第9話 ③地引網
ブリジッタは川ガニを入れているチイちゃんの網を見て、もっとでっかいのを作れないかと相談した。
チイちゃんは農場へ帰って網を作ってくれた僕のところに相談に来て、
「幅10m、高さ4mほどの網は作れない?」
「時間かかるけど作れるよ」
と返事をした。
〇×△
林に行って蔓を取ってくる。川に石で囲って作った池に1週間ほどつけておく。大きな石の上で、小石をもってこすると、柔らかな部分が取り除ける。芯の強い分だけをみつあみにして長い長いひもを作っていき、それをより合せて網を作る。網の目は、小魚が通れないくらいという注文だった。
なぜかシーちゃんが付き合ってくれたし、チイちゃんもいっぱい網を編んでくれた。
予定の半分くらいできたところで、両端に長いロープをつけて川に沈め、1時間ほどしてみんなで引き上げると、魚が何匹も獲れた。
「疲れたー」
「私も。でも、この大きなマスを持って帰れば、今日は豪華な夕食だね」
ダックスも、「ワン」と吠える秋の夕暮れだった。
〇×△
もうすぐ秋も終わるころ網は出来上がったので、ブリジッタさんに連絡をしてもらった。
翌日、体格の良い男の子5人がやってきて引き取っていった。孤児院の子供たちだそうだ。
夕方には、浜に着いたので、そのまま、潮の引いた浜辺にもっていってもらった。河口が近いので淡水と海水が入り混じっていて、魚の種類が多い。ブリジッタは網の上部には浮きがわりの岸で拾った材木を、下側には少し大きめの石をくくり付けた。
翌朝は、潮が満ちていて、孤児たちみんなで、網の両端にくくりつけたロープを引いていく。
大漁だ。大きな魚は箱に入れて、露天の魚屋に売りに行った。トラウトかな、1mくらいあって、おなかがぷっくりと膨れている。中ぐらいの魚は孤児院で引き取った。
小さな魚は、チイちゃんが引き取るというので、孤児たちと一緒に、坂の上の肥料小屋まで運んだ。