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王太子の側近兼護衛のマイオニー伯爵家子息ハロルド。
私が王太子の婚約者だと知らない様子なのだけれど、本当に側近なのかしら?
子爵家の阿婆擦れが近寄るのを止めなかった件を見ても、本当に有能だわ。ありがとう。
サンドラとカレーリナの侮蔑の表情と態度に、ハロルドは完全に萎縮しています。
「が、学園内では爵位は関係なく……」
おそらくサンドラの「誰に口をきいている」に対する口答えなのでしょうが、今まで散々王太子の爵位を笠に好き勝手していたくせに何を言っているのでしょう、この男は。
「爵位は関係ありません。私達は生徒会役員であり、アンシェリー様は生徒会長代理です。学園内の立場が貴方とは違うのです」
カレーリナが一歩近付いて、子息を威嚇します。
鞭はこれくらいで良いでしょう。
「お二人共、大丈夫ですわ。私が生徒会長代理というのは、一部の方しか知らないのですもの。勘違いしても仕方ありませんわ」
そもそも生徒会副会長なのですが、そこには触れなくて良いでしょう。
優しく見えるように調節して、微笑んだ。
「実は、最近王太子殿下の評判が著しく下がっておりますの。生徒会に陳情も寄せられております」
これは本当の話。
「ですので、せめて衆人環視の中で交流を持つのではなく、ここ、生徒会室でお会いになったらいかがかと貴方から提案していただけません?」
誰と、とは言いません。
「殿下は生徒会長ですから、この部屋に入るのに誰の許可も要りませんわ」
執務をする部屋は、更に1枚扉をくぐる。
ここは応接室というか、休憩室として使われる部屋でしかないのです。
いわば、誰が入っても支障の無い部屋。建前上生徒会役員の許可は必要ですが。
「そうですね!王太子殿下が使うに相応しい部屋です!早速呼んでこよう!」
ハロルドは、私達に何も挨拶せずに部屋を出て行きました。
「あの方、とうとう名乗りもしませんでしたわね」
カレーリナが心底呆れたと言う声を出します。
「良いではありませんの。下手に挨拶をしてしまいましたら、公の場で知り合いとされてしまいますもの。今の関係で充分ですわ」
サンドラの言葉に、私も笑顔で同意しておいた。
あの後すぐに生徒会室に来た王太子とフローラは、当たり前の様に部屋のソファを占領した。
私達三人は王太子にだけ挨拶をし、執務室へと移動しました。
この部屋はこの部屋専用の鍵が有るので、彼等は入れません。
大切な書類を失くされでもしたら大事ですからね。




