第6話 ③ウナギを獲る
私ブリジッタは12歳、もうすぐ孤児院を出て独立しないといけない年ごろ。この町ラグーサは漁業が盛んで、朝市には魚がたくさん扱う露店が出ている。そこで手伝いとかできるかもしれない。
シチリア島と本国の間は2kmほど離れているが、遠浅で、潮が引くと歩いて渡れる。潮が満ちてくると潮の流れは急で、小さな子供だと流されてしまう。
5歳のとき教会で授かったスキルは「超音波」、それと水魔法レベル1だ。何に使うかわからないスキルだ。
〇×△
海岸に行って桶に海水を汲んで、孤児院の庭に机を出して木の器にそそぎ入れる。
「おネータン、なにしてるの?」
「お塩を作ってるの」
毎日晴れていると、2週間もすると水が蒸発して塩ができる。本当は、陶器の器に入れて火を焚けば、1日で塩になるのだけど、シチリアは、冬でも暖炉を炊かないので、薪はあまり流通してないし、買えないし。。。
河原で流された枝を集めるのも大変。
ある日、木の器を両手で持つと、水面に模様ができるのを発見した。強く念じると、波紋はさらに大きくなる。何に役に立つかわからないけど、これが超音波のスキルかと納得した。
その時ひらめいた。波紋の先端を水魔法で細かくして空気中に拡散するのはできないだろうか。
1か月もの間、何度も繰り返すと、1時間ほどで塩が器に残るようになった。
塩は領主の専売商品で勝手に売れないけど、屋台の料理屋にもっていくと買ってもらえた。
〇×△
塩を売ったお金で、陶器の筒を購入。底に小さな穴をあけ、上側には3mほどの長い綱をつける。筒の底にカニやエビ、小魚を石でつぶして入れ、上の面を泥でふさいで乾かす。
「重いけど持てる」
「2本だったら大丈夫」
男の子と一緒にそれを夕方岸にもっていって、1~2mほど海に沈めておく。泥は夜中には溶けてしまう。
翌朝、引き上げるとうなぎが入っているので、これを朝市の魚屋に売り込みに行く。まー、泥臭い魚なんで安くたたかれるのだが。
ある日、かごの中に川ガニを入れて露店の魚屋に持ってくる子供を見つけた。対価は売れ残った魚だ。
3日後、声をかけた。その川ガニを売ってくれれば、ウナギ2匹と交換しようと。