第2話 ②ここはダンジョン?
私テレサは真っ暗な状態の馬車の中で揺られている。もう3時間もだ。昨日は、シチリア島の南東に位置する湾岸都市ラグーサにある宿舎のゲストルームに泊まった。朝6時に朝食をとって、城壁の北門で待ち合わせをしていたら、御者一人の馬車が止まり、それに乗ったんだ。
抱き枕を尻の下に引いているので、尻はいたくないのだけれど、おなかはすくし、トイレに行きたい。
道は平らなのか、あまり飛び跳ねない。おなかが何度目かグーとなったとき、馬車は止まり、御者は、下りてねという。
外に出たけど、どうも周りを高い塀で囲ってあるようで、ここがどのあたりなのかはわからない。とはいえ、私は遠出をしたことがないので、地名を言われてもよくわからないのだが。
「昼食とトイレが終わったらまた乗ってね」
用意されていたパンとスープを飲むと、それから4,5時間ほどたって、また止まった。もちろんおなかはグーとなっていた。
御者の声で、今日はここに泊まりだ、とスープを温めてくれた後、どこかに行ってしまった。ここも高い塀に囲まれている。よっぽど場所を知られたくないようだ。
5歳のときにもらった祝福で、スキルは算術をもらった。馬車の走るスピードを考えておおよその走った距離を求めると、15kmほどかな。
さほど進んでいないようだけれど、森のにおいがきつい。このシチリア島は高さ4000mの死火山でできていて、今はすそ野に広がる樹海の中を走っているのだと思う。
〇×△
3日目、どうも目的地に着いたようだ。一人しか乗っていないので、懸垂をしたり屈伸運動をしていたので、まーひまではなかったが、降りると、そこには別の訓練生が二人、馬車から降りてきたところだった。
天井は高いが周りは少し薄暗い。少し涼しいかもしれない。もしかして、巨大なダンジョンの中なのか?
軍曹のゲオルグさんが、3人を集めて説明をしてくれた。今日は宿舎に行き、明日から5日間、研修が始まるのだそうだ。午前中は座学で、午後は体力増強と試射の見学、最後は製造現場の見学となるらしい。
目も前に広がる平地は、縦横に道路で規則正しく区切られ、土塁で囲まれた2mの高もないような小屋がたくさん建っている。かすかに火薬のにおいが流れている。
今夏、私の勤務している第一堡塁に配備の決まった大砲の製造を行っている製造・演習場にきている。