アイラの婚約破棄
アイラの婚約者という中年のお貴族様はガックリと肩を落とし執事に肩を支えられながら帰って行った。
念のため俺はアイラに確認する。
「今のは誰だったんだ?」
「私の婚約者」
「婚約者だったのか?」
「嫁入り先に向かう最中だった」
嫁ぎ先に向かう花嫁道中だったのかよ。
それにしてもアイラも運が悪い。
もうちょい遅ければ俺は服を着ていたし、もっと遅ければ宿屋を後にした後った。
アイラは最悪のタイミングで婚約者にこんなところを見られてしまったのだ。
全裸の男と一緒に居るところを婚約者に見られたのならば、破談を突き付けられても仕方ない。
俺はアイラを慰めた。
「婚約が破談となったからって気を落とすんじゃないぞ」
「大丈夫。アルクに責任を取ってもらう」
「責任てなんだよ?」
「結婚?」
「なんでいきなりそうなる?」
アイラと俺が結婚するに至った論理の流れが全くわからん。
「子どもの頃から男女が同じベッドで寝たら結婚するものと教えられていた」
なんじゃ、そりゃ。
いつの間にか目が覚めていたソニアも満面の笑みだ。
「じゃあ、わたしもアルク様と結婚ですね」
俺は全裸じゃ格好つかないので着替えを探し続けているが、着替えどころか下着さえもどこにも見つからない。
有るのは床にぶち撒けられた金貨だけ。
500枚ぐらいは余裕で有りそうだ。
「この金はどうすればいいんだ?」
「それは私をサイクロプスから助けたもらった報酬を持って来てもらったものだから、受け取っていいと思う」
「じゃあ、ありがたく貰っておくか」
金貨を拾い集めていると、今度は宿屋のおかみさんがやって来た。
「騒がしいと思ったら目が覚めてたんだね。昨日は大変なことになったけど風邪は引いてないかい?」
どうやらおかみさんは俺が全裸でいる事情を知っているらしい。
「昨日はなにがあったんですか?」
おかみさんは昨日起こったことを笑いながら教えてくれた。
「あんたら酔っぱらい過ぎて馬に喧嘩売ったんだけど、馬に蹴られて肥え溜めに落ちてね。サイクロプスを倒してくれた町の救世主様をそのままにしとくわけにもいかないから、井戸で洗ってここまで運んだんだよ。着替えはまだ乾いてないから、風邪を引いたら困るからこれでも着ときなよ」
簡単にまとめると、肥溜めに落ちて全裸になったということだ。
ということはアイラとソニアとはなんにもなかったってこと?
「意識を失う寸前まで酔っぱらってたからね、その後のことはそこのお嬢ちゃんに聞いてみな」
そう言ってアイラを指さす。
そういえばアイラがあんなことやこんなことって言ってたけど、あれはいったいなんだったんだ?
「宿屋に連れて来てもらったり、食事をしたことだ」
そんな事が楽しかったのかよ。
俺はお貴族様の娘に手を出してなかったのでギリギリセーフだったらしい。
「今日からしばらくよろしくな、アルク」
そう言う笑顔のアイラ。
お貴族様の娘を親の許可も得ずに一緒にいてもいいものなんだろうか?
後から文句を言われて捕まるのだけはごめんだ。




