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アイラのレベル上げ

 結局、アイラの親に手紙を送って親が引き取りに来てくれるまで町でお留守番させとこうと思ったんだけど……。


 俺たちが狩りに出ようとすると、アイラが置いてかれまいとガキがギャン泣きするかのように騒ぎやがる。


「なんで私を置いて行く!」


「そりゃ、お貴族様が怪我でもされたら困るだろ。それにお前は狩りなんてしたこと無いだろ」


 ちょっと前までまともに狩りをした事が無かった俺が説教してるのを見てソニアが苦笑いをしている。


「やったことないけど、やってみなくちゃわからない!」


 言ってることはわからなくも無いが、お荷物が増えるのはごめんだ。


 でもアイラも引き下がらない。


 言い争いをしていたら、いつの間にか俺たちの周りに野次馬の人垣が出来ていた。


 なにが起こっているのかと、野次馬が野次馬に聞く。


「どうしたんです?」


「なんでも、やるとかやらないで揉めてるようです」


「あのチカンの兄ちゃんがまたいかがわしいことしてるんですか?」


 当たりがざわついた。


 またってなんだよ!


 今日が初めてだよ!


 それにいかがわしいことってなんだ?


「そんな話してねーじゃん!」


 俺が弁解するが、野次馬は誰も聞いてねぇ。


 おまけにとんでもない声まで聞こえてくる。


「守衛さん! 変質者はここです!」


 なんで守衛を呼ぶ。


 悪評まみれの俺、一度しみついてしまった悪評はなかなか消えないようだ。


 仕方なしにアイラを連れて行くことに決めた俺。


 アイラは騒げば自分の思い通りになるとしたり顔をしていた。


 *


 またまた俺たちは町を出てすぐの草原へウサギ狩りに来ていた。


 今日は剣を使った事が無いというアイラに剣の使い方を仕込みつつレベルを上げに来たのだ。


 もちろん、暇を見て金策もするつもりだ。


 アイラは親が引き取りに来るまで町で留守番してもらうのが一番だと思うんだけど、『留守番なんて暇すぎるから嫌!』とごねられて連れてくることにした。


 金策すると言ってもアイラの元婚約者から貰った500枚の金貨が有るので形だけで、アイラの剣の訓練が目的だ。


 ちょっと前まで剣をまともに使えなかった俺が教えるのもなんなので、先生役は戦士として今まで経験を積んでいるソニアがすることになった。


「アイラちゃん、まずはレベル上げをします。わたしがトドメを刺すので、やり方は自分の好きな方法で構わないので先に攻撃してみてね」


「わかりました」


 でも、ウサギの動きが速すぎて剣どころか小石も当たらない。


「全然当たらないです」


 アイラは半泣きでしょげまくり。


 町から近いという理由で草原のウサギを選んだんだけど、ウサギは素早くて難易度が高過ぎるのが裏目に出た。


 アイラが自信を失う前にもっと難易度の易しいゴブリン狩りに行った方がいいのかもしれない。


 *


 そしてやって来ましたゴブリンの巣。


「ものすごい数ですね」


「これだけゴブリンがいるなら、適当に石を投げても必ずどれかのゴブリンに当たるだろう」


「確かに!」


 俺の話を聞いたアイラは今度は楽勝と思ったのか自信が出て急に表情が明るくなる。


 アイラが自信を持てたようでなによりだ。


「よし、行ってこい!」


「はい!」


 モンスターの中で最弱と言われるゴブリンと戦わせて自信を付けさせるのが訓練としての第一歩である。


 早速アイラは石を投げたんだけど……。


「助けてー!」


 アイラは大量のゴブリンを引き連れながら泣きながら戻って来た。


「どうした、アイラ!」


「石は当たったんだけど、ゴブリンが大群になって襲ってきたぞ!」


 もしかしてお貴族様のお嬢様は想像以上にポンコツなのか?


 それを見てソニアが笑っていた。


「どこかで見た光景ですね」


 って……。


「俺かよ!」


 俺もお貴族様に負けないレベルでポンコツだったようだ。


 俺がうなだれているとアイラが必死に叫んでいる。


「そんな話をしている暇があるなら助けろ、助けて下さい! ゴブリンに食べられちゃうぞ!」


「悪い悪い。今すぐ助けに行く」


 俺とソニアはアイラを追いかけてるゴブリンの群れの退治に向かう。


 取り敢えず、俺とソニアが盾を構えて群れをせき止め、盾でぶん殴って群れを押し返す。


 そして体勢を崩したゴブリンを着実に始末していくのだ。


 これだけの数のゴブリンを倒していると俺も次第に剣に慣れてきて剣の扱いが良くなったような気がする。


 少なくとも剣を買い替えたばかりの頃とは段違いだ。


 ソニアもそれに気が付いたみたい。


「アルク様、剣の扱いがかなり良くなりましたね」


「こんだけゴブリンを倒してればね」


 ゴブリンを倒して得られる経験値は極僅かな量だけど数が数なので俺はレベルが上がりまくる。


 アイラのレベル上げをしに来たんじゃなく、俺のレベル上げにつき合わせたみたいで申し訳ない。


 一方、アイラは石を投げる度にゴブリンの群れが襲って来るんだけど経験値が入るのは石の当たった一匹だけなので、酷くレベル上げ効率が悪い。


 おまけに、5回も大群が襲ってくると巣にいたゴブリンが全滅してしまい結局アイラのレベルは上がらなかった。


「みんなに手伝って貰ったのに、全然レベルが上がらなかった」


「アイラちゃん、何度か繰り返してれば必ずレベルが上がるから心配しないで」


「はぁ……」


 ソニアが慰めてみるもののアイラの表情は暗いままだった。


 *


 ゴブリンの巣からの帰り道、またまた奴に出会った。


 サイクロプスだ。


 サイクロプスはまたまた馬車を襲っている。


 そして馬車の中からは悲鳴が……。


「助けて下さい!」


 またかよ!


 俺がゴブリンの巣で狩りをすると、サイクロプスが現れて馬車を襲わないと済まないのかよ。


 サイクロプスなんてめったに見かける魔物じゃねーだろ。


 もう、ここまで来ると偶然とは思えない。


 俺は襲われている馬車の乗員と目が合ってしまった。


 きっと乗っているのは美少女だと俺の経験が物語る。


 だが今回は美少女ではなかった。


 おっさんだ。


 おっさんは目をうるうるさせて俺に助けを乞う。


「助けて下さい!」


 アイラみたいにおっさんに懐かれて俺の部屋に居候されたらやだな……。


 見て見ないふりしよう。


 スルーしようとしたらアイラが袖をツンツンする。


「助けないの?」


 スルーしたことをアイラに思いっきりとがめられた。


「助ける、助けます」


 続けてソニアがいう。


「アルク様。あのサイクロプスを一人で倒してアイラちゃんにかっこいいとこ見せて下さい」


「えっ? 俺が一人で倒すの?」


「はい!」


 ソニアは続けた。


「レベルも上がったし、剣の扱いも慣れて来たしで楽勝ですよ」


 ソニアは親指を立ててサムズアップをし、目は俺が一人で倒せると信じ切っている。


「アルク頑張って」


 アイラも同じ目をしていた。


 ということで俺が一人でサイクロプスを倒すことになったんだけど……。


 一人ぼやく。


「全然ダメージ通らねぇ……」


 俺の貧弱な剣技じゃ、ノーマルのサイクロプスでさえダメージが通らない。


 倒すには頭をカチ割るか、弱点の目玉を攻撃だっけ?


 そんな高いとこまで届かねーよ。


 グレート・サイクロプスみたいにアキレス腱を攻撃して膝まづかせて地道に倒すしかないな。


 俺が足の後ろに回ってアキレス腱を攻撃する。


 スパン!


 俺の剣の攻撃が決まった。


 それと同時にサイクロプスが痛みのあまり吠える。


「ウゴー!」


 よし、効いたぞ!


 効いたんだけど……。


 サイクロプスは膝まづかず、なぜか迫って来るサイクロプスの尻。


 なんで前に倒れずに後ろに倒れるんだよ!


 おまけに倒れるてくるなんて思ってないから、避けられるわけもない。


「うぎゃー!」


 俺は尻もちをついたサイクロプスの尻の下敷きになって気を失ってしまった。


 あまりの重さに俺の腹からあんこが出そうだ。


 *


「ア、アルク! 大丈夫! 目を覚まして!」


 俺の耳元でアイラの叫び声が聞こえた。


 目を開けると泣き顔のアイラが目の前にいた。


「アルク!? 目が覚めた!」


 アイラは俺が目が覚ましたことで笑顔を見せつつ、回復魔法を掛けるのはやめない。


「魔法使えたんじゃん」


「うん。アルクがサイクロプスに踏み潰されちゃって酷いことになって……。死んでしまったのかと思って、必死で回復魔法を掛け続けていた」


「そうだったんだ。ありがとう」


 魔法が使えたんなら、剣の特訓なんてする必要なんて無かったな。


 アイラは全然ポンコツじゃなかった。


 アイラはポツリという。


「生きててよかった……」


「ところで酷いことってどんなこと?」


 アイラは思いっきり目を逸らして黙ってしまった。


 なんだろう、怖くてなにが起きたのか聞けない。

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