が上がった。


 その夜、全員で乾杯した。

 遼はコーラで、全員に言った。

「みんながいたから、できた事件です。俺一人じゃ何もできなかった」


 誰もツッコまなかった。

 みんな、なんとなく目が潤んでいた。


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◆ 第22話「夏帆さんの秘密の想い」【感動回】


 大事件の後、夏帆は遼に「少し話があります」と伝えた。


 科学捜査室の窓際、夕日が斜めに差し込む中で夏帆は言った。


「私、子供の頃から人と話すのが怖かったんです。

 だから刑事ではなく、分析官を選んだ。

 でも……神崎さんと現場に出るようになって、外が怖くなくなりました」


「夏帆さん……」

「最初に手をつないでくれたとき、あなたはたぶん何も考えていなかったと思うけど。

 私にとっては、すごく大事なことでした」


 遼はしばらく黙った後、言った。

「夏帆さんが笑ってくれると、俺もなんか元気になるんです。

 だから……これからも笑ってください」


 夏帆は一瞬呆けて、それからゆっくり笑った。

 今まで見た中で、一番きれいな笑顔だった。


「……はい」


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◆ 第23話「澪先輩と花音と、ちょっと本気の飲み会」


 澪が珍しく全員を居酒屋に誘った。

「大事件終わったんだから、ちゃんと飲もう」


 全員が集まり、賑やかな夜になった。


 酔った花音が遼に抱きついた。

「先輩って、ほんとうにいい人ですよね! 私もう大好きです!!」

「花音ちゃん、飲みすぎ」

「大好きって言ったんです! 聞こえましたか!!」


 澪は見ていてため息をついた。

「花音ちゃんはほんとうに正直だね」

「澪先輩は正直じゃないんですかー?」

「うるさい」


 遼が澪に言った。

「澪さんって、みんなのこと、ちゃんと見てますよね。

 花音ちゃんのフォローとか、遥ちゃんの成長とか。

 いつも全員のこと、気にかけてる」


 澪は黙った。

「……別に、なんとも思ってない」

「そうですか。俺は思ってますよ。澪さんのおかげで、このチームが成り立ってる」


 澪はビールをごくごく飲んだ。そして小さく言った。

「……あんたも、ちゃんと見てるじゃない」

「そうですか? なんとなくです」

「……それが一番いい加減なのよ、あんたは」


 でも澪は笑っていた。本当に、いい顔で。


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◆ 第24話(最終話)「俺が選ぶのは、みんなとの道」


 春。桜丘署に、また桜が咲いた。


 上条署長から発表があった。

「神崎遼。お前をこの度、桜丘署捜査一課チームリーダーに任命する」


 署内がざわついた。


「え。俺が、ですか?」

「貴様が、だ。異議はあるか」

「……まあ、なんとかなるかなって思ってるんで、受けます」


 署長はふっと笑った。

「そのセリフを待っていたよ」


 その日の夕方、霧島が遼に話しかけた。

「神崎くん。その……おめでとう」

「ありがとうございます。霧島さんが先のほうがよかったんじゃ」

「いい。あなたが適任だと私も思ってる」

 霧島は少し間を置いた。

「それと……さっき言いかけた話の続きだけど」

「はい」

「あなたと、ずっとバディでいたい。それだけ」


 遼は霧島を見た。真剣な目で。

「俺も、そう思います。それだけじゃなく、もっと」


 霧島は目を見開いた後、ゆっくり笑った。

「……それは、ちゃんと聞かせてもらうわ。今度」


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 桜が舞う中、全員が署の前に集まった。


 霧島は少し照れながら遼の隣に立ち、

 夏帆はそっと遼のそばに来て、

 澪は腕を組んでそっぽを向き、

 遥は「先輩! チームリーダーおめでとうございます!!」と飛びつき、

 千夏は静かに微笑み、

 花音は「私、絶対チームから離れません!!」と宣言した。


 遼は全員を見回した。

「俺、みんながいれば、なんとかなる気しかしないんですよね」

「「それだけは信用できます」」と全員がハモった。


 全員が笑った。


 桜の花びらが、六人の上に降り注いだ。


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                【 完 】


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【あとがき】


 この物語は、「いい加減な人間こそが、周りを本当に幸せにする」

 というテーマで書かれています。


 完璧でなくていい。

 計画通りでなくていい。

 「なんとかなる」と思って歩いていれば、

 いつのまにか大切なものが増えていく。


 神崎遼の生き方は、不器用だけど、たしかに温かい。

 そしてその温かさに、気づいた人たちが集まってくる。


 それが、このお話の全てです。


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【登場ヒロイン 最終一覧】


 ① 霧島 凛(27歳) …… エース刑事。遼の正式バディ。

 ② 桐谷 夏帆(25歳) …… 科学捜査の天才。笑顔が一番きれい。

 ③ 瀬川 澪(28歳) …… 姉御刑事。本当はずっと見守っていた。

 ④ 天城 遥(24歳) …… 新人刑事。最初に告白した勇気の人。

 ⑤ 鷺沼 千夏(30歳) …… 特別捜査官。星空の夜に心を開いた。

 ⑥ 橘 花音(23歳) …… 転属組の天然刑事。一番正直な人。


 そして——


 神崎 遼(26歳)

 「なんとかなるでしょ」

 桜丘署捜査一課、チームリーダー(昇格)。


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   「いい加減刑事・神崎の流儀」第13話〜第24話 おわり

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