第8話 ②大砲の弾はどこへ飛ぶかわからない
仰角を上げると、的のすぐ横まで弾は到達したようだ。
同じ設定で発射すると、今度は反対側に着弾した。どうも一定しない。砲弾手は、そんなものだと思っているように見える。
〇×△
大砲の実演が終わったので、座学をしている部屋に戻って反省会が行われた。
「どうだ、使うのはなれそうか、テレサ君」
なんでわたしに。
「固定砲台として使うのでしたら、大砲の底に滑車をつけて水平に270度ほど回転できる台座をつけてほしいですね。海賊船の動きは速いですから」
「検討する」
「それと、仰角を1度単位で、大砲の取り付け軸に印刷した円盤を取り付けてください。
20~50度で、1度ずつ。
火薬Aの砲弾を使うときと火薬Bの砲弾を使うときの飛距離を計算した到達距離も一緒に印刷してください」
「ちょっと後で、私の部屋に来なさい」
〇×△
やっと夕食の時間になった。今回の講習には3人が呼ばれたらしい。第1海堡要塞と第2海堡要塞からだね、島の西と北側のようだ。私のところはシチリア島のほぼ南に位置している。
3人で食事をとりながら自己紹介をしている間に、私は寝てしまっていたようだ。
気が付くと自分のベッドに寝ていたので、明日、同僚にお礼を言っておこう。
時刻は8時だけど、軍曹の部屋に行きノックをした。
「どうぞ」
中には私と同じくらいの背をした恰幅の良い人が椅子に座っていた。ドワーフ?
「製造担当のスコットさんだ」
「こんばんは」
「君の意見はここにまとめておいたけど、口頭で説明してくれないかい」
「大砲の砲弾を海賊船に当てて、撃退したいのです。
大砲は、屋根のある保管庫から、レールに沿って外に運び出されます。海賊船の前方を狙って大砲を打つのですが、観測者が着弾位置を報告してくれます。
その誤差を素早く修正して次の発射を行います。
この手順でよいですか」
「その通りだ」
「着弾位置からの誤差を、観測者は距離で伝えてきますから、砲弾手は、方向と仰角の二つを同時に操作しなくてはなりません。
それは、適当であっては、弾の無駄です。
なので、砲台自体を簡単に一人で回転でき、仰角の角度調整を、距離の書かれた目盛りを目の前に置くことで修正時間を短縮します」
「こりゃー、大ごとだな。でも、理にかなっている!」