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悲劇の令嬢は、巻き戻って悪役令嬢へと変化する  作者: 仲村 嘉高
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「何だヤコブソンのあの髪型は」

 顔の半分近くを隠してしまう()()()のボサボサの髪を見て、王が顔をしかめます。

 王と王妃は(まつりごと)には一切関わらず、王宮の隅でひっそりと暮らしております。

 何の権限も無いのですが、一応は国の代表なので、それなりの待遇ではあります。

 そこは、王太子とは違います。

 王太子とフローラは、まだ生きてはいるようです。

 まだ楽になってもらっては困ります。


 それにしても、王も王妃も、自分の子供も判らないのですね。




 つつが無く結婚式が終わり、国民への顔見せも無事に済みました。

 夫婦の寝室は、これでもかと初夜を演出されていて、恥ずかしくなってしまいます。

 ベッドへは行かず、ソファに座ってワインを飲みながら待つ事にしました。

 入浴を済ませて寝室へ入って来た()()()は、髪を後ろへ流していて顔がちゃんと見えます。


「よろしくお願いしますわね、旦那様」

 私が声を掛けると、端正な顔を苦笑で歪めながら私の向かいのソファへ座りました。

「何を期待しているのかわからないけど、私も初めてですからね?」

 あら?既婚者なのに?

「何度も言いますが、マリリナの恋人はフェリシアです。最初から、白い結婚が条件ですよ」

 タイラーがワインを一口飲みます。


「もし私が()()()の話を提案しなかったらどうなさるつもりでしたの?」

 そう。

 フローラの妊娠が発覚した時、王太子を共に幽閉する事を決めました。

 ただ一つ、後継の問題だけを悩んでいた時に、タイラーの結婚の実情というか、内情を知ったのです。

 義妹のフェリシア様がマリリナ様の恋人なので、マリリナ様とは白い結婚になる事。

 後継は養子を迎えるつもりである事。


 マリリナ様とフェリシア様が恋人同士なのは知っていましたが、さすがに後継者だけは作るものと思っておりました。

 それならばと「子供は二人以上産みましょう!例え女児でも家を継げるように法律も変えますわ」私はタイラーにそう提案したのです。


 その時に「望むところです」と即答いただきました。


 タイラーは、王太子と同じ髪色で、私と似た瞳の色です。

 子供の父親になるには、条件も良かったのです。

 それにしても特殊な結婚の為に愛人も作れず、妻とは白い結婚が決まっていたのなら、私と影の結婚をしなければどう()()をするつもりだったのでしょう?

 貴族向けの娼館はありますが、あまり頻繁に利用すると、要らぬ噂が立ちますわよね。


「愛する奥様は、何を考えているのかな?」

 タイラーに手を差し伸べられます。

 その手を取ると、優しくベッドへと誘導されました。

「愛する旦那様の性事情の心配を少し」

 素直に答えると、大笑いされてしまいました。

「心配していただかなくても、私は出会った時から貴女にしか興味がありません」

 生徒会の中では参謀であり、今後は私の大切な相棒になるタイラー。


 とても頼もしい()()()ですわね。




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